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#610「スタッフメイト南九州・アンドワーク事件」宮崎地裁都城支部

2024年4月3日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第610号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【スタッフメイト南九州(以下、S社)・アンドワーク(以下、A社)事件・宮崎地裁都城支部判決】(2021年4月16日)

▽ <主な争点>
在職中に同業の別会社を設立して行った引き抜き行為の違法性など

1.事件の概要は?

本件本訴は、S社が「従業員であったXが在職中にA社を設立し、S社の他の従業員を引き抜いた」と主張し、Xに対しては不法行為または債務不履行に基づき、A社に対しては不法行為に基づき、損害賠償金および遅延損害金の支払を求めたもの。

本件反訴は、XおよびA社が「S社がXの名誉およびA社の信用を毀損する行為を行っていた」と主張し、S社に対し、不法行為に基づき、損害賠償金および遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<S社、XおよびA社について>

★ S社は、労働者派遣事業および有料職業紹介事業等を業とする会社である。本店所在地は宮崎県甲市であり、支店として乙市内にも営業所が存在する。

★ Xは、2013年3月にS社に入社し、在職中は乙営業所において営業職として業務に従事していた者であり、退職時の等級は「営業管理課・人材開発課 課長職1級」であった。

★ A社は、S社に在職中であったXによって2018年5月に乙市内に設立された会社であり、労働者派遣事業および職業安定法に基づく有料職業紹介事業等を目的としている。


<S社の派遣スタッフ・派遣先企業等の状況、就業規則の定めについて>

★ S社は派遣先企業が決定した都度、同社に派遣労働者として登録した者との間で雇用契約を締結するという登録型派遣制度を採用している。そのため、派遣労働者にはS社に登録のみしている者(以下「登録状態スタッフ」という)と、登録し、かつ、雇用契約を締結している者(以下「雇用スタッフ」という)が存在する(以下、両者を併せて「派遣スタッフ」という)。

★ 2018年7月1日時点におけるS社の従業員数は19名であり、派遣スタッフは9532名(うち、雇用スタッフは460名)、派遣先企業は98社であった、また、そのうち、乙営業所の従業員数は4名であり、派遣スタッフは2496名(うち、雇用スタッフは163名)、派遣先企業は30社であった。

★ S社の就業規則38条9号には「従業員は在職中および退職後、会社と関係のある業種を営み、または会社の役員となってはならない」と規定されている。


<XによるA社の設立、本件引き抜き行為等について>

▼ Xは2018年3月頃からA社の設立の準備を開始し、同年5月、同社を設立した。

▼ Xは2018年6月13日、S社に対し、同年8月31日を退職日とし、一身上の都合を退職理由とする退職届を提出した。それ以降、XはS社の派遣スタッフに対し、当該スタッフの派遣先企業を訪問したり、電話をかけたりして、A社への移籍や入社を勧誘した(以下「本件引き抜き行為」という)。

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