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【ネタバレ】『インセプション』完全解説とラストシーンの真意【解説と考察】

はじめに

LEEVELLESというバンドのBa.担当、宮地です。
クリストファー・ノーラン監督の映画がめちゃくちゃ好きで、その中でも『インセプション』が特に好きです。観た回数は100回を優に超えます。

12月に109シネマズプレミアム新宿で、期間限定で『インセプション』『インターステラー』『ダンケルク』の3作品が35mmフィルムで再上映されるという激アツイベントが開催!僕も先日なんとかして予定を空け、観てきました。

ノーラン監督はフィルム撮影へのこだわりが強い、という話は有名ですが、実際僕らが観る時に映画館でフィルムで上映されることはほぼないので、今回の35mmフィルムで観る『インセプション』かなり貴重な体験だったと思います。

フィルム、絵がざらつくんですよね。時々黒い点がでたり少し揺れたりといった、いわゆる”映画っぽい”エフェクトって時々見かけると思うんですが、実際に体験したのは初めてかもしれません。結果、そのざらつきによって作中の「夢」と「夢」との境目がより曖昧になっていて、普段よりも没入できました。今までで一番感動したと思います。最高でした。

この映画、非常に難解でかつ結末も曖昧で、自分なりに考察したり、人の考察を読んだりと個人的にかなり深く楽しんでいる作品なのですが、せっかくなのでこの機会に文章としてまとめようかなと思いまして。

僕なりの解釈をたくさん含んでいるので、「ここは違うよ」「俺はそうは思わないぞ」とかの批判、お待ちしています。考察大会しましょう。

※以下映画『インセプション』のネタバレを含みます。まだ観てない人は先に映画をご覧ください。


考察に入る前に

この映画のわかりやすい面白ポイントで、ラストシーンがハッピーエンドなのか夢オチなのか、というものがあります。
結末がはっきりせず議論を呼び、僕も初めて観た学生時代の当時、友人の春山くんと大いに議論し盛り上がりました。(名前勝手に出してごめん。元気にしてますか?)

当時の解釈と、今で自分の中の考えが変わったりしていまして、自分なりの結論とか話したいんですがその前に、理解しておかないといけない映画内のルールをおさらいします。
この映画、構造が本当にややこしいので、説明だけでかなり長くなります。ざっくりなので、映画を観てある程度わかってる人は飛ばしてください。


設定について

解説①「エクストラクション」「インセプション」

夢の中に入って情報を抜き取ることを「エクストラクション」と呼びます。主人公はエクストラクションのプロで、これを生業としている犯罪者です。すごく浅く言うと悪いハッカー(クラッカー)みたいな感じです。

ターゲットが隠している情報を盗むのを「エクストラクション」と言うのに対し、情報やアイデアを(あたかも自分が思いついたかのように)植え付けることを「インセプション」と言います。洗脳に近いですね。
非常に難しく、一般的に不可能と言われている「インセプション」が今回サイトーから課せられた任務です。後述しますが、主人公コブは自分の妻に対し実行したことがあり、そのことが原因で常に罪悪感に囚われています。

解説②「ドリーマー」「キック」、夢からの覚め方

今いる夢の主、ホストのことを「ドリーマー」と呼びます。作中の不思議な夢の世界にはそれぞれ必ず夢の主(今夢を見ている人)がいます。全て「誰かの夢の中」です。その夢の中に、”夢を共有する装置”を使い、みんなで潜入しています。

夢の主が、今自分がいる場所が夢だと気付き混乱したり、夢の中で死んだりすると夢の世界が崩壊し、目が覚めます。
冒頭のサイトーのお城のシーンは実はアーサーの夢だったので、アーサーが死んでからは城が崩壊していきますね。

また、その他の夢から覚める方法として「キック」という手段があります。これは普段僕らもよく体験する「寝そうになってたらかくんってなって目が覚める」を意図的に起こすものです。
夢共有装置で眠っている時でも、耳や平衡感覚は機能していて、外からのキックで落下する感覚を与えると、ひとつ上の階層へ「起きる(移動する)」ことができます。
今回の任務中使用していた強い鎮静剤の中では外からのキックだけでは起きることができず、下の階層でも同じタイミングで大きな衝撃を受ける必要がありそうです。細かい設定は色んな人が色んな解釈してるので難しいですが、結局上下同時に何かが起きれば、上の階層へ覚めることができるって解釈してます。

夢の中の例外で、作中で「虚無」という夢の果てのような場所が出てきます。詳しい設定は映画の中では語られていませんが、ここに堕ちてしまった人は、自分自身が現在地を夢と認識できなくなり(徐々に忘却しわからなくなり)、抜け出せなくなって、ひたすら彷徨い続けることになります。また「虚無から抜け出す唯一の方法は死」と語られているように、他の夢の階層とは違い、キックだけでは起きられないみたいです。
作中では「モルとコブが電車を待つシーン」「ロバートとアリアドネが飛び降りるシーン」が虚無から脱出するわかりやすい例になっています。

解説③「トーテム」

「今夢なのか現実なのか」は常に把握していなければなりません。そのためトーテムという「本当の挙動を持ち主しか知らない」アイテムで、自分が今いる世界が夢か現実かを判断します。

もし今いる世界が人が作った夢(誰かによって構築あるいは再現された世界)だったら、(そのトーテムの動きは人には知られてないので)トーテムの挙動が自分が意図したものとは違う動きをするはず、つまり夢!と気付く仕組みですね。頬をつねって確認するのと同じようなものだと思います。トーテムではないですが、冒頭のシーンの「サイトーが絨毯の材質の違いに気付き、夢と認識した」のも近いものだと思います。

主人公の仲間のアーサーはイカサマサイコロを、アリアドネはチェスの駒を細工していました。主人公のコブは妻のモルが使っていたコマをそのまま使っています。コブが使うコマは、アリアドネ(や僕たち視聴者)に向けて「回り続けたら夢、止まったら現実」と説明されています。


ストーリーについて

あらすじ

つづいてあらすじです。一旦引用します。

他人の夢からアイデアを盗み出す企業スパイ・コブは、その才能から国際指名手配を受け、さらに妻の殺害容疑もかけられていた。そんなある日、サイトーと名乗る男が、彼に風変わりな依頼を持ちかける。それは、コブが得意とするアイデアの盗み出しではなく、ターゲットの潜在意識にアイデアを植えつける「インセプション」というものだった。コブは任務の危険性を理解しながらも、それが最後の仕事と引き受け、屈指のスペシャリストたちと共に夢への潜入を図る。

googleで検索して一番上に出てきたあらすじより

面白い映画とか小説あるあるなんですが、あらすじだけでは話の筋があんまりわからないの多くないですか。僕が好きな作品大体あらすじ意味不明なんですよね。まだ観てない人からしたらなんのこっちゃだと思います。
あらすじに情報を付け足すとすれば下記のようになります。

主人公コブの今回の任務は、ターゲットの会社の次期社長であるロバートが、自らの手で父の会社を解体するよう仕向けることです。
死期が近い現社長の意向や社内の空気から、息子のロバートが会社を継ぐのは明らかでした。その会社を彼自身の手で潰してもらうため、ロバートに「父の後継者にはならず、新たな会社を一から立ち上げる」というこちらが描いたシナリオ、アイデアを「インセプション」するのがミッションの全容です。

主人公コブは妻殺しの容疑からアメリカに入国できず子供達に会えない日々が続いていました。権力者のサイトーに”犯罪歴を抹消”してもらうことを条件に、この非常に難しいミッションに挑むことになります。

ラストシーンでは、「ミッションに成功したコブが子供達に会うシーン」が描かれますが、このシーンがハッピーエンドなのか、それとも「このシーン自体が誰かの夢」でいわゆる夢オチなのかで大きな議論を呼びました。


さていよいよ本編解説へ入ります。本編ではカットが頻繁に切り替わるため、今は一体どのシーンなんだ?と混乱するひとつの要因となっています。
ざっくり、どの風景の絵がどの階層なのかを知っておくと、絵が切り替わった時に振り落とされず、面白くなると思います。
せっかくなので階層とその風景だけではなく、その世界で誰がどんな行動をしているのかを書いてまとめました!

現実世界 - 飛行機の中

移動中の飛行機の中で、夢共有装置ドリームマシンを使いみんなで同じ夢へ入ります。今から入る夢の主は調合師ユスフです。ここでユスフが緊張でワインをたくさん飲んだせいで、彼の夢の中が大雨なのはちょっと面白いですね。
ここで何時間飛行機に乗るからどうのこうの、みたいな計算がありました。

夢 第一階層 - 大雨のロサンゼルス(ユスフの夢の中)

ターゲットのロバートに「このまま父の会社を継いでいいのだろうか」と疑問に思わせるのが目的です。
ロサンゼルスを舞台に「ロバートを拉致し、情報を聞き出す」というこちらが用意したシナリオを進めつつ、ロバートに「(存在しない)真の遺言」がある、ということを仄かしています。
※余談ですがここでロバートが適当に言った暗証番号「528491」はそのまま下の階層で、バーの女性から渡された電話番号、ホテルの部屋番号(528号室で作戦実行。491号室がその真下の部屋)、雪山の最後の部屋の暗証番号になっています。

メンバーにとって予想外だったのは、ロバートが夢に侵入されるのを防ぐ訓練を受けていたことです。彼の潜在的防衛反応として主人公含むメンバーが夢の中で武装集団に襲われます。

なんとか攻撃を避けつつ、ユスフ以外のメンバーはアーサーの夢の中へ。ユスフはみんなをキックして起こす役割があるので残って、バンの運転をし続けています。この階層での攻撃があまりに激しかったので、予定をかなり巻いて進行することになりました。

(その後の動き)
ユスフからみんなへのキックとして「車で橋を飛び降り」ます。
今回の任務のために使用した鎮静剤が非常に強力なため、キックだけでは下の階層のみんなを起こすことはできません。そのため下の階層でも大きな衝撃を受ける=キックのタイミングを揃える必要がありましたが、下の階層は下の階層で問題がおきており、タイミングが揃わず、バンが飛び降りた時の壁への衝撃では起きることができませんでした。
他メンバーは次のキックとして「バンが着水する」タイミングを狙います。

夢 第二階層 - ホテル(アーサーの夢)

当初の予定ではこの階層でロバートに「自分で何か作りたい」と思わせるのが目的でした。上の層で襲われていることや、ロバート自身が訓練を受けているなどから急遽「ミスター・チャールズ」作戦へと変更します。
※「ミスター・チャールズ」作戦とは、ターゲットにあえて今が夢であることことを教え動揺を誘い、その隙をつくというものです。ターゲットが夢の中で武装している時などにコブがよく使う作戦ですが、冒頭でサイトーに仕掛けた際は失敗しています。アーサーからは止められますが、イームスは「失敗を活かせ」と背中を押し、実行することになります。チーム全体が臨機応変に動いて、一流のチームって感じがしますね。特にイームスはそのあたりの切り替えが抜群に早いです。

ターゲットのロバートは"ミスター・チャールズ"によって、自分が今夢にいることに気付かされます。しかしここでも予想外の展開が続きます。ロバートは(自身の知識から)夢から覚める手段として、なんと自殺を試みます。
鎮静剤が強い状況下で死ぬと虚無へ落ち、任務失敗に直結するため、チャールズは味方だと強調することでロバートの自殺をなんとか引き止めます。
また社長の側近ブラウニーを悪者に仕立て上げ、疑わせたあと「いっそブラウニー(狙っている人)の夢に潜入して、彼の隠している情報を探ろう」と唆し、眠らせます。
実際はみんなで元の計画通りイームスの夢の中へ入ります。

(その後の動き)
アーサーは一人残り、ホテルの部屋の床を爆破することでキックとする予定でした。しかし上の階層のバンが飛び降りたタイミングに間に合わず、車内が落下による無重力状態になってしまったため、部屋の爆破では落下できなくなりました。
無重力の中でも落下感や衝撃を得る手段として「ホテル内のエレベーターワイヤーを爆破して切ることで、エレベーターが引っ張られて地面に衝突する衝撃」をキックとして利用する計画をたてます。

夢 第三階層 - 雪山の病室(イームスの夢)

ここでロバートは、主人公チームが用意したシナリオである、”夢の中で大切に大切に保管された「父の力ではなく、自分の力で会社を立ち上げる」という遺言を発見” する予定でしたが、途中でモルによって銃で打たれ虚無へ落ちます。任務は失敗に終わりかけましたが、アリアドネとコブは一緒に虚無へ潜り、ロバートを虚無から起こすことに賭けます。

(その後の動き)
イームスは要塞のような見た目の病院を丸ごと爆破してみんなで一斉に上の層へ向かうため、要塞に爆弾をしかけます。本来はロバート以外のメンバーで遂行予定でしたが、サイトーは瀕死、アリアドネとコブはロバートを探しに虚無へ潜ったため、「武装集団(潜在意識)からメンバーを守りつつ、建物に爆弾を仕掛ける」という4人分の働きを1人でこなします。仕事できすぎですね。

虚無 - 廃墟 夢の果て(共有している人共通の夢?)

作中では「虚無には潜在意識しか存在しない」と説明されていますが、過去にコブとモルが虚無に降りて街を作っていたので、その名残が残っています。今回の夢の共有ではメンバーにコブが入っていたので、みんなの虚無にそれが反映されていますが、コブがいなかったら虚無はまっさらな土地だったかもしれません。

その虚無に、ロバートが堕ちてしまったため探さないといけません。ただ作中で語られている通り、「モルがコブの邪魔をする」傾向から逆算して、モルがいるであろうモルとコブの家に向かいます。
ロバートを無事発見し、ロバートとアリアドネは飛び降りることで虚無内で死に、上の階層へと脱出します。(上の階層のキック(AEDのショック)で雷が鳴っていますがキックでは抜け出せていません。)

(その後の動き)
コブはその後自分の作った投影であるモルと決別することができました。しかしサイトーが上の層で息絶え、虚無に落ちてくると読み、コブはそれを待つことを決意します。サイトーが死んだらそもそも任務失敗なので仕方ないですね。

ロバートの時は、「モルと一緒にいる」と比較的容易に見つけることができましたが、サイトーはそうはいきません。おそらくとんでもなく長い時間を探したり彷徨ったりしたんだと思います。
冒頭と最後のシーンで出てくる和洋入り混じった不思議な城は、おそらくサイトーが虚無で作った城です。コブは自分から虚無へ潜ったためあまり老いていませんが、サイトーはそもそも虚無を虚無だと思っていないため、長い年月を経てしっかり年老いています。

そして冒頭のシーン、倒れていたコブの持ち物のトーテムを見て、だんだんと記憶が蘇ってきます。コブはサイトーの目を覚まさせ、現実世界に戻るため、「信じて飛べばいい」“take a leap of faith.”という、昔サイトーが言っていた台詞で説得を試みます。

ラストシーン - 飛行機から降り、子供が待つ家へ

虚無での長い年月から目を覚ましたコブとサイトー。サイトーも何をすべきか思い出し、電話をかけます。
コブは無事に入国でき、家へと帰ります。トーテムを回しますが、ずっと会いたかった子供たちが現れ、トーテムそっちのけで子供を抱きしめます。
幸せな時間が流れますが画面はトーテムへ。コマは少し揺れながらもまだ回っています。


考察

「ラストシーンは現実と夢のどちらなのか」

冒頭でも少し触れましたが、この映画のラストシーンは、ハッピーエンドシーンでありながら、トーテムのコマは回っており、止まるか止まらないかのところで映画が終わります。
また、幼い息子ジェームズの「見て 作ったの がけの上のおうち」という発言も、砂場の城にしては表現がでかくないか?もしかして「おうち」っていわゆる虚無の世界の建物?などと深読みもできそうな感じで、余韻というか余白たっぷりで終幕します。

実際、コブは序盤のアリアドネが天地創造するシーンの後を最後に "トーテムが倒れるのを目視" しておらず、例えばユスフの薬から目覚めた時などはそもそも回せていません。夢オチの証拠をあげようと思えば、それ以降のシーン全部夢!と無理やりもっていくこともできるのかもしれませんが、個人的には普通にハッピーエンドだろうな、と初めて観た時や学生の頃は考えていました。

今回大人になって改めて観て(深く没入して観て)、「コブがトーテムをそもそも重要視していない」ことに気付きました。
夢か否かを判断するためにトーテムを持ち歩いていますが、ラストシーンで言うように、コブの実際の判断基準は「モルに対する罪悪感」にありました。なので、彼にとってトーテムとは形だけのもの。アリアドネにトーテムの種明かししているシーンなどは初見の時は、コブそれ言っちゃだめじゃん、とか、観てる側にも説明いるしな、みたいなメタ的な解釈してたんですが、そうじゃないんですね。逆に彼にとってトーテムが重要なアイテムでないからこそ種明かしできたのかもしれません。

また今回一番強く思ったのが、コブにとって「コマが止まるか否かはどっちでもいい」ということです。上述したトーテムで夢か否かを判断してなかった、という文字通りの意味もありますが、より踏み込んだ上でも、どっちでもよかった。
映画ラストの虚無においてモルとの別れ、決別を果たしたコブは、人生の中でずっと持っていた大きな後悔を成仏させることができたのだと思います。
そんなコブにとって、もはや夢か否かは瑣末なことで、「目の前にいる子供達と一緒に過ごせる未来」へ「信じて飛ぶ」“take a leap of faith.”のが重要なんです。

モルが虚無の世界を選んだのも、最後のコブの選択も、それぞれの答えであり、自分が生きる世界を自分で選ぶ、自分が信じたところへ飛び込むしかない、ということがこの映画の結論なんだろうなと思いました。

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そのあと映画館からの帰り道にすごく充実した気持ちでこのnote書き始め、一応改めて調べるかーっていろいろ観てたら、自分がこの映画にハマり始めた当時は明かされてなかったノーラン監督やマイケルケインさんのインタビューとか結構出てきて、なんだやっぱりそうなんじゃん!ってなりました。興味ある人は是非調べてみてください。


一番書きたかったことが書けて嬉しいです。
そのほかにニヤニヤした細かい設定も書き連ねていきますね。

ど頭の新幹線のシーン「列車は嫌いだ」

サイトーの夢の中から出て、新幹線でコブが京都で先に降りる、みたいな時に言ってた言葉です。
さらっと言ってますが映画観た後だと、そりゃ列車は嫌いよね、って思います。

作中で実は繰り返されている言葉

冒頭でサイトーから任務を持ちかけられる時の言葉「信じて飛び込め」”take a leap of faith.”は、実は複数回登場しています。わかりやすいところでは、虚無でおじいちゃんになったサイトーに向けて、最後にコブが発言していますね。
また実はコブは過去に結婚記念日のホテルで、飛び降りる直前のモルからこの言葉を投げられています。コブにとってこの言葉は忘れられない記憶のはずなので、偶然かもしれませんが冒頭のヘリコプターでサイトーに言われたこの言葉、もしかしたら任務を受ける決め手になったのかもしれません。

ここからは想像ですが、ラストシーンの虚無でモルから「ここにいよう」と説得される際に言われる「あなたは混乱している」「子供達はここにいる、顔を見てあげて」は、ずっと前におそらく当時混乱していたモルに、コブが放った言葉なんだろうなとも思いました。夢に現れるモルはコブが作った投影なので自分の言葉で苦しめられる構図は容易に想像できます。また一般的に夢の中の世界は記憶の整理と言われたりするので、自分の放った言葉や言われた言葉が夢の世界を構築していそうだなと。

名前の由来 特にアリアドネ

作中の登場人物の名前、ちゃんとそれぞれ由来に意味があって、行動原理や作中の役割が名前からもわかったりするのでそれもとっても素敵なんですが、なかでもアリアドネという名前は本当にいい。

ギリシア神話に出てくるクレタ島の王ミノスとパシファエの娘。アテナイの英雄テセウスに恋し、テセウスが迷宮ラビリントスに入るときに道案内の糸玉を与えて助けた

精選版 日本国語大辞典より

実際作中での彼女の役割は本当に大きく、任務の成功といった表面的なところはもちろん、コブのモルへの罪悪感という迷宮から脱出の鍵を与えたのも彼女ではないでしょうか。いや名前いいな。

あとは物語の主要メンバー、ドミニクコブ、ロバート、イームス、アリアドネorアーサー、モル、サイトーの頭文字でDREAMSになるとか、イームスの名前がDr.Eamesでdreamsになるんじゃないかとか色々細かい遊びがたくさん散りばめられてます。そういうの好き。

挿入歌 エディット・ピアフ『Non, je ne regrette rien』(水に流して)

作中のキックの合図として流れるシャンソン、"Non, je ne regrette rien"。
「夢の世界では時間の感覚がゆっくりになる」という設定から、この楽曲のリズムがゆっくりになって、下の世界ではおどろおどろしい響きになっていますね。エンドロールで気付かされた方も多いのではないでしょうか。

この曲のタイトル"Non, je ne regrette rien"。
直訳すると意味は「私は決して後悔しない」です。
「後悔」っておいおい…
何か考察の余地ありそうな雰囲気してますね。


考察よりも浅い浅い感想

ここからはそんなに何も考えてないただの感想をつらつらと…

ノーラン監督作品同じキャスト出すぎ

結構あるあるかもですが、ノーラン監督の作品、同じキャストがめちゃくちゃ出てくるので、他作品観ているときに謎の感動に包まれます。
マイケル・ケインさんとか体感大体全部出てる。
やっぱ監督と役者さんもチームだから、信頼してる人のほうがやりやすかったりするんでしょうか。日本だと三谷幸喜監督の作品も同じ人多い印象あります。

今回社長の息子だったロバート(キリアン・マーフィー)は「バッドマン3部作」や「ダンケルク」もに出演されてますし、来年公開(するのか?)の最新作「オッペンハイマー」では主役ですね。
※違う監督の作品ですが「TIME」に出てきた時は出てきた瞬間主人公より好きになりました。今思うとメタ&バフですね。

僕が今作で一番好きな(おそらく気が合う)キャラクターはアーサー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)です。こちらもやはり「ダークナイト ライジング」に出てきた時はテンション上がりました。

あとこれは関係ないかもしれませんが、モル(マリオン・コティヤール)は2007年公開の映画「エディット・ピアフ~愛の讃歌~」でエディット・ピアフ役を演じているようです。僕この映画はまだ観たことないんですが、むむむ、エディットピアフって名前なんかさっき聞いたな…???(確信犯)

作中の好きな英語表現

英語勉強の方法として「好きな映画を英語字幕+英語音声で観る」っていうのがありまして、これ、内容を知ってる映画かつ繰り返し観ないとわかんなかったり聴き取れなかった箇所がそのまま流れちゃうので、実践できる映画って限られてくると思います。自分にとってできそうだったのが「インセプション」でした。結果実践しまして、やってた時はリスニングの点めっちゃ上がりました。

観ていて耳に入ってきた、作中の好きな英語表現をいくつか紹介します。

・Necessary risk
「イームスを誘うためにモンバサに行くの?あそこ敵の庭だよ?」に対するコブの発言です。日本語字幕では「仕方ない」って訳されてますが、なんか必要経費的な意味になりそうですよね。英語いいな。逆にこれを「仕方ない」って訳してるのもいいな。

・Very very powerful people
大学教授である義父(マイケルケイン!)に、今回の任務の説明するときに出てきた「ものすごく(裏の)力をもつ権力者」です。
そのあとのpeople who I believe …って続いており、関係代名詞やんけ!って英語の勉強にぴったりでした。

・I bought the airline.
この作戦やったら飛行機のファーストクラス貸し切らなあかんね、みたいな時にサイトーが言った「航空会社を買収した」です。キョトンとした顔がにくいですね。
日本語だと「航空会社を買収した」っていういかつい言葉ですが英語はめっちゃ簡単。わかりやすい。すごい。

・Step back inside!!! James and Phillipa are waiting for you.
この辺は聞き取りあってるかわかんないです。
モルが飛び降りようとしているところで裏で必死にコブが叫んでいる台詞です。そのあとの「ジーザスクライスト」も、あーこういう時に言うのかって思いました。多分視聴10回目くらいの時にこれジーザスクライストってOMGみたいな意味やんって気づきました。深刻なシーンなのにすみません。

英語って意外と簡単な単語で複雑な表現してるの面白いよね。

このnoteの写真にも使った「トーテム」

ブルーレイの初回限定版についてきたトーテムです。いいでしょ。
大切にしまってましたが、今回35mmフィルム観るにあたって、109プレミアムってめっちゃいい感じの映画館なので、せっかくやし写真撮ったろ!って思って久しぶりに引っ張り出しました。
コマなので回りますが、裏面にはしっかりとINCEPTIONと刻印されています。特典って感じ。刻印ない方がかっこよかったのでは

しっかりと刻印されたトーテム

実は時々再上映してる『インセプション』

実は『インセプション』割と再上映してます。
これまで普通のシアター、IMAX、MX4Dなどで再上映していてタイミングあれば都度足を運んでいました。今回の35mmフィルムも合わせてどれが一番良かったか。ダントツで35mmでした。ありがとうございました。

IMAXはやっぱ綺麗だし迫力あるしでこれはこれで素敵でした。35mmが味あるのに対し、こっちはデジタルの良さ全面って感じでしたね。
MX4Dはめっちゃ序盤で酔いました。三半規管がもう少し強ければ楽しめたかもしれない…


あとがき

・ノーラン監督の作品の中で一番大好きな作品だったので、こうして改めて自分の考えをまとめられてよかったです。

・主要キャラクターだとアーサーが一番タイプが近いので好きです。
「ミスターチャールズはこの前失敗したんやからやめとこうよ」とかマジでそう思う。逆にイームスはタイプが真逆なので柔軟な発想できるところとか憧れます。アリアドネは可愛くてモルは怖いです。ロバートはイケメン。

・「夢」をテーマにした作品だと今敏監督の「パプリカ」も面白いですよね。そもそも「夢」自体、不思議ですごく興味あります。
明晰夢とかもすごそうだし、アカシックレコードの話とかも面白いよね。

・「インターステラー」も「TENET」も大好きなんですが、ちょっとこのあたりからはちゃんとした物理学の知識がないと難しすぎて、まるでわかんないので、解説動画を結構観てます。特にYouTubeでたてはまさんの動画はめっちゃ観てます。本当にわかりやすく、一から解説してくださるのでオススメです。さすがに山崎さんとの対談動画は熱すぎてびっくりしました。

・「インターステラー」も35mmで観たいんですがインターステラー人気すぎて毎日即完しててすごい。本当にチケット取れない。一周回って一番好きな映画「インセプション」で良かったまである…

・これは言っていいのかわからないですが、googleで inception script とかで調べると、英語の台本が割と普通に読めます。そういうもんなんですかね。そして英語の台本読んでたら、アーサーとアリアドネのキスシーンの部分、全く記述なくて、あれアドリブだったの?ってなりました。だとしたら素敵アドリブすぎる。

・109シネマズプレミアム新宿、チケットかなり高かったですが本当に素敵だったので、タイミングあれば他の映画でも観に行きたいです。

・最近はゴジラ-1.0にメンバー4人とも各々別で観に行ってどハマりし、先日感想会しました。楽しかったです。

・来年は「オッペンハイマー」も気になっていますが、どうやら1月に「レザボア・ドッグス」「千年女優」がそれぞれ再上映するってことでこれは絶対観に行かんと…


長々と読んでくださってありがとうございました。
メンバーでリレー投稿しているこのnote、今年の僕の投稿は最後になります。2023年ラスト投稿はドラムの髙木!

2023年もとっても楽しかったです。ありがとうございました!
2024年も今の段階で楽しいことがたくさん決まっていまして、とってもワクワクしています。バンド楽しいです!これからもよろしくお願いします!

宮地 正明

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