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ASDの子供を育てているお母さんが創設した屋内遊び場inオーストラリア

 発達障害をもった子供も安心して遊べるインクルーシブな屋内遊び場は、自閉症スペクトラムの娘と保護者の私にとって、貴重な存在です。特性に配慮した設備とスタッフのお蔭で、安心して子供も楽しむことができ、普段の外出では周囲や子供への諸々のケアで気が張りがちな親にとっても、心穏やかに過ごせるスペースです。

 メルボルンには、幾つかそうしたインドアのプレイセンターがあります。発達障害の子供に配慮しつつ、すべての子供に解放されている遊び場です。以前、その一つ、We Rock the Spectrumという、フランチャイズ化して国際展開もしている遊び場を下の記事でご紹介しました。

 今日は、自身もASD(自閉症スペクトラム)の子供を育てているお母さんが、彼女の母と一緒にオープンした、My Puzzle Houseをご紹介します。体育館のような広い空間に沢山の遊びの選択肢が詰まった、素敵なところでした。ご自身の育児をきっかけに、このようなプレイセンターをオープンして運営するバイタリティーと、お子様を含め多くの当事者家族の力になればという深い愛情に頭が下がります。娘もとても喜んで、二時間の貸し切りがあっという間に過ぎた滞在でした❢

◆My Puzzle Houseの魅力◆

◎ぶつかっても痛くない素材の遊具

 まずは、安全面の配慮がありがたかったです。通常の公園で楽しめるようなブランコや滑り台、ターザンが室内に置いてあるのですが、ぶつかっても転んでも痛くないように、緩衝材で巻かれたり、柔らかい素材で出来ていたり、工夫されていました。ASDの子供は、年齢が上がっても、なかなかバランスをとるのが難しかったり、身体の動かし方がわからなかったり、という場合があります。そうすると、外の公園では危ないことも多いのですが、ここでは安心して遊べると思います。

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◎多様な興味に応える多彩なコーナー

 ここに来れば、身体を動かすことが好きな子供も、落ち着いて遊ぶことが好きな子供も、自分の興味に合った遊び方が必ず見つかるくらい、各種コーナーが充実しています。娘は終始動き回っていましたが、落ち着けるコーナーにも、本、パズル、コスチューム、模型の電車、テント、おもちゃ等々、面白そうなものが沢山ありました。

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◎気持ちを落ち着ける部屋がある

 ASDの子供にとって、喧噪から逃れられる場所があると、興奮を鎮めるのにとても助かります。以前のWe Rock the Spectrumにもありましたが、この施設にも、やはり、照明を落とした、気持ちの落ち着く部屋が用意されていました。ビーンズバッグの他に、身体をすっぽりと包んでくれるソファもあり、姿勢の定まらない子供でも座って休むことができます。

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◎感覚刺激のオブジェがある

 上の写真の、暗い部屋の奥にあるピンクの水柱は水槽のオブジェです。絶えず泡が下から上がり、中ではイミテーションの魚やくらげが泳いでいます。横の丸いボタンは、それぞれ異なる色を成しており、押すと水槽の色が変わります。同時に、それが何色か、音声で教えてくれます。療育グッズともなり得るオブジェです。娘は自分で色を変えてみながら、ずーっと水槽に見入って、かなりここで時間を費やしていました。適度な感覚刺激と共に、水と光の不思議な因果関係に、意識を集中していたようでした。

◎三種のハンモック(セラピースイング)がある

 下の写真にある、吊り下げ袋のようなハンモックは、セラピースイングと呼ばれ、ASDの子供に人気が高いようです。ASDのみならず、様々な発達障害の子供達のために、感覚統合の療育において使用されることでも知られています。日頃、多くの親御さんがASDの子供用にハンモックを家に取り付けた写真をSNSで投稿しているのを見かけます。我が家は賃貸アパートなので出来ませんが、オーストラリアの家は広い家が多く、また療育グッズとして費用が助成金で賄えるので、取り付ける人も多いのでしょう。

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 こうした抱きしめスイングは、以前のWe Rock the Spectrumにも置いてあって、娘が気に入っていたのですが、今回も大好きでした。ぎゅっと抱かれるので、余計な感覚刺激や、自分でバランスをとるための工夫などが必要ないところが、他のハンモックと違います。この、抱かれて緩やかにたゆたう浮遊感は、おなかの中にいた時の感覚にも似ているのかな~、なんて勝手に想像しました。とても心が落ち着くようで、ここに入ると静かに揺られています。この施設には、抱きしめスイングを含め、三種のハンモックがありました。それぞれの子供の感覚にとって一番ぴったりくるものを選んだり、違いを楽しんだりできます。

◎カフェが併設されている

 カフェエリアの充実も嬉しいです。エリアからは、二階建ての施設すべて見渡せるようになっていました。もちろん、子供を離して遊ぶことは推奨されていませんが、保護者二人以上で出かけた場合には、一人がここで休んだり、子供も含めランチやティータイムを楽しんだりすることができます。このテーブルにも、感覚遊びを含めた子供のおもちゃなどが沢山置いてあって、なるべく飽きずにいられるような配慮がなされています。

◎施設利用に助成金を使える場合がある 

 オーストラリアのビクトリア州が発達障害の子供に支給している助成金を、このインドアプレイセンターのような、インクルーシブな遊び場に使える場合があります。この施設もその一つでした。遊び場が、オーナーと客だけ関係で孤立せず、政府の福祉にも支えられているのは、ありがたいことです。
 ただ、それぞれの子供がどのくらい支援を要するかによって、助成金の使い道に規定があります。自分の子供が該当するかどうかは、助成金を支給する機関(NDIS)に確認する必要があります。

◎その他

 スタッフは自閉症スペクトラムの子供を持ったお母さんなので、とても理解があり、子供も私たちも温かく見守ってくれます。子供に無理に話しかけず、浅からず遠からずのサポートをして下さいます。今はコロナで出来ませんが、普段はASDの子供達向けのヨガやミュージック等のクラスも開設しているようです。療育グッズや自閉症関連の本もここで購入できます。
 私たちが訪れた時はロックダウンのために貸し切りオンリーの運営形態でした(普段も、予約すれば貸し切り可)。娘はロックダウンの緩和後、人のいる公共スペースに再度慣れるまで時間がかかっています。公園でも他に遊んでいる子がいると遊ばないという傾向が強いので、貸し切りは本当にありがたかったです。

◆感想◆

 公園の苦手な娘がここでは弾けて喜んでいて、胸がいっぱいになりました。また、周りの目を気にしなくてもいい、娘に自由にさせてあげられることでもう十分に素晴らしいのに、夫と私が、交代で珈琲を飲むことまでできました。普段の気を張った生活から、ぽっかりと、その時間だけ穴があいたように、無為で穏やかなひと時でした。親世代にとっても、こういう遊び場の存在は救いになります。
 メルボルン近郊にお住まいで、ASDのお子様を育てているご家族の方がいらっしゃったら、こちらのプレイセンター、オススメです。もしかしたら、日本でも、オーストラリアでも、今後、こうしたインクルーシブな環境を有する遊び場が増えるかもしれません。これからもどこかで情報を見かけたら、足を運んでみたいと思います。


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