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英国ONS(国家統計局)のワクチン接種回数別死亡率データについての補足

前回の記事で英国ONS(国家統計局)のデータから、ワクチン接種回数、年齢層別の死亡率をグラフ化しました。

いろいろと気になる点はあるのですが、元データについてONSのサイトに補足情報のようなものが載っていましたので、今回の記事で取り上げ、軽く所感を記しておこうと思います。

なお、前回の記事は以下です。


◆あらためて気になる点を整理

前回のグラフをコピペします。

・全死因死亡率:18-39歳


・全死因死亡率:50-59歳


・全死因死亡率:70-79歳


特に気になったのは大きく以下の3点。
ただし、No.3についてはなんとなくわからなくもないです。

  1. 若者の4回目接種のリスクが明らかに高い。

  2. 高齢者の2,3回接種の半年以上経過後のリスクが高い。

  3. 全年齢層での1回接種のリスクが全体として高い。

さて、これらはONSによりなんらかの説明がされているのか。


◆ONSの補足

ONSの補足情報のようなものは以下のリンクにありました。
一部引用します。

1.主なポイント

コロナウイルス(COVID-19)が関与する死亡の年齢標準化死亡率(ASMR)は、2021年9月のブースター導入以降、すべての月において、ワクチン未接種者および1回目または2回目の接種のみの人と比較して、少なくとも21日経過前に3回目の接種または追加ブースターを受けた人の方が一貫して低い。

COVID-19が関与する死亡のASMRは、2022年春の4回目の接種または追加ブースター以降、すべての月において、少なくとも21日前に4回目の接種または追加ブースターを受けた人では、ワクチン未接種者、1回目、2回目、3回目の接種のみの人と比べて一貫して低くなっている。

2022年3月以降、1回目と2回目のワクチン接種者のASMRは、ワクチン未接種者のASMRとほぼ同じであったが、これらのグループでは、これらのワクチン接種ステータスの人口が少ないため、信頼限界は広い。

ASMRはワクチンの有効性の指標と同等ではない。ASMRは年齢構成と人口規模の違いを考慮しているが、死亡率に影響する他のグループ間の違い(特に基礎的な健康状態)があるかもしれない。

2022年後半と2023年の非COVID-19死亡率は、ワクチン未接種者に比べ、3回目の接種またはブースター接種者では若干低いものの、同程度である。

COVID-19以外の初回および2回目の死亡率は、2022年後半と2023年には交絡因子の影響を受けやすくなる。

4回目の接種を受けた人の死亡率は、この接種が臨床的に弱い立場にあるすべての年齢の人、臨床的に弱い立場にある人と同居している世帯の人、ケアホームに入所している高齢者など、特定の集団を対象としていたことが影響していると考えられる。従って、このグループの死亡率は、他のワクチン用量の死亡率と直接比較できるものではなく、結果の解釈には注意が必要である。

Deaths involving COVID-19 by vaccination status, England - Office for National Statistics

https://www.ons.gov.uk/peoplepopulationandcommunity/birthsdeathsandmarriages/deaths/bulletins/deathsinvolvingcovid19byvaccinationstatusengland/latest

◆所感

対象のデータシートはコロナ死の統計を含んでいるため、内容としては概ねワクチン効果アピールとなっています。
確かにコロナへの効果は一部のデータで確認出来ました。
(精査は出来ていません。)

しかし、接種から期間が経過した後の全死因死亡率が上がっているように見える点についてはあまり言及されていません。以下の箇所で軽く触れてるくらいか。

COVID-19以外の初回および2回目の死亡率は、2022年後半と2023年には交絡因子の影響を受けやすくなる。

この『交絡因子』が何なのかが知りたかったのですが具体的には説明されていません。

追加接種を止めた集団のリスクが高い、ということはなんとなく認めている感じですが、その理由の説明が欲しいところ。

◇◇◇

4回目の接種については『臨床的に弱い立場にあるものに優先接種されたため死亡率が高い』と言っているように読めます。

元データのエクセルで確認したところ、たしかにその可能性はあります。
以下は<18-39>の4回目接種のみを抽出したもの。

上を見ると<18-39>の4回目接種者は2022.9月まで5千人未満で、10月から大きく増えていったことが確認出来ます。

憶測ですが『高リスク者に優先したであろう9月までが特に死亡率が高かった』という見方は割と納得出来ます。

その他の年齢層においても同様のワクチン接種戦略だったのかもしれません。


◆おわりに

ということで、私の懸念事項については若干釈然としない感じが残る。

なお、引用部で書かれていた『ワクチン接種がコロナ死のリスクを減らしている』といった部分については、詳細まで確認していませんが概ね正しいのだと思います。書かれた条件においては。

しかし、高齢者における長期的な影響(期間が経つと悪影響に変わってる?)については詳しい説明が欲しいところです。


[2024.01.12 追記]

続編記事にて、今回釈然としなかった『交絡因子の影響』について考えてみました。
よろしければどうぞ。


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