障がい者施設で起きる虐待をなくしたい。
僕にはダウン症という知的障がいのある弟がおり、母は障がい福祉サービス事業所で障がい者支援の仕事をしています。
僕も母の影響で障がい者支援の現場で非常勤職員として働き、その後、2014年に株式会社Lean on Me(リーンオンミー)を設立しました。
リーンオンミーでは、障がい福祉サービス事業所で働かれている職員さんへSpecial Learning(スペシャルラーニング)というオンライン研修サービスを提供しています。(https://leanonme.co.jp/service/speciallearning/)
障がい福祉業界の課題について
”障がい福祉サービス事業所”と聞いてもあまり馴染みのない方も多いと思いますが、知的障がいや発達障がい、身体障がいなど障がいのある子どもが通える特別支援学校という学校があり(昔は養護学校と言われてました)、そこを卒業した約3割の方が就職や進学し、残りの約7割の方が障がい福祉サービス事業所へいきます。障がいのある方にとって”最後の砦”となる重要な場所です。
障がい福祉サービス事業所は全国に約14万事業所あり、国や地方自治体などの予算で運営されています。(コンビニよりも事業所数が多いです)
厚生労働省の報告によると、障がい福祉サービス事業所での障がい者虐待の通報件数は年間約2,800件あり、これも氷山の一角だと言われています。
では、「なにが虐待にあたるか?」というと虐待の類型は大きく5つに分かれています。
また「なぜ虐待が起きるか?」についても厚生労働省が報告書を出しています。
530名の虐待をした人に対して、市区町村等職員が虐待の発生要因をまとめた結果、『教育・知識・介護技術等に関する問題』が一番大きな要因だとわかりました。障がい者支援の知識不足が虐待に繋がっているということです。
知識不足による虐待を防ぎたい!
僕自身も2013年頃から障がい福祉サービス事業所の生活介護で支援者として働き始めました。そのときに「現場で覚えて」というスタイルで事前に支援スキルを身につける術がなく、新人職員にはとても難易度が高いことに気づきました。
とはいえ、支援を通じて利用者さん(障がいのある方)の役に立ちたいという想いは人一倍持っていたので、先輩職員さんの支援を見よう見まねでやるのですが、”人によって支援の手法が違う”ことに違和感を持ちました。
先輩職員さんも利用者さんから目を離すと事故のリスクが高くなるので、ピリついた雰囲気で慌ただしく、とても現場で手取り足取り教えてもらう余裕はありませんでした。
障がい者支援の基本を先輩職員さんにも迷惑をかけずに、自分のペースで学べるものが欲しいと思って作ったのが、Special Learningです。
2013年に現場で気づき、2014年から支援についての情報を集め始め、2015年にアメリカのオレゴン州に1ヶ月間視察へ行き、様々な有識者の協力のもと2016年4月にSpecial Learningのサービスがスタートしました。
国内初の障がい福祉に特化したeラーニングサービスです。
Special Learningがあることで間違った支援をするリスクが下がり、感覚的な支援ではなく、”説明できる支援”ができるようになります。
障がい者施設での虐待のニュースを見ると悲しくて、悔しい気持ちになる。
直近の1ヶ月でも上記のような虐待のニュースを目にしました。
このようなニュースを見るたびに悲しい気持ちになりますし、自分の力不足も感じて悔しい気持ちにもなります。
どうすればこのような虐待を防げただろうか...
僕なりに経験談も含めて考えてみました。
虐待防止に向けた僕たちができる取り組み
前提として、僕は障がい者支援の仕事をされている方は、優しくて人に貢献する気持ちが高い方が多いと思っており、尊敬しています。(実際に僕が一緒に働いていた方々もそうでした)
ただ、日々の支援現場での仕事がマンネリ化していき、徐々に視野が狭くなって初心を忘れやすい環境にあることは間違いないです。
そのマンネリ化が、「できるだけ楽をしたい」というサボタージュとなっていき、言葉でのコミュニケーションが難しい利用者さんからの”伝えたいという行動”を適切に捉えられなくなっていきます。
その結果、”自分の思い通りに動いてくれない”利用者さんへ、フラストレーションが溜まり身体的虐待に発展するのだろうと思います。僕も支援者として働いていたときに同様にフラストレーションを抱えた経験があります。虐待をしそうになったこともあります。でもしませんでした。
そもそも”自分の思い通りに動いてくれない”という発想が間違っていて、障がいのある方は支援者に管理されるために生きているのではなく、一人間として「好きなときに入浴をしたい」、「好きなものを食べたい」、「スポーツがしたい」という当たり前の欲求を満たす権利があります。自分らしく生きたいと思っているはずです。
もちろん全てを叶えることは難しい現状も多いので、「どのようにすれば叶えられるか?」「どのようにすれば本人に伝わるか?」についてその利用者さんの障がい特性も考えながら支援計画を作成し、そして実践する。
決して正解があるわけではありませんが、それに挑戦し続けるのが支援です。
そのためには、障がい特性に関する知識、エビデンスをもとにした支援に関する知識など、常に勉強し続ける必要があります。
虐待事案の再発防止策については、発生したそれぞれの法人内で検討を進めていかれると思いますが、弊社としても「どのようにすれば支援者の皆さんが楽しく障がい者支援についての知識を高め、障がいのある方が適切な支援を受けれる環境を作り続けられるか?」について考え、サービス改善に努めていきます。
そして、”障がいのある方が自分らしく生きられる社会づくり”に挑戦し続けたいと思います。
障害者虐待防止法の改正に伴い
障害者虐待防止法の改正により、令和4年度から「従業者への虐待研修」「虐待防止委員会・虐待防止責任者の設置」などが義務化されます。
それに伴い、僕たちは元厚生労働省の虐待防止専門官の片桐さんに協力いただき、「制度と意義」についてのコンテンツを制作しました。
また、『多くの「行動的課題」のある人』へより高い専門性を持って支援に取り組まれている社会福祉法人北摂杉の子会(高槻市)の平野さんに法改正に伴い、現場でいち早く虐待防止を実践されてきた取り組みをテーマに、「現場での活用例」というコンテンツを制作しました。
これらは、Special Learningをご契約いただいている事業所の職員の皆さんはいつでも何度でもご覧いただけます。
(未契約の場合は下記からお申し込みできます)
定期的にセミナーも実施しています!
ICT導入、DX化などPCを使って仕事をされている会社ではごく自然に扱われているテーマですが、障がい福祉の現場だとサビ管や請求業務をする人、常勤職員の一部しかPCを使って仕事をする機会がなく、活用方法についての知識が不足していると思います。(これは業務上、仕方がないことです)
障がい福祉サービス事業所でDX化を進めることができれば、支援現場での作業時間を短縮でき、支援に向き合う時間をその分長く確保できるようになります。
また最近は支援学校でタブレット端末が導入されるようになり、アプリの文字盤を使ってコミュニケーションをとる学生も現れています。
もし支援者が「自分はITが苦手で使えない」なんてことになると、その障がいのある方から言葉を奪ってしまうリスクもあるので、いち早く慣れていく必要があります。
とはいえ、パソコン教室に通うのもハードルが高いと思いますし、限られた時間の中で要点だけ学べる機会が必要だと思うので、IT企業でもある僕たちが障がい福祉業界に向けたDXセミナーを定期的に開催しています。
下記のニュースページでセミナー情報が都度更新されていますので、ご都合の良いタイミングでぜひご参加ください!
インクルTechで解決する!
インクルTechとは、インクルージョン(Inclusion)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、SDGsに関心が高まる今、ソーシャルな課題の中でも、多様性の包摂を実現するテクノロジーを意味しております。
僕たちはインクルTech企業として、インクルーシブな社会の実現に貢献したいと思っています。
僕たちは家族目線、支援者としての目線、企業目線で障がい福祉サービス事業所の在り方について考えており、テクノロジーを通じて”知的障がいのある方の生きづらさを解消したい”と思っています。
なぜ「知的障がい」から取り組んでいるかというと、自分の気持ちを言葉にして人に伝えるのが苦手な方が多いので第三者が社会に対して啓発していく必要があると思うからです。知的障がい者フレンドリーカンパニーというサイトも設立し、賛同企業を募集しています。
発達障がい、精神障がいといった見た目でわかりづらい障がいのある方の啓発についても力を入れていきたいと思っております。
長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?