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「フリーランスは外れ者なのか?」失敗を繰り返しながらも貫いた1つの軸|エルボーズ小谷草志

2022年10月に5周年を迎えたエルボーズ。課題意識を持ちデジタルプロダクトを立ち上げたい企業と、エンジニア・デザイナーを開発チームとして提供するサービス『ATTEND biz』を提供しています。

創業者は、株式会社schooや株式会社ASOBIBAなどを経験してきた小谷 草志さんです。2017年の創業以来、働く時間や場所を自由に選べるフリーランスのエンジニア・デザイナーが増えることを目指し、事業を展開しています。

その背景には、創業前のある疑問がありました。小谷さんが抱いた疑問とは――そして、失敗を繰り返しながらも現在に至るまで、貫き続けている“あること”を伺いました。

課題意識のある企業と開発者の架け橋となる『ATTEND biz』

――まず、エルボーズが提供しているサービスについてかんたんに教えてください。

現在は、月額制アプリ・システム開発サービス『ATTEND biz』を提供しています。デジタルプロダクトを立ち上げたい企業にエンジニアやデザイナーなど必要な人材をチームとして提供。

そしてエルボーズ専属のPM(プロジェクト・プロダクトマネージャー)が、企画設計から運用改善までを伴走し、持続的な開発体制を提供しています。

――なぜ、その事業を?

多くの業界でデジタルプロダクトが作られていますが、それらを手掛けるのは、IT業界出身者が経営するスタートアップ企業であることが多い。つまりIT業界出身者が、非IT業界に新規参入しているんです。

でも、業界の「中にいる人」たちが感じる課題を、その人たちで解決していくこと、そのためのプロダクト開発を支援し伴走していく仕組みは、企業側・開発者側双方にとってwin-winだと思っています。

課題を解決していきたいと思っている中小企業があったとしても、自分たちで開発人材を集め、雇用し、プロダクトを作っていくのはハードルが高い。一方、エルボーズには、IT業界の最前線で活動しているエンジニアやデザイナーが登録しています。

課題意識を持っている中小企業と彼らが出会いチームを結成することで、一気に課題解決のプロダクトが生み出される。この世界観はエルボーズのミッションにも合っていますし、双方にメリットがあり、良い仕組みなのではないかと考えています。

――そんなエルボーズで働くエンジニアやデザイナーは、どのような働き方をしているんですか?

フリーランスや個人事業主として専業で活動している人もいれば、副業で週末だけ活動している人、夜だけ活動している人などさまざまです。

エルボーズでは「“誰と、どこで、何をするか”を、もっと自由に。」をミッションに掲げています。目指しているのは、自分の実現したいライフスタイルは自分でデザインすること

――「実現したいライフスタイルを自分でデザインする」それが実現できたらいいですよね。

はい。そして究極的には、どのような形態で働くかは関係ないと思っています。自分が「こういうライフスタイルを選択したい」と思ったとき、その1番の障壁になるのが「仕事」ではないでしょうか。

会社に勤めていれば、会社の決定に従わなければいけません。個人事業主は自由だと思われがちですが、社会的信用が低いゆえの弊害があります。

そういった窮屈感を解消し、自由度高く働くための1つの手段が、エルボーズで提供しているような、プロジェクト単位でチームを組むことができ、複数のプロジェクトに柔軟にコミットできる環境だと考えています。

現在エルボーズが提供できるのは、働く場所・時間を自由に選べること。どこに住んでいてもチームの一員になれますし、基本的に週1日からコミット可能です。

このように柔軟にコミットできる環境を提供していくことが、自分が実現したいライフスタイルを自分自身でデザインする人を増やしていくことにつながると考えています。

100%がパラコミ人材。ほかにもフルリモート・フルフレックスなどを実現

社会の「フリーランス」への理解に疑問を感じた

――ところで、なぜエルボーズを立ち上げたんですか?

私がフリーランスになって3年ほど経った頃「本来、フリーランスや個人事業主は自分のスキルを活かして働いているはずなのに、周囲からはそう見られない」と、疑問を感じるように。

フリーランスで活動していると「あいつ、いつまで定職に就かずにフラフラしているんだ」「フリーターとフリーランスの違いって何?」などと言われるフリーランス仲間もいました。

6〜7年前の話で、現在は見方が変わってきていると思いますが、日本社会のフリーランスへの理解が浅く「外れ者」と見られる雰囲気が強かったんです。

そしてフリーランス側の調査をしてみると、7〜8割の人が、自分の人脈から新しい仕事を受注していることがわかりました。もう少し幅広く仕事を受注できるようになると、いいのではないか――。

その思いから、自分が抱えているプロジェクトを誰かとシェアし、プロジェクトごとにチームを作れる『TEAMKIT』というサービスを作ることに。ただ、この仕組みを作るには資金調達が必要だったので、株式会社を設立するに至りました。

創業時に立ち上げた、共創型のチームづくりを支援する「TEAMKIT」

――私がエルボーズを知ったきっかけも、実は『TEAMKIT』でした!創業時に運営していた『TEAMKIT』について、もう少し詳しく教えてください。

ユーザーが、自分が抱えているプロジェクトを『TEAMKIT』内でシェアし、そのプロジェクトに参加したいフリーランスが応募するマッチングプラットフォームです。

2018年4月、クローズドなβ版で事前登録開始のプレスリリースを出しました。この時集まったのは約800人。一人ひとりを精査し、200人の登録者がいる状態でスタートしました。800人から200人に絞ったので、意欲の高い人たちが集まっていましたね。

ただ、最初の『TEAMKIT』は大失敗でした。

――大失敗とは?

私たちが入れたい機能を全部入れてしまったんです。その結果、とても使いづらいサービスになってしまって……。

β版リリースから半年ほど経ち、このままではまずいと考え、フルリニューアルすることに。リニューアル版は、プロジェクトを登録する機能とプロジェクトに参加したい人が意思表明できる機能の2つだけ。原点に立ち返り、ごくシンプルなサービスに作り直しました。

リニューアル後は比較的好調で、β版リリースから1年が経った頃には、登録者数が約3000人、掲載プロジェクト数が400、70%ほどのプロジェクトでチームを結成できていました。

2019年4月で登録者数が3000人になったので、企業の課題解決に対してチームを結成できるサービス『TEAMKIT ATTEND』をスタート。現在提供している『ATTEND biz』のコンセプトに近いサービスでした。

ところが、これがまた全然うまくいかなくて(笑)。

――そうなんですか?!いったいどんな課題が……?

『TEAMKIT ATTEND』の営業をして、企業からの依頼はありました。

しかし、エルボーズにはエンジニアやデザイナーの3000人のリストがあるので「エンジニアを極力安く、来週から5人程度入れてくれないか?」という依頼が多かったんです。

この経験でわかったのは、日本の商習慣上「外注するときには業務を切り出し、できるだけ安い値段で受けてくれたらいい」という文化が強くあること。

同時に、エンジニアなどにプロジェクトの上流から入ってもらい、一緒に考えながら進める形での発注方法に、クライアントがそもそも慣れていないことにも気付きました。

さらにフリーランス側の問題点として、プロジェクトに参加表明する際、守秘義務があって実績を公開できないジレンマがあることも見えてきました。

このような課題がわかったことで「間に入る人間がいないと、自分の実現したいライフスタイルを自分でデザインできるような仕事環境を、フリーランスの人たちに提供できない」と考えたんです。

「事業展開はトラベリングではなくピボットを」

――それでエルボーズのマネージャーが、エンジニア・デザイナーのチームと企業の間に入る『ATTEND biz』の形になったわけですね。

そうです。ただこのビジネスモデルは、プラットフォームビジネスや業務委託での人材紹介ビジネスと同じで、ごく一般的なビジネスモデルです。そのため、企業側と開発者側双方にとって、いい状態を作れるイメージがまったく湧きませんでした。

そこで2ヶ月あまり、すべての業務を止め「どうしたら自分たちのビジョンに反さず、双方にとってwin-winの形にできるか」と議論し続けたんです。当時のメンバーには「あの時は、しつこすぎて困った」と言われましたが(笑)。

しかし、私にとっては必要な作業でした。私は事業展開を考えるとき「ピボットしなければいけない。トラベリングはダメだ」と思っていて。

ピボットは軸がしっかり固定されていますが、トラベリングは軸がぶれてしまう。軸がぶれると「これは、果たして自分がやりたかったことなのか?」と迷い、進まなくなる原因となります。

この2ヶ月間があったからこそ、エルボーズ専属のPMが両者の架け橋となり、発注の切り出しとマネジメントを担う形を作れて『ATTEND biz』にピボットできました。

あの時は大変だったなぁ…(笑)と語るメンバー

――エルボーズの中期的な目標はありますか?

まずは『ATTEND biz』に入ってきているプロダクトを、さらに伸ばしていくことが1つ。そしてエンジニア同士・デザイナー同士の勉強会を開いていきたいと考えています。

チームの一員として仕事をするので、お互いの知見を共有でき、新たなスキルを身につけられる環境にはなっているとは思います。しかし、フリーランスや個人事業主には、雇用されている人に比べて学びの場が少ない。

学びの機会を提供できれば、フリーランスや個人事業主の人たちが、より自由度高く次のチャレンジ、その次のチャレンジを実現できると思います。
 
――なるほど!いいですね!ちなみに、さらに長期的な目標や、今後取り組みたいことはありますか?

柔軟にコミットする働き方を実現した人を10万人まで増やしたい、と経営チームでは話しています。

あとは、最初にリリースした『TEAMKIT』は、2021年3月にサービス運営を終了しています。しかし諦め悪く(笑)、現在も内部では使っていて、いずれは再び世に出したいと考えています。

『TEAMKIT』のシステムで、プロジェクトごとに、相性なども含めてパフォーマンスが上がるような状態を作り出し、システム・チームメンバーの双方がフィードバックでき、チーム力を高めていく。チームを最適化できるようなサービスにできればと思っています。

長期的にはこのようなことを考えていますが、まずはなんと言っても『ATTEND biz』に入ってきているプロダクトを、さらに伸ばしていくことが最重要。そのために現在、一緒に働いてくれるメンバーを募集しています。エルボーズでは柔軟な働き方ができるので、興味のある方はお気軽にご連絡ください!


一見、創業時にリリースしたサービスと現在のサービスは大きく違うように感じます。ですが事業のベース、そして小谷さん自身の根っこには一気通貫した「軸」があり、それがまったくぶれていない。

物腰が柔らかく、グイグイ引っ張るリーダータイプではない印象を受けますが、信念に揺らぎがないことが語り口から伝わってきました。

今後、さらなるサービス展開をしていったとしても、創業時の原点からぶれることは決してない。そんな信念の強さを感じるインタビューでした!

(文・北森 悦)


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