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掌編01

魂の重さは21gある、という迷信がある。
「マクドゥーガルね。測定誤差に過ぎなかったけど」
茜はすぐに口を挟んでくる。
「もちろん。僕が面白いと思うのは、なぜ『魂の重さを測ろうと思いついたか』の方さ」
「どういうこと?」
「つまり、魂を重さのある実体と捉えたこと。重さなどなくても魂という概念は成立するはずなのに」
「そうよね。人が死んで魂が抜け出て、それに重さがあるのなら、今まで死んで来た何十億人分もの魂がどこかに積もってても不思議じゃない」
「空気の密度より軽ければ、天上へ飛んでいくけどね」
「21gの空気って、10リットル以上になるけど」
「そんな計算はしなくていいよ」
僕はかぶりを振った。
茜はコーヒーを一口飲んで、独り言のように呟いた。
「不確かであやふやなものに、手触りを持たせたかったのかもね」
僕の手元で、ミルクコーヒーに入れた角砂糖が溶けていく。
「魂を、精神活動と言ってもいいけど、客観的対象として実感することは難しい。だから数値化したかったんじゃない?」
茜は僕を見つめた。
その視線の意味するところを理解して、僕は慌てて否定した。
「念のために言っておくけど、僕は身体から離脱するような魂なんて信じていないよ」
茜は微笑む。
「わたしも幽霊とか霊魂みたいなものは信じないもの。いたら楽しいだろうなとは思う」
「そうだね。もし本当にいたとしたら。だけど『確認できない何かを信じる』よりも、『自分の目に見える世界を考える』ことの方が重要だよ」
茜がくすりと笑った。
「星の王子様は、そうは言わなかったけど」
「まず薔薇があったからこそ、王子が彼女のために費やす時間ができたのさ。逆じゃない」
「それも一理あるか」
僕は口をつぐみ、コーヒーカップを手にして立ち上がる。
「そろそろ行こうか」
茜は腕時計を見て立ち上がった。
「うん」
喫茶店を出る。
空には雲一つなく、日傘を差したいくらい陽射しが強かった。


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800字程度。
AIのべりすとを使ったらさくさく書けるかと思ったけど、結局ほぼ全部自分で書くことに。
それでも、AIのべりすとを使わなければ書くことも無かったので、この書き方でよかったのかも。

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