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スクラムマスターのファリシテーションスキル獲得のためのテクニック

スクラムマスターにファシリテーションは必要?

スクラムマスターにファシリテーションスキルが必要だということは、#ScrumMasterWay でも、スクラムの研修をしている Odd-e Japan でも同様に言及されています。
スクラム関係で活躍しているコーチや、会社の方々が重要視していますし、スクラムマスターの育成をやってきた私も重要だと感じています。

ファシリテーションとは何でしょうか?

英語のファシリテーションには、日本語訳として「容易にすること」や「促進すること」のような意味があるようです。一方、ビジネスの現場でファシリテーションというと会議の進行役という意味で使われることが多いです。
今回は、一般的に浸透している「会議の進行」という言葉とチームの促進の観点からから、「スクラムイベントに関する時間にチームを促進すること」とします。

ファシリテーションのできないとどうなるのか

スクラムマスターにファシリテーションのスキルがない場合、どんなことが起きるでしょうか? まず簡単に思いつくのは、スクラムで守るべきとされているイベントの開催時間(タイムボックス)が守られないことです。ズルズルとイベントが伸びてしまったり、話さないといけない事が話せないままに、会議室の時間や他の制限で終わってしまうことも考えられます。

さらに大きな問題としては、スクラムイベントで参加者から意見が出づらくなってしまったり、うまく意見がまとまらず次のアクションが決まらなかったりすることも出てきます。
具体的に考えてみましょう。日常の開発の時間に、ふりかえりで問題点を共有したいと思っていたAさんがいたとします。しかし、ふりかえりの時間までにそのことを忘れてしまっていたらどうでしょうか?当たり前ですがふりかえりで意見が出てくるはずがありません。しかし、このとき意見が少ないことに気づいて、ファシリテーターが過去1週間にどんな事があったらみんなで思い出す時間を作っていたらどうでしょうか。Aさんの共有したい問題点が思い出される可能性が高まるでしょう。
他にも酷いパターンを考えてみます。例えば、ファシリテーターが出てきた意見に対して価値判断をしていたらどうでしょうか? 気づいたことがあり共有したいと思ったBさんが、前回のふりかえりの時間にファシリテーターから意見を拾われずにスルーされていたらどうでしょうか。次の機会に、自分の意見は価値があると思われるのだろうか?と考えて意見が出しづらくなってしまいます。

このように参加者が同じであっても、ファシリテーターの能力が高いかどうかで意見が出づらくなったり、アクションが決まらなかったりしてしまうのです。

解決策

では、どのようなことをすればファシリテーション能力が高くなるのでしょうか。
・ファシリテーションのお手本を見つける
・ファシリテーションの前後に作戦タイムとふりかえりタイムを用意する
・ファシリテーションの練習をする

ファシリテーションのお手本を見つける

ファシリテーションを上達するためには、自分の理想のファシリテーションのイメージが持てるようにお手本を見つけます。同じ会社に自分以外のスクラムマスターがいるなら、他のスクラムマスターのファシリテーションを見せてもらうのがてっとり早い方法の1つです。チームの関係性ができているかどうか、なども影響しますが、他の人のファシリテーションで自分の中の目標を作るのがオススメです。

自分の会社にお手本となるスクラムマスターが居ない場合でも、諦めるのはまだ早いです。スクラムイベントのファシリテーションを見学するのが最もわかりやすいですが、それ以外の場面でもファシリテーションのお手本を探すことは可能です。オープンスペーステクノロジーという形式のイベントに参加することでお手本を見つけることができます。
特に、スクラムの上級者がよく集るイベントRSGT(リージョナルスクラムギャザリング東京)でファシリテーションのお手本を見つけると上級者のファシリテーションを見ることができるでしょう。とはいえ、RSGTは年に1回しかなく、参加費も有料のためもう少し手軽に学びたい方はSMN(スクラムマスターズナイト)に参加するのもオススメです。スクラム関係の話題に触れることもできますし、上手なファシリテーターの進行を見ることもできるお得なイベントです。

私も、オープンスペーステクノロジーにて、あまりも円滑に参加者の意見を引き出す先輩スクラムマスターを見て、自分の目指すファシリテーター像を脳内にイメージすることがデキるようになりました。

また、こういった「ファシリテーションのお手本を探そう!」というマインドは効果的で、対談イベントのモデレーターの人が話を振るのを見たり、普通の会議でも意見を集めて解決する流れから、お手本を見つけることができるようになってきます。

ファシリテーションの前後に作戦タイムとふりかえりタイムを用意する

作戦タイム、ファシリテーション、ふりかえりタイム

ファシリテーションでは、メタ認知と呼ばれる自分の思考を客観的に捉えて制御する能力も重要になってきます。参加者が話している内容を理解し、解決方向に導きながらも、意見を言っていない人や、参加者の表情、時間の進行などに気を配る必要が出てきます。そのため、メタ認知を毎回のファシリテーションのときに意識的に上達しようとすることは、飛躍的に能力を伸ばすことに繋がります。

しかし、メタ認知は、意識的に練習しないとなかなか身につけるのは難しいです。そこで、ファシリテーションをする前に作戦タイムと、後にふりかえりタイムを用意するのがオススメです。作戦タイムでは、1〜2分で次回のファシリテーションで意識して取り組むことを決めます。ふりかえりタイムでは、5分程度で前回のファシリテーションで取り組むことに決めたことができたかどうか思い出すようにします。

作戦タイムもふりかえりも、ファシリテーションの会の直前直後に考える必要はなく、事前に決めておいても問題ありません。その場合、内容を忘れないように簡単にメモをしておきましょう。そして、先輩スクラムマスターや、コーチが身近にいる場合には、自分の作戦タイムとふりかえりに同席して一緒に考えてもらえばより効果が高くなります。そして、さらに協力が得られる場合、ファシリテーションの場にも先輩スクラムマスターに同席してもらい、自分のファシリテーションを見てフィードバックをもらうと更に効果的です。

ファシリテーションの練習をする

ここまで、お手本をみつけることや、作戦タイムとふりかえりタイムの話をしました。しかし、結局能力の向上に重要なのは何度も練習を積むことです。今、スクラムマスターをやれているのであれば、普段のスクラムイベントも重要な練習の場になるでしょう。しかし、普通の練習と違うのは、失敗しづらいということです。

スポーツをするときも同じです。例えば、テニスで試合形式で点数を競うことを練習時間にやっていれば、失敗する可能性の高いサーブはできないわけです。試合では、無難なサーブを選ぶことになるでしょう。しかしサーブ練習なら、失敗しながらも効果的なサーブを身につけることができます。成功率5%でも、練習だとアグレッシブに試すことができるのです。

そのため、いつものスクラムイベントとは別に、失敗してもいいコミュニティのイベントなどで練習をさせてもらうのが効果的です。お手本を見つけるところでも紹介しましたが、オープンスペーステクノロジー形式の勉強会であれば、4〜5人に1人はファシリテーターが必要なので、練習させてもらいやすいです。年に5,6回あるSMN(スクラムマスターズナイト)に参加して、「ファシリテーションの練習がしたいので、ファシリテーションをさせてください」と申し出ると喜んで機会をもらえると思います。

まとめ

スクラムマスターのファシリテーションスキルが低いと、チームの意見を引き出せなかったり、解決策をまとめられず、チームでの問題解決があまり捗らなくなってしまいます。
そのため、オープンスペーステクノロジー形式のイベントであるSMN(スクラムマスターズナイト)などに参加し、ファシリテーションのお手本を見つけたり、ファシリテーションの練習をしましょう。そして、ファシリテーションをする場合には、事前に作戦タイムで何を意識的に取り組むか決め、事後にふりかえりの時間で自分のファシリテーションがどうだったか考えましょう。

ファシリテーションができるようになれば、スクラムマスターとしてチームから一目置かれること間違いなしです。ここまで読んでくださった方なら、チームの課題解決をガンガン進めていけるファシリテーターになれると信じています。一緒に頑張りましょう。

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