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ボリッチ大統領 一般教書演説 提言内容和訳(2022年6月1日 )

まえがき

例によって、誰もあんまし興味持っていない、どこにニーズがあるのかよくわからないけど個人的に備忘録として残しておきたいテキストを置いときます。
※演説のテキスト起こし訳じゃなくて、提言内容まとめの抄訳です。

2022年6月1日、バルパライソのチリ国会にて、ボリッチ大統領が政権発足後約80日を経て、現政権のロードマップといえる一般教書演説をしました。
内容的には従来の基本的な方針に沿ったものですが、それがより具体的に語られ、今後の政権運営の指標やマイルストーンの設定になっています。
多分歴代大統領初のノーネクタイ教書演説、そのスタイルはともかく、治安問題やリチウム公社、社会保障関連などタイムリーな内容満載なので、早速チリ各紙各メディアから評価や批判が飛び交ってますが、今回はその辺の批評的評価はほっておいて、単に内容を取りまとめただけです。
とりあえず、今後の政権評価や、政権終了時の成果の答え合わせ用として、今回の2022年一般教書演説特設サイトに纏め上げられていた「五つの軸」で挙げられたそれぞれの基本方針を和訳して取りまとめておきました。
余裕のある時にそれぞれの政策方針や提言内容に関する補足などを付け足そうと思います(が、多分一度アップしたら放置する可能性高いですが面倒だし)。
さて、5つの軸、それぞれ
①社会的権利(32提言)、②より良い民主主義へ(26提言)、③正義と治安(16提言)、④包括的成長(25提言)、⑤環境(3提言)
とまとめられてます。暇な人はご参考に。


社会的権利

  1. 8月に年金改革法案を提出
    年金の最低額を25万ペソにするなど。

  2. 国民介護制度の確立
    高齢者の介護などに関する、医療機関や介護士などへの補助を含めた制度設計

  3. 先住民省の設立に向けた法案の後押し
    現在の文化省所属の先住民局を独立した省として確立

  4. 包括的教育制度「Seamos Comunidad」の再活性化

  5. 地域教育システムの改善と、市町村立公立学校の同制度への移行

  6. 全ての教育段階で包括的性教育を推進する法案の提出

  7. 技術修練センターへの資金的援助や組織開発資金の優先度を上げて質を強化

  8. 税制改革承認後、教員向け歴史的債務修復の法案提出

  9. 教育ローンや高等教育用学資調達制度改善の法案提出

  10. 教員への二重査定評価を撤廃

  11. 週40時間労働法案を推進

  12. ILO(国際労働機関)にて採択された暴力及びハラスメント条約(第190号) の承認

  13. 国民皆保険制度法案を提出して保険制度を改革

  14. 国民医療保険(FONASA)加入の低所得者層(CおよびD層)の医療自己負担率を低減

  15. 2022年内に新たにコキンボ、バルパライソ、アラウカニアの3箇所の外科手術センターを開設して2023年までに国内7か所に施設を増やし、手術待ち時間を短縮

  16. 2022年にサンアントニオ市、2023年にアントファガスタ市、イキケ市にそれぞれ地域精神医療センターを建設し、国内各地に12か所のメンタルヘルスケアに特化した医療施設を建設。

  17. 子供のメンタルヘルスサポートプログラムを強化し、対象地域を2倍に、そして3歳~4歳の幼児へカバー対象を拡大。

  18. 安楽死法を緊急動議として法案成立を急ぐ。

  19. 政権末までに合計26万軒の貧困者層向け住宅提供を目指し、まず6万5千軒の公団住宅を建造。

  20. 住宅補助としての適正価格賃貸住宅を拡大し、2023年までに1500世帯に対象を拡大。

  21. 郊外エリアでの包括的都市化計画「Construyendo Barrios」を推進。

  22. 国内190か所に地域介護・保護センターを設立。

  23. 19000世帯を対象に、住居の断熱保温工事の援助を提供。

  24. 2025年までにすべての国民がインターネットアクセスを保証されるようにデジタルデバイドゼロ計画を推進。

    1. インターネット接続が基本的インフラとみなされる法案を提出

    2. 引き続きこれからのデジタルインフラ計画を推進

  25. 土地銀行を拡張し、公用地の住宅用途への転用を推進。

  26. 資金的に苦しい公立学校のスポーツ関連インフラ設備の改善。

  27. 2023年のパンアメリカン大会、パンアメリカンパラリンピックの開催をホスト。

  28. 今年7月から文化事業従事者への助成金の給付開始。

  29. 地方での文化事業再活性化戦略を推進。

  30. 文化事業向け「パソ・ア・パソ(新型コロナ対策)」の適用を促進。

  31. 文化事業助成基金の設立と文化事業従事者保護のための新たな法案を準備。

  32. この政権末までに国家予算の1%を文化事業向けに割くことを目指す。


より良い民主主義へ

  1. 国家移民制度を推進し、国家移民局の機能を強化して海外からの移民の身分登録をより迅速化し、ビザの認証と提供の時間を短縮。

  2. 「我らの北部計画」の一環として、北部の国境線地方であるアリカ・パリナコッタ州、タラパカ州、アントファガスタ州への公共投資を行う。

  3. フェミニズムに根差した外交政策を前例のない方法で主導する。

  4. 公的清廉性国家戦略を推進する。

    1. 公共事業や官公庁入札から利害対立を排除する法案を推進。

    2. ロビー活動法と公務員の利害対立に関する法案を提出。

    3. 軍組織にも対象を拡大した公益通報者保護法案を推進。

    4. 透明性を高めるためのTransparencia 2.0法案を緊急動議として成立を急ぐ。

  5. 報道の自由を守る法案を推進し、情報に接する基本的権利を保護する。

  6. チリのマスコミやメディア制度の権利に関する様々な提案を取りまとめて体系化する契約に署名。

  7. ビオビオ州、アラウカニア州、首都圏州での養子受入家族制度の強化。

  8. 政権期間中に新たな地域青少年保護オフィス制度を確立。

  9. 包括的高齢者活動支援法案を推進。

  10. 高齢者長期ケア施設(ELEAM)を新たにタラパカ州とニュブレ州に建設し、チリ全土をカバーする。またデイケア施設(CEDIAM)予算を50%拡張してケアをより強化する。

  11. 先住民保護法の枠内で、土地の買い上げ予算を2021年比で倍増。

  12. 障がい者向け「バリアフリー国家計画」の推進。

  13. 「ホセ・マティアス法(LGBT差別を苦にした学生が自殺した事件を機に法案が作られた、LGTBT+差別禁止法)」の法案推進。

  14. 「サジェン法(妊婦や3歳以下の乳幼児を持つ母親への刑の執行を一時停止する刑法改正案)」を推進。

  15. 青少年社会復帰支援センター設立法の緊急動議を支援。

  16. 軍事政権下の行方不明者捜索計画を主導。

  17. 2019年大規模社会運動に関連する犠牲者の真実、正義、補償のための包括的アジェンダを実行。

  18. 賠償措置:2019年社会運動被害者への医療保険プログラムを再編成し、賠償年金の増額と包括的な賠償委員会を設定。

  19. 人権保護委員会の設立法案を提出。

  20. アラウコ地域、カウティン地域、マジェコ地域に全長449㎞の道路敷設と38か所の上水道敷設計画を推進。

  21. 29の医療施設にてジェンダーアイデンティティに関連するプログラムを実行。

  22. 公用・財政用地の返還と共同管理協定の推進:

    1. ラパヌイ(イースター島)で空港用地として土地を不法に接収されたとして、現在まで空港滑走路を占拠して抵抗しているロエ家との土地の返還に関する政府との覚書。

    2. アイマラ族のチュスミサ・ウスマガマ地域の約1万5千ヘクタールの土地の返還。

    3. カウェスカル国立公園、モンクル砂丘、ランコ湖のイジの丘の三か所にて、環境保護、文化遺産保護、科学的目的を主眼とした先住民コミュニティーとの土地共同管理の合意。

  23. ロスリオス史跡、ホセ・ドミンゴ・カニャス史跡の遺産保護と再評価

  24. 「女性が暴力被害に遭わない権利法案」の推進と実行。

  25. 既に提出された親の養育食費支払い義務責任法の推進。

  26. 軍組織内でのジェンダー暴力防止プロトコルをジェンダーおよび差別防止、ダイバーシティーの観点から見直し。


正義と治安

  1. 公共安全・市民保護・市民共生省の設立法案を提出。

  2. 警察組織改革案を提出。

  3. 警察組織の再配備。

  4. 刑事警察組織(PDI)に専門家養成のため18億ペソを投資。

  5. 警察組織の2023年度の新規人材雇用40%増。

  6. 2022年度中に新たに4か所の警察署を設置、2023年度には更に5箇所に警察署、3箇所に刑事警察署を設置。

  7. 「武器を少なく、安全をより高く」計画を実行。

    1. 流通する銃火器を制限するため、銃火器の所持禁止と監視、登録などの手続きを強化。

    2. 違法武器密輸を行う犯罪組織への捜査を強化。

  8. 新たに国家組織犯罪対策警察を新設。

    1. 組織犯罪の予防、統制、追跡の為に30億ペソの予算。

    2. 組織犯罪検挙の為の法整備を推進(捜査手段の技術改良、初動捜査増強、金融分析班の能力強化、違法組織の定義の更新など)。

    3. 国家情報局の強化と近代化。

  9. 犯罪被害者包括的救済法案の提案。

  10. 12の州において違法ビジネスや違法露天商等の統制、検問、刑事追及、適法化アクションプランの提案。

  11. チリ南部での警察組織力強化。

    1. 制服警察(カラビネーロ)を400%キャパ増強。

    2. 警察車両購入予算として45億ペソを投入。

    3. 捜査用ドローン購入予算として10億ペソを計上。

  12. 地方犯罪被害者援助プログラムの改善。

  13. 「我らの北部」計画のインフラ改善計画の為に480億ペソを確保。2022年度にはまず170億ペソをアントファガスタ州、タラパカ州、アリカ・パリナコッタ州内の拘置所、警察署、留置所のインフラ改善予算として確保。

  14. 共謀犯罪の罰則強化と、そのための新たなツールを経済犯検察庁に提供し、共謀犯罪の捜査能力を強化。

  15. アリカ、タルカ、モリーナ、パラルの刑務所の衛生、配電設備、構造設備の改善、サンホアキン女性刑務所の拡張、ビオビオに複合刑務所を設置。

  16. 消費者協同組合から申し立てのあった天然ガス価格の談合に関する事案への対応をチリ消費者庁に委任。


包括的成長

  1. 国家辺境地警察の創設、およびパレナ県とコチャモ県をタラパカ州に編入。

  2. 地方行政組織の透明性を高めるためのプロセスを完遂。

  3. 地方歳入法の提出。

  4. 燃料価格安定資金(MEPCO)に15億ドルを投入。

  5. 税制改革法案を2022年6月に提出。

  6. 公共エリア改修計画を全土で実行。

  7. 30日支払法案(販売やサービス提供の支払い期限を従来の60日から30日に短縮)の改革案を提出。

  8. 経済連携性および協調性研究所を開設。

  9. 新たな漁業法の推進と、17の漁業埠頭建設。

  10. グリーン水素産業の発展を推進。

  11. 国道5号線(パンアメリカンハイウェイ)の建設と改善を継続、コンセプシオン、バルディビア、ビジャリカへのアクセス路を新造(49億ドルの予算)

  12. アタカマ州とアラウカニア州内の空港設備の拡張と改善の第二期コンセッション開始。

  13. アルト・オスピシオとイキケ間のロープウエイ事業第二期コンセッションを開始。

  14. 65か所に地方上水道施設を建設し、75か所の上水道施設の改修を行い、15万5千人の水道状況を改善。

  15. 地方衛生サービス関連法を実行。

  16. 小規模農家への援助資金として250億ペソを確保。

    1. 伝統的作物の作付け支援

    2. 危機的不作支援金

  17. チリ国営銅公社(CODELCO)の強化。

    1. 90億ドル以上を探鉱予算として、また8千6百万ドルを技術開発予算として確保。

    2. 温室効果ガスを64%低減、淡水の使用量を42%低減、産業廃棄物の55%をリサイクル。

  18. チリ国営リチウム公社の設立法案を議会に提出。

  19. 都市交通関連プロジェクト

    1. サンティアゴ首都圏での990台の電動バスを含む1600台の新規都市バス事業の入札実行。

    2. バルパライソ市とアントファガスタ市で電動バス運行サービスの開始。

    3. 2023年にラセレナ市とコキンボ市を結ぶ電化交通を設立。

    4. 地方公共交通の改善のため全土41か所の道路改善事業。

    5. 総延長100㎞以上の自転車専用路と歩行者専用路の設置。

  20. METRO(地下鉄)

    1. 2023年にメトロ2号線と3号線の拡張工事終了。

    2. 新規7号線の着工。

  21. 鉄道開発国家計画の推進。

    1. バルパライソ・サンティアゴ間鉄道の建設調査を開始。

    2. チジャンからコンセプシオンまでの鉄道路線拡張。

    3. キンタ・ノルマルからバトゥコ間、メリピジャからサンティアゴ間、テムコからパドレラスカサス間の鉄道路線敷設と、中央駅での鉄道車両12台増設。

  22. チリ国営石油公社(ENAP)から10万世帯に向けてLPGボンベを配給。

  23. ガス市場とその中でのENAPの役割を強化する法案を提出。

  24. 新たな水資源ガバナンス国際委員会で主導的な役割を果たす。

  25. GNP1%を科学技術と技術革新のための予算に充てるように目指す。


環境

  1. 気候変動の枠組み法案を提出。

  2. ターコイズ対外政策方針(グリーン[環境]とブルー[海洋]を組み合わせた定義)を固める。米州太平洋沿岸国に海洋保護条約の共同提案。

  3. 各地方に河川流域評議会を設置。



おしまい。

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