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私の夏の記憶は音と共にあって

夏の思い出といえば、学生時代の合宿を思い出す。私の所属していた部活は大所帯だったので、毎回数台のバスに乗って合宿所に移動して3泊し練習をして過ごす。


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強制的に部活に所属させる学校だったので、少し楽器を習っていた時期があったことを理由にオーケストラに入ったのだが、学校で静かすぎたせいでそばにいつもいてくれるような友人はいなかった。初めての合宿の年、クラスごとに分けられて一緒になった部屋のメンバーとうまくやれるのか。合宿のしおりを何度も読み返しているうちに当日が来た。不安の中バスに乗り込んだ。

バスがたどり着くと昼食を取り、さっそく練習が始まる。うちの部活は交響曲などはほぼやらず、有名な楽曲を取り上げることが多かった。経験者にしては下手だった私ではあるが、大人数でタイミングを合わせ厚い音を作り出すことにはもう喜びを感じていた。学生のアマチュアなのだからレベルは相応かもしれないのだが、自分がそのメロディーの一つであることを感じながら、曲の盛り上がりに差し掛かると緊張感と気持ちの高揚を感じる。


練習が終わると大会場で夕食を取る。そんなには美味しいわけでもないが量が多いこのご飯を、私は黙々と食べながら楽しそうに話す先輩と同級生を見つめることしかできなかった。もっと普通に話せたならいいのにと思いながらこういう時間が過ぎるのを待つ。そしてまた練習。


そしてそれが終わるとやっと就寝だ。しかし元気盛りの学生たちにとってはこの時間が楽しいようだ。例にもれず、自分のいる部屋でもトランプやウノをして遊び始めた。そういうゲームを一緒にするのは少しさみしかった私にとっても楽しいことだった。夜中まで先輩の見回りを避けながら彼らはワイワイやっていたが、私はくたびれて寝てしまった。

そんな3日を過ごし、バスでやってきた道を帰るとまた元の夏休みの日常に引き戻された気がして不思議な感覚に陥る。ただその時間は確実に私の青春時代だった。


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時が経って部活を引退して学校を卒業する年の文化祭、あの時合宿で練習していた曲が演奏されて思わず涙が出た。今でもその曲を聞くと、あの頃を思い出して、胸が締め付けられるようなでも懐かしい、そんな気持ちになる。

♪タイタニックメドレー











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