Lee Anderts(リー・アンダーツ)  

こんにちは。 困った家族を失ったことで、世の中の困った家族に頭を抱えている人々を支えて…

Lee Anderts(リー・アンダーツ)  

こんにちは。 困った家族を失ったことで、世の中の困った家族に頭を抱えている人々を支えていきたく思い、個人的福祉活動『オルタナティブ福祉』を不定期に開催しています。 2023年9月22日、ここでの連載が『母がゼロになるまで』(河出書房新社)という書籍になりました。

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まずはじめに。

わたしにはひとり、母がいました。 彼女とわたしはふたり、二人三脚でわたしの成人手前まで生活を共にしてまいりました。 わたしが育ったのは、立ち上がると天井から下がる照明器具のカサよりも上に目線のある、足元にたくさんのゴミのあるお家。 子供は親しか知らず、疑うこともなく心から信頼しているため、何かおかしいなと遠くで感じながらもそれを受け入れ、わたしは大人になりました。 大人になって、更に大人になって、 色々なことを知り、色々なものを見、いよいよあれがおかしなことだったことを

    • 2.

      学校を終えたわたしは足早に父の写真館に向かった。その日も特別な用事はなく、ただ新しくできた友達に会いに行くように、わたしの足取りは軽かった。写真館の扉を開けると、営業が終わった店内のテーブルで、父はお酒を飲んでいた。 少し酔っ払っているようだ。 ウイスキーと思しき茶色の液体が入ったグラスを握り潰すように手の中におさめながら、父は何か言葉を吐き出そうとしては、飲み込んでいた。 わたしは向かい側の椅子に腰掛け、その言葉が吐き出されるのを待った。 その時。 もう、とうに営業時間

      • 1.

        2月16日。もうひと月以上が経つが、母が死んで2年が経った。この日は2月にしてはとても暖かい日だった。二年前の厳しい寒さの中、室温設定を18度にしたエアコンのリモコンを転がして自室で亡くなった母を思い出し、「今日のこの気温なら亡くなることもなかったのかもしれないな」と思いながら、わたしは通勤電車に揺られていた。 この日、このことで連絡がきたのはひとり。 母の生前幾度となくお金を貸してくれていたが、珍しく母がきっちり返済していた相手、父の姉だった。 父と母はわたしが二歳の時

        • 母の3回忌を経て

          先日、母の3回忌の日。月日が経つのは早いなぁと思いながら、その時の考えを記そうと思っていたのですが、当日に連絡をくださった方を機に、頭の中が過去の過去に遡っていったのでした。 人の人生は、「こうすればこうなる」なんてものは恐らくなにひとつ存在しないとは思いますが、その可能性については否めないと思います。 わたしの母は、何だかんだと癖を持ち合わせた挙句、なかなかな最期を迎えてしまったのですが、そんな母のまわりの環境や、若かりし頃にわたしが見て感じたことなどを改めて記し、「こ

          年内最後のオルタナティブ福祉後述

          1週間以上が過ぎてしまいましたが、先日は、オルタナティブ福祉vol.5、お運びいただきました皆様、誠にありがとうございました。 5回目の今回、小指さんとハラナツコさんをお迎えして我々3人と、参加者の皆様との座談会となりました。 今回ご参加いただいた方々は、お話しをしたいという思いをお持ちくださった方が多く、またやはりそのお話し、お悩みも本当に様々で、改めて人の人生というものは、ふたつとして同じものが無いことを面白く思い、お話を聞かせていただいておりました。 中には先日の

          年内最後のオルタナティブ福祉後述

          年内最後のオルタナティブ福祉を前に

          12月16日の朝日新聞朝刊書評欄に、『母がゼロになるまで』の書評が掲載されていました。 書いてくださった方は、小澤英実さん。 わたしが母と関わったあの時間の中で感じたことや、それによって世間や社会に伝えたいことなどを大きく汲み取ってくださいました。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。 この本を読んだ後、「大変だったんだね、お疲れ様でした。」と感想をお寄せくださる方が時折いらっしゃいます。 感想は人それぞれなので構わないのですが、わたしは悲劇の物語を書

          年内最後のオルタナティブ福祉を前に

          『宇宙人の部屋』小林紗織

          読了。 日頃全くといっていいほど本を読まないのですが、今自分自身が取り組んでいること、そこにお越しくださる方々の中にこのような悩みを抱えた方がいらっしゃったことで一層の関心を持ったことは確か。 そしてやはり最近立て続けに著者の小指さんにお会いし、これまでの人生でのお互いの不在を埋めるかのように、様々な出来事を、それはまるで口から旗を出す手品のように、トゥルルルルルルルルルルルルーッッと旗を出し合い、彼女とわたしはとにかく話した。 その上で気付き好感を持った彼女の人柄や、会話

          『宇宙人の部屋』小林紗織

          オルタナティブ福祉vol.5

          年内最後のオルタナティブ福祉の開催のお知らせです。 12月18日月曜日19時から、場所はいつもの東京仙川タイニーカフェです。 今回はゲストに、先日の下北沢B&Bさんでのトークショーが記憶に新しい、『母がゼロになるまで』表紙装画の小林紗織(小指)さん、そして、音楽家のハラナツコさんをお迎えします。 小指さんは、言わずもがな。新刊『宇宙人の部屋』が発売になったばかり、お忙しい中駆け付けてくださいます。本のお話なんかもできたらなと思っております。 そして、ハラナツコさんは、知り

          『母がゼロになるまで』刊行記念トークショー開催

          おかげさまで、たくさんの皆さまに読んでいただいております『母がゼロになるまで』。 こちらの刊行を記念したトークショーが、下北沢の本屋さん、B&Bで行われます。 「家族と福祉と社会とわたし」 わたくし リー・アンダーツと、書籍の内容がギュッと詰まった素晴らしい装画を描いてくださった小林紗織さん(小指さん)、いただいた文章を読み、涙してしまいました帯コメントをくださった寺尾紗穂さん(寺尾さんはオンライン参加です)とでお話しをさせていただきます。 小林さんも、寺尾さんも、福祉

          『母がゼロになるまで』刊行記念トークショー開催

          オルタナティブ福祉後述

          9月23日、東京仙川タイニーカフェにてオルタナティブ福祉vol.3、 10月8日、大阪森ノ宮トヨタ店にてオルタナティブ福祉vol.4をそれぞれ開催いたしました。 オルタナティブ福祉vol.3 3回目のこの会は、わたしの著書の編集を御担当くださった河出書房新社の高野さんをゲストにお招きしました。 編集者ならではの視点での福祉や、何故わたしのnoteを書籍化しようと思われたのかという疑問も、皆さまの前でお答えくださいました。 とてもコンパクトな人数での座談会、皆さんが遠慮する

          nоteでの連載が、書籍化されました。

          こんにちは。 この度、9/22にこのnoteでの記事が河出書房新社より書籍化されることになりました。 タイトルは、『母がゼロになるまで』。 母とわたしのあの短くとも長い時間は、全くもってきれいな時間とはほど遠く、しかし忘れ去りたい過去でもない。 たくさんの方に読んでいただけたらと思っていたので、書籍化のお話をいただいた時は飛び上がる思いでした。 noteの本編に、大幅加筆修正を加えた『母がゼロになるまで』。 表紙は小林紗織さん。 works | koyubisaori

          nоteでの連載が、書籍化されました。

          オルタナティブ福祉vol.2 後述

          2度目開催のこの日、やはり緊張していたわたしは制作部長の勧めにより開演前にお酒で喉を慣らしてからのスタートとなりました。 おかげで、場に喉とからだが慣れた頃にアルコールが抜け、リラックスした2時間になりました。 緊張してかたまっている奴が場を取り仕切ろうとしているより、参加者の方々もほぐれますよね。 さて。 今回もたくさんの参加者の方々にお集まりいただきました。 前回は挙手制で皆様のお話を聞かせていただきましたが、今回は紙のアンケート形式で、その場でアンケートを書いていただ

          オルタナティブ福祉vol.2 後述

          オルタナティブ福祉vol.2

          2022年の終わりを目前に、今年の春からはじめましたこのnoteの記事をお読みいただきました皆様におきましては、ありがとうございました。 母を失くしたことで新たに芽生えたわたしのオルタナティブ福祉。 11月の座談会を経て今は近所のお困りの方の相談役として日々過ごしております。 年が明けたらご報告できることがいくつかありますが、先ずは2月25日(土)に、『オルタナティブ福祉vol.2』の開催が決定致しました。 前回の反省を元に、ご参加いただきます皆様とより対話をしていけ

          オルタナティブ福祉vol.2

          オルタナティブ福祉後述

          昨夜11月25日。 初めてのオルタナティブ福祉を終え、今に至ります。 元々ある福祉という単語に『オルタナティブ』を付けることにより、それは何か新しい物事に感じる反面、個人的に「オルタナティブなんだから」などと言って逃げに走らないようにと意識をしながらも、やはりオルタナティブに福祉を皆で話し合えたらと思っていました。 小さな喫茶店ことタイニーカフェに満員に集まってくれた皆様と、長引きましたが3部構成のイベントは、個人的な感触としてとてもとても、とてつもなく良いものとなりまし

          オルタナティブ福祉後述

          オルタナティブ福祉開催前述

          2022年11月25日、今夜わたしにとって初めての座談会を開催します。 これにあたり、開催前と開催後に短い記述をしたいと思います。 先ずわたしは、母の生活に携わったことで身の回りの生活やものの見方、他者への考え方が広がりました。 これについては母、ありがとう。 福祉制度というのは全国に出揃っていて、必要に応じてその制度を利用することができます。 そしてその当事者や、まわりの支援者の頑張り次第で物事は停滞もしますし、勿論解決や躍進も見込めます。 多くの場合どのような形

          オルタナティブ福祉開催前述

          マガジンハウスのwebサイト「こここ」にご紹介いただきました。

          間も無く開催の迫っておりますリー・アンダーツの座談会イベント、『オルタナティブ福祉』。 このタイミングでマガジンハウスのwebサイト 「こここ」に当記事をご紹介いただきました。 この半年、書いて書いて書いて書いたnoteの記事のタイトルに数字を振ったところ、本編は 83話ありました。 よくぞ皆様お付き合いくださったなぁ、とお読みいただきました方に感謝致します。 そして母。 よくぞそんな数にのぼる『思い出』を遺してくれました。 引き続き11月25日開催の座談会、 『オ

          マガジンハウスのwebサイト「こここ」にご紹介いただきました。