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[メモ] チリ共和国 ボリッチ政権 閣僚リスト

はじめに。

2022年3月11日に政権交代で大統領に就任するチリのボリッチ新政権の各官僚の大まかな経歴というか素性をメモ代わりに。個人的なまとめなんで、間違いとかあっても気にしないでください。するな。
後半の大臣はよく知らんので、超大雑把なまとめです。

ここまでの経緯としては、去年2021年末の大統領選挙で右派候補カスト氏を退けて見事チリ憲政史上最年少(選挙時35歳、大統領就任時に36歳)、しかも伝統的な既存政党に属さない候補としてガブリエル・ボリッチ(Gabriel Boric)が次期大統領に当選。
立候補時点から参謀としてボリッチの政策案や他候補との調整、支持政党との折衝などを重ねてきたジョルジオ・ジャクソン議員、決選投票から選挙キャンペーンの顔役としてチリ地方各地でのドブ板巡業を、乳児抱えて飛び回っていた元チリ医師会会長のイスキア・シチェス。
そのあたりのボリッチ腹心が政権で主要なポジションを占めることは織り込み済みではあったんですが、それ以外の閣僚人事が注目されてました。
特に、チリ共産党がどこまで入り込むのか、左派既存政党の影響力をどこまで排除して独自性を保てるのか。社会主義寄りな政策が打ち出されるのか、中道に寄せてくるのか。
そういった概況を俯瞰するため、先月1月末に発表された閣僚人事のそれぞれの素性を備忘録的にまとめておきます。

主要閣僚

*画像はそれぞれのTwitterプロフ画像。年齢は3月11日の政権交代時の年齢です。

内務・公安大臣 [Interior y Seguridad Pública]

イスキア・シチェス ・パステン(Izkia Siches Pastén)

内務大臣イスキア・シチェス
内務大臣イスキア・シチェス
  • Twitter @izkia

  • 女性・36歳

  • 所属政党:無し(ただし元チリ共産党青年部)

  • 前職:チリ医師会 会長

  • 職業・専攻分野:医師(内科・外科)

  • 出身大学:チリ大学医学部

  • コメント:
    ボリッチ立候補時にはまだチリ医師会の会長として、ピニェーラ政権および保健大臣(マニャリッチ、パリシ)に保健行政に関して辛辣な批判を行っていたシチェスが、大統領選決選投票を前に医師会会長の座を辞してボリッチ陣営の選挙参謀に就任。出産後間もないタイミングで意外性が高かったうえに、知名度でいえば政権側、そしてカスト陣営の選挙キャンペーン担当に就いたダサ保健次官と同様に知名度は圧倒的で、双方右派(カスト&ダサ)、左派(ボリッチ&シチェス)という非常に分かりやすい二極対立的な構図となってたんすね。
    ただ、乳飲み子を抱えて、カスト有利と見られていたチリ北部を中心に地道かつ精力的なドサ回り的キャンペーンは北部の保守層の票もがっちりキャッチしてボリッチ勝利の最大の功労者となったともいえる傑物。
    内務大臣としてはチリ史上初の女性内務大臣、また民政移管後初の特定政党に属さない内務大臣。
    国政を担う政治家としては経験値ゼロですが、医師会会長時代に常々現ピニェラ政権に対して批判的な言動が目立ってたんで、いずれ政界に入ってくるんだろうなぁとは皆さんなんとなく予想してたんだけど、今回の一連の展開、「医師会会長辞職してボリッチ選挙参謀(去年11月25日)就任」、「12月19日にボリッチ新大統領当選」、「1月22日に内務大臣内定」、という高々二か月程度で凄まじい人生の揺さぶり方には驚愕です。
    ボリッチ新大統領とは大学生時代から学生運動関連での戦友といった具合で個人的な信任も厚く、またフェミニズム運動には一家言ある方なので、現政権のイデオロギー面での方向性には相当強く関与していくことになると思います。出身地はチリ最北のペルーやボリビアと国境を接すアリカ州。チリ最南端のマゼラン海峡を望む町プンタアレナス出身のボリッチとは出身地が直線距離で4000キロほど離れてますが、その辺は関係ないですかね。ただ、この北部出身であることが選挙キャンペーン時の北部ドサ回りで効果を発揮したのは間違いないでしょう。
    あと、実際に乳児を子育てしながら内務大臣をこなしていくこととなるので、働く女性。働く母親支援、子育て支援などもリアルタイムで並行して進めることになるので、同じく女性で共産党員のジャネッテ・ハラ労働大臣と共に結構ドラスティックな労働環境改革進めてく予感。
    思想的には一時期チリ共産党青年部に所属してたこと、大統領選キャンペーンでシチェスが左派連合Apruebo Dignidadの代表として旗振り役だったことから、チリ共産党、社会党の左派系等を志向しているのは間違いなく、焦点は「どこまで左に振れてるのか?」といったとこすかね。

外務大臣 [Relaciones Exteriores]

アントニア・ウレホラ・ノゲラ(Antonia Urrejola Noguera)

外務大臣アントニア・ウレホラ
外務大臣アントニア・ウレホラ
  • Twitter @totonia68

  • 女性・53歳 

  • 所属政党:無し(ただし社会党に近い)

  • 前職:米州機構 人権担当委員

  • 職業・専攻分野:弁護士

  • 出身大学:チリ大学 法学部

  • コメント
    主要閣僚の中では多分一番認知度の低かった方では?と思われる、チリの外交を担うウレホラ大臣。発表時「誰?」という反応が一番大きかったんじゃないかと思います。
    父方も母方もいずれもチリの歴代大統領の血を引く名門のご出身ですが、そのキャリアはバリバリの人権畑で、米州人権委員会の委員をこなしたり、OEA(米州機構)でチリ社会党の重鎮、ホセ・ミゲル・インスルサ御大が事務局長の時代に人権委員会の上席評議員を務めてました。本人の社会党に近いスタンスというのは、このインスルサ氏との関係とかも大きいんでしょうね。このOEA時代にキューバやカリブ諸国の先住民問題にも深くかかわっていたので、外務のみならず現在のチリが直面しているマプチェ問題などの内政の先住民問題にも多少関わってくるかもしれません。
    OEA関連では、その後先住民人権問題から、国際人権委員会(CIDH)の女性の権利問題担当委員として勢力的に活動しており、そういった方面で現ボリッチ政権の方向性とガッツリ方向性がハマってます。
    ただ、多分チリ国民及び周辺国皆さんの懸念は、外交畑の経験値が不足しており、経済外交(TPPどうする?とか)や防衛問題などでどこまでプレゼンスを示せるか、といったところですかね。目下のところではチャビスタ独裁のベネズエラ、オルテガ独裁のニカラグア、その後ろで色々と暗躍しまくりのキューバ共産党との対外関係が一番気になるところですが、正直なところこれまでの中道系政権程明確に反対の旗印を掲げ続けられるかどうか、ちょっと心配です。
    また、ボリビアとは色々と国境水利問題や海への出口問題が未だにくすぶっていたり、しっちゃかめっちゃかな国政が続いているペルーとの関係、債務問題でケツに火がついてからもう数十年ケツが燃え続けているアルゼンチンとの関係、APECや太平洋同盟などの民主国家寄合での立ち位置など、結構ガチで不安な点は否めません。

国防大臣 [Defensa Nacional]

マヤ・フェルナンデス・アジェンデ(Maya Fernández Allende)

国防大臣マヤ・フェルナンデス
  • Twitter @Mayafernandeza

  • 女性・50歳

  • 所属政党:チリ社会党(PS)

  • 前職:チリ下院議員

  • 職業・専攻分野:生物学・獣医

  • 出身大学:チリ大学 獣医学科

  • コメント
    出ました、1973年のピノチェト将軍による軍事クーデターの際に命を絶ったアジェンデ大統領の孫です。それが国防大臣就任という報にチリは結構湧きました。良い意味でも悪い意味でも。
    いや、茶化す訳ではないんですが、アジェンデの孫というと、ベネズエラのチャビスタの工作員として面倒くさい感じになっちゃってるPablo Sepulveda Allendeという悪しき前例があるので、ちょっと警戒せざるを得ないんですよね。一応ご本人はチリ下院議会議長もこなした経験豊富な政治家で、議会内の国防委員会のメンバーも長年勤めているので、防衛関連の事情にはそれなりに精通しているとも思われます。
    ついでに言うとチリの国防大臣といえば、ラゴス政権下でバチェレ(元大統領・現国連人権高等弁務官事務所代表)さんがチリ史上初の女性大臣として就任したシンボリックな椅子で、そこに今度はアジェンデの孫議員が!というのは結構なインパクトを伴って報じられました。
    そのインパクトのうちネガティブな面とは、クーデターでチリを追われるように逃げ出した先のキューバで多感な幼少・思春期の21年間を過ごした、という生い立ちに加えて、ご主人もキューバの外交官(共産圏の外交官というのはスパイや工作員と同義語)というバックグラウンド。
    さらにチリ社会党の重鎮で共産党ともパイプが強く、若手の共産党議員ほどメディアには顔は出さないもののその血筋と存在感からもうチリ左派系政治家の顔役的なポジション。
    なので、イデオロギー的指向は完全にそっち方面と考えて間違いない人物、キューバと非常に近しい人物が国防大臣の職に就くということは、チリの国防に関する情報が高確率でキューバをはじめキューバ傀儡のベネズエラやニカラグア、影響下にあるボリビアなどにも齎されるんじゃね?というリスクと今後数年間お付き合いせねばならんすねー…という杞憂がチリの国防関連界隈に漂っております。
    追い打ちをかけるように、防衛次官にはこれまた筋金入りの共産党員、しかも共産党系の大学破産スキャンダルの渦中にいる人物が任命されたため、この辺は次官任命時に右派系はもちろん、各種メディアでも大いなる懸念の色を纏って報じられました。

財務大臣 [Hacienda]

マリオ・マルセル・クジェル(Mario Marcel Cullell)

財務大臣マリオ・マルセル
財務大臣マリオ・マルセル
  • Twitter @mariomarcelc

  • 男性・62歳

  • 所属政党:無し(以前はチリ社会党に近かった)

  • 前職:チリ中央銀行総裁

  • 職業・専攻分野:経済学者

  • 出身大学:チリ大学 経営学部、ケンブリッジ大学

  • コメント
    今回のボリッチ政権の閣僚発表でチリの金融市場が一様に安堵した人事が、この財務大臣人事。特に左派政権の中でチリの財政をどうするの?素人突っ込んだら破綻まっしぐらやで?という懸念が相当強かったんですが、そこに中央銀行総裁というポジションから誰よりも国の財務を熟知しており、実際の現場も深くよく知るマルセル氏が就任したことは株価や為替にすぐさま好意的な方向で反応が出ました。
    また、ラゴス政権下で国の予算を練り上げてまとめる役割を担っていたこともあり、この人事で「ボリッチ政権は経済政策でそこまで無茶はしないだろう」というとてもポジティブなメッセージを打ち出す形になったといえます。
    もしここで経済に疎い若手イケイケのコミュニストなどの名前が挙がってたら、チリペソは対ドル1000ペソ突き抜け、チリの株式は急落し、海外資本は一気に国外に逃避してたと思われるんで、この人事はホント最良のオプションだったと思います。それぐらいチリ中銀の財政かじ取りには定評があり、カオスな要素うごめく南米大陸でハイパーインフレも迎えずに安定した通貨と財政を維持しているってだけでも凄い事なんですよ。
    この方の人となりはあまり知らないんで他に書くことないですけど、まぁ組閣人事で一番の安心ポイントはこの財務大臣ですかね。
    ちなみにTwitterでの本人による「なぜ財務大臣職を請けたのか?」との問いに「エコノミストは自分にとって居心地のいい場所から飛び出して、居心地が悪くとも限界に挑戦して貢献せねばならん」と。

大統領府 官房長官 [Secretaría General de la Presidencia]

ジョルジオ・ジャクソン・ドラゴ(Giorgio Jackson Drago)

大統領府官房長官ジョルジオ・ジャクソン
大統領官房ジョルジオ・ジャクソン
  • Twitter @GiorgioJackson

  • 男性・35歳

  • 所属政党:民主革命党(RD)

  • 前職:チリ下院議員

  • 職業・専攻分野:情報工学

  • 出身大学:チリ カトリカ大学 工学部、チリカトリカ大学学生会会長(FEUC)、チリ全国大学生連盟(CONFECH)広報担当

  • コメント
    ボリッチ立候補からずっと政策案・マニフェストの策定を主導し、選挙キャンペーンを戦い抜き、ボリッチの右腕というか参謀というか、ひょっとしたらボリッチの「中の人」なんじゃない?とも目されている若手政治家。
    高校生時代からNGO系の活動に関与し始め、チリ私立大学の名門カトリカ大学学生会の会長の時代にチリ大にいたボリッチとチリ全国大学連盟を通じて一緒に様々な学生運動を主導したことから、この二人はもう15年近い戦友というような立場。特に2011年のチリ全土で巻き起こった学生運動で、ボリッチ、カミラ・バジェホなどと共にチリ全土的に名前が知られるようになった具合。
    本人は高校生までチリのバレーボール代表として活躍したスポーツマンだったという側面も。
    政治家としては、ボリッチ大統領選挙初回投票時からボリッチの支持を取り付けるため各党、各党派連合と結構シビアな交渉を続けて左派支持を取りまとめた手腕は結構大きいし、どっちかというと情に絆されるボリッチとは対照的にタフネゴシエーターというキャラでボリッチ陣営の番頭的な存在として圧倒的な存在感を示してきた。
    ホント、ボリッチの政治的な話のベースは基本的にジャクソンが下準備してるといっても過言ではないぐらい。特に数字や個別の政策については、ボリッチは結構発言がユルく失言に近い失敗も多いんだけど、こういった部分を補うために大統領官房という、ボリッチの広報的なポジションに就任したのは、ボリッチの行動と発言を統制する役割を期待し、自任してるからなんではないかな、と思ってる。

政府 官房長官 [Secretaría General de Gobierno]

カミラ・バジェホ・ドウリング (Camila Vallejo Dowling)

政府官房長官 カミラ・バジェホ
政府官房長官 カミラ・バジェホ
  • Twitter @camila_vallejo

  • 女性・33歳

  • 所属政党:チリ共産党(PCCh)

  • 前職:チリ下院議員

  • 職業・専攻分野:地理学者

  • 出身大学:チリ大学 建設・都市開発学部
    チリ大学学生会(FECH)会長、チリ共産党青年部

  • コメント
    チリ国内では圧倒的な知名度のチリ共産党若手リーダー、チリ左派の象徴的存在であり、ぶっちゃけ見た目が美人なので注目度も高い名物政治家。日本の週刊誌が取り上げたら、高確率で「美人過ぎる共産党員」みたいなアオリで紹介れそう。
    生い立ちもバリバリコミュニスト系で、共産党員の両親のもとに生まれ、自身も若いころから共産党青年部、大学時代はチリ全国学生連盟の代表を務めあげ、ボリッチ、ジャクソンらと共に2011年の学生運動では象徴的なリーダーとして注目を浴び、当時の大統領とりも知名度と期待度が高かったという恐ろしいアカ系美女。学生運動からそのまま下院議員として共産党から出馬し圧倒的な得票で国会議員に。
    とにかく若いころから数多の学生運動の修羅場を潜ってきただけあって、メディアの扱いは上手いし、演説やPVなどもこれまでの旧態依然とした政治のスタイルから、なんつーか親近感溢れるイケてるコミュニスト的なイメージの造成に大いに力を発揮した感じ。バジェホのお陰で共産党は世代交代が一気に進んで認知度も高まった印象。
    ただ、イデオロギー的にはガッチガチの共産主義者なので、腑抜けた資本主義者が近付くとアカく大火傷するのは間違いない。
    対外的にもキューバはもちろん、ベネのチャベスに対しても明確に否定的な発言は滅多に発しないし(特にキューバを正面から批判することはない)、チリの反共的な従来のスタンスがバジェホ入閣で揺らぐんじゃね?って心配は大いにある。
    特に政府官房という立場から、メディア的には一番目立つポジションで、あらゆる政策に関与することになるので、この辺のバジェホの闊達な言動をボリッチがどこまで統制できるのか、大統領官房のジャクソンと対立はしないんだろうか、と何かと心配事が絶えない感じ。

各大臣

経済産業振興・観光大臣 [Economía, Fomento y Turismo]

ニコラス・グラウ・ベロソ(Nicolás Grau Veloso)

経済大臣 ニコラス・グラウ
  • Twitter @nico_grau

  • 男性・38歳

  • 所属政党:社会収斂党(CS)

  • 前職:経済学者

  • 職業・専攻分野:経済

  • 出身大学:チリ大学 経済学部、ペンシルバニア大学

  • コメント
    第1期バチェレ政権の官房長官だった母パウリーナ・ベロソの息子であり、チリ大学学生会の代表を務め2006年の全土的学生運動では主導的な役割を果たした。
    またTV出身の有名女性議員ベアトリス・サンチェスの大統領選挙キャンペーン参加したり、ボリッチ選挙キャンペーンに初期から賛同していたりと左派系政治家の活動を支援する場面が多いんだけど、具体的な彼の政策や基本姿勢についてはよく知らない。

社会・家庭発展大臣 [Desarrollo Social y Familia]

ジャネッテ・ベガ・モラレス(Jeannette Vega Morales)

社会・家庭発展大臣 ジャネッテ・ベガ
  • Twitter @jeanvegamorales

  • 女性・64歳

  • 所属政党:無し(以前は民主主義のための党(PPD)党員)

  • 前職:医師

  • 職業・専攻分野:医療、公衆衛生

  • 出身大学:チリ大学 医学部、イリノイ大学

  • コメント
    この内閣で二人いる「ジャネッテ」さんのうちの一人(もう一人は労働大臣)。第1期バチェレ政権で保健次官やったり、WHOの貧困平等社会対策室の室長やってたり、どちらかというと保健行政のエキスパート。格差問題や貧困問題も関連するテーマだから、まぁ人選としてはOKなんとちゃうかな、と。また保険システムに関しては、国民保健制度FONASAの局長もやってたということなので、そういった社会保障にも明るいと期待できる。
    あとはよく知らん。

教育大臣 [Educación]

マルコ・アントニオ・アビラ・ラバナル(Marco Antonio Ávila Lavanal)

教育大臣マルコ・アビラ
  • Twitter @ProfMarcoAvila

  • 男性・44歳

  • 所属政党:民主革命党(RD)

  • 前職:教員、NGO勤務

  • 職業・専攻分野:教育

  • 出身大学:シルバ・エンリケス・カトリカ大学

  • コメント
    「誰や?」がチリ全土的に飛び交った人事の一人、教育大臣マルコ・アントニオさん。知名度も認知度も低く、任命時のプレス用写真も無くて本人画像も経歴も最初はよくわからんかった。
    教育大臣に教員(一応教育行政には長く携わっている経歴はある)が就任することもニュースといえばニュースなんだけど、本丸は本人がホモセクシュアルであることカミングアウトしている点。セクシュアルマイノリティーが教育大臣職に就くというのはそれなりにインパクトがある気がする。
    学閥的にもシルバ・エンリケス大学(チリ有名私立カトリカ大学とは別物)というマイナー大学で、教育畑の、どちらかというと現場系の人材なので、これを新憲法を迎える現政権の教育大臣として冠する事にはそれなりの意味があるのかも。

法務人権大臣 [Justicia y Derechos Humanos]

マルセラ・リオス・トバル(Marcela Ríos Tobar)

法務人権大臣 マルセラ・リオス
  • Twitter @mriost

  • 女性・55歳

  • 所属政党:社会収斂党(CS)

  • 前職:社会学者

  • 職業・専攻分野:社会学、政治学

  • 出身大学:ヨーク大学(カナダ)、ウィスコンシン大学

  • コメント
    自身のキャリアの大半を国連開発計画(UNDP)に奉じ、特にジェンダー問題や格差問題に造詣が深いと定評がある(らしい)。
    あとはよく知らん。

労働社会保障大臣 [Trabajo y Previsión Social]

ジャネッテ・ハラ・ロマン(Jeannette Jara Román)

労働社会保障大臣 ジャネッテ・ハラ
  • Twitter @jeannette_jara

  • 女性・47歳

  • 所属政党:チリ共産党

  • 前職:弁護士、大学教授、国税局監査員など

  • 職業・専攻分野:

  • 出身大学:サンティアゴ大学経営学部、チリ中央大学法学部

  • コメント
    チリ共産党青年部から中央委員会の委員にもなったバリバリの共産党員であり、サンティアゴ大学在学時にはサンティアゴ大学学生会の代表も務めていたバリバリの活動家でもあらせられる。
    バチェレ政権時には当時の社会発展省で社会保障次官に就いており、中央政府系公務は2回目。

公共建設大臣 [Obras Públicas]

フアン・カルロス・ガルシア・ぺレス・デ・アルセ(Juan Carlos García Pérez de Arce)

公共建設大臣 フアン・カルロス・ガルシア
  • Twitter @jcgarciapdea

  • 男性・51歳

  • 所属政党:リベラル党

  • 前職:設計士、大学教授

  • 職業・専攻分野:都市計画

  • 出身大学:カトリカ大学バルパライソ校、フランス国立土木学校

  • コメント
    フランス仕込みの都市計画ノウハウを公共建設に活かすべく任命された大臣。特に地元バルパライソのUNESCO世界遺産登録の際に大いに都市計画の知見が活用されたとの事でチリ国内では評価が高い。
    とはいえ、大規模土木工事やその関連許認可というデカいシノギが集中する、汚職が起こりやすいポジションで、昨今の中国資本による鉄道や道路、港湾工事などそういった汚れ仕事もちゃんと選別して対処できるか、手腕が見もの。
    また政治的にはリベラル党という弱小政党の副代表でもあった。

保健大臣 [Salud]

マリア・ベゴニャ・ジャルサ・サエス(María Begoña Yarza Sáez)

  • Twitter 無し

  • 女性・58歳

  • 所属政党:無し

  • 前職:医師、病院長

  • 職業・専攻分野:外科、公衆衛生

  • 出身大学:ハバナ大学(キューバ)、チリ大学医学部

  • コメント
    クーデター後にアルゼンチンへ逃れ、その後キューバに亡命した家族と共にハバナで幼少から青年期を過ごした医師。ハバナ大学からチリに戻ってチリ大学医学部へ入学し、サンティアゴの名門病院サンタマリア病院など勤務歴やチリ医師会での医師労働問題などにも積極的に関与。
    政治的にはキューバ育ちというのが思想的にどこまで影響してるのか未知数。

住宅・都市計画大臣 [Vivienda y Urbanismo]

カルロス・モンテス・システルナス(Carlos Montes Cisternas)

住宅・都市計画大臣 カルロス・モンテス
  • Twitter @carlosmontestwt

  • 男性・75歳

  • 所属政党:チリ社会党

  • 前職:国会議員、元上院議会議長、元下院議会議長

  • 職業・専攻分野:経済学者

  • 出身大学:カトリカ大学

  • コメント
    下院議員を24年間(1990~2014)、上院議員を8年間(2014~2022)勤め上げた歴戦の古参政治家。社会党以外にキリスト教民主党などにも属していた時期もあり、チリ議会の隅々まで知り尽くしているような経歴。ボリッチ政権内でも最年長の大臣。
    ただ、個人的にはあまり名前聴いてもピンとこないので、さほど立法府では目立った法案とかを主導したって訳じゃなさそう。立法に関わった法案みると、環境関連の法案などが結構多いのも特徴なのかも。
    ただ印象としては閣僚間の調停役的な感じで登用されたんだろうかな。政治家のキャリアとしては、火中の栗拾うような大臣職を志願して請けるメリットもなさそうだし。

農業大臣 [Agricultura]

エステバン・バレンスエラ(Esteban Valenzuela Van Treek)

農業大臣 エステバン・バレンスエラ
  • Twitter @evalenzuelavt

  • 男性・57歳

  • 所属政党:緑の社会地方連盟(FREV)

  • 前職:元ランカグア市長、ジャーナリスト、作家

  • 職業・専攻分野:

  • 出身大学:カトリカ大学 政治学科 ウィスコンシン大学(米)

  • コメント
    学生時代にカトリカ大学学生会(FEUC)副会長で、政治家としては元ランカグア市長経験あり。ただ、農業大臣就任は自身の党の同僚から「資格ないんじゃね?」と物言いがつく程度によくわからん政治家。

鉱業大臣 [Minería]

マルセラ・エルナンド・ぺレス(Marcela Hernando Pérez)

鉱業大臣 マルセラ・エルナンド
  • Twitter @MarcelaHernando

  • 女性・62歳

  • 所属政党:急進党(PR)

  • 前職:下院議員、元アントファガスタ市長

  • 職業・専攻分野:

  • 出身大学:チリ大学、パリ大学(仏)

  • コメント
    チリの基幹産業である鉱山を担当する大臣。専門分野とは思えないんだけど、とりあえず北部出身で、ってことなんすかね。すんません、よく知りません。

運輸通信大臣 [Transporte y Telecomunicaciones]

フアン・カルロス・ムニョス(Juan Carlos Muñoz Abogabir)

  • Twitter なし

  • 男性・51歳

  • 所属政党:なし

  • 前職:サンティアゴ地下鉄

  • 職業・専攻分野:都市交通

  • 出身大学:カトリカ大学社会工学専攻

  • コメント
    土木工学から都市交通をメインにキャリアを積み上げてきたエンジニアさん。サンティアゴの都市バス網Transantiago計画やバルパライソ地下鉄、また「持続可能な都市交通研究所」の所長といった、都市交通以外に持って行きようがない人材。
    イデオロギーや信条などは全然つかめないんだけど、政治活動には環境審議委員会に名を連ねている以外には特に政争に首を突っ込んでいる様子はないので、典型的なテクノクラートという感じ。

国有財産大臣 [Bienes Nacionales]

ハビエラ・トロ・カセレス(Javiera Toro Cáceres)

国有財産大臣 ハビエラ・トロ
  • Twitter @javieratoroc

  • 女性・34歳

  • 所属政党:一般党

  • 前職:弁護士、社会活動家

  • 職業・専攻分野:

  • 出身大学:チリ大学 法学部

  • コメント
    民衆運動が母体の左派政党「一般党」の代表も務め、フェミニズムを中心に積極的にLGBT関連に関わってきた社会活動家。
    どちらかというと実務家向きの大臣職にはちょっとピンとこない人事だけど、色々あるんでしょうね。

エネルギー大臣 [Energía]

クラウディオ・ウエペ・ミノレッティ(Claudio Huepe Minoletti)

エネルギー大臣 クラウディオ・ウエペ
  • Twitter @claudiohuepe

  • 男性・55歳

  • 所属政党:社会収斂党

  • 前職:大学教授(UDP)、政府諮問機関委員

  • 職業・専攻分野:エネルギー・環境政策

  • 出身大学:カトリカ大学、ロンドンカレッジ

  • コメント
    父親も官房長官を務めた家筋で、エコノミストを土台に環境政策、エネルギー政策でマスター取ってるエネルギー・資源政策のエキスパート。エルウィン政権下で鉱業省内の環境問題室長、ディエゴ・ポルタレス大学での持続可能な環境とエネルギー研究所の所長も務めてる。
    こちらも優秀なエネルギー行政のテクノクラート人事で、特に目立った政治的発言もあまり見当たらない。

環境大臣 [Medio Ambiente]

マイサ・ロハス・コラディ(Maisa Rojas Corradi)

環境大臣 マイサ・ロハス
  • Twitter @Maisa_Rojas

  • 女性・49歳

  • 所属政党:なし

  • 前職:環境学者

  • 職業・専攻分野:環境・気候変動など

  • 出身大学:チリ大学物理学部、オックスフォード大学環境物理学部

  • コメント
    チリ大とオックスフォード大学で環境を学び、チリを代表して「気候変動に関する政府間パネル」メンバーを務め、COP25ではコーディネーターとしても活躍、というガチ環境畑の方。

スポーツ大臣 [Deporte]

アレハンドラ・ベナド・ベルガラ(Alexandra Benado Vergara)

  • Twitter なし

  • 女性・45歳

  • 所属政党:なし

  • 前職:

  • 職業・専攻分野:スポーツ教育

  • 出身大学:チリ首都圏教育科学大学

  • コメント
    元チリ女子サッカー代表で、FIFAの女子サッカー評議員にもなっている、スポーツウーマン。と、思いきや、生まれはストックホルムで、まだ彼女が子供の頃(1983年)、左派過激派メンバーだった母親がチリ当局によってサンティアゴ市内で不法に殺されたことを契機にキューバへ引っ越し、90年にチリに戻った後、女子サッカー選手として活躍。
    また、本人はレズビアンであることを公言し、LGBT関連の社会運動にも積極的に主導的立場で関わっており、特に同性婚の合法化を求める運動ではリーダー的な役割を果たした、と。色々と凄い経歴すね。

女性・性平等大臣 [Mujer y la Equidad de Género]

アントニア・オレジャナ・グアレジョ(Antonia Orellana Guarello)

女性・性平等大臣 アントニア・オレジャナ
  • Twitter @totiorellanag

  • 女性・32歳

  • 所属政党:社会収斂党

  • 前職:ジャーナリスト、社会運動家(フェミニズム)

  • 職業・専攻分野:ジャーナリズム

  • 出身大学:チリ大学

  • コメント
    2013年にサンティアゴ大聖堂に約200人の活動家を伴って中絶合法化を叫んでミサをぶり壊した、結構イケイケのフェミニスト。特にこの中絶合法化ではカトリック教会を敵視して、様々なデモや反教会の活動を展開。
    政治信条も全般的にラディカルなリベラルで、特に女性の権利問題に関しては過激な言動で知られてる。
    女性・性平等大臣という職は活動の場としてはいいんだろうけど、穏便に対話を重ねて同意を募っていくような手法が取れるのかどうか。

文化芸術大臣 [Culturas, las Artes y el Patrimonio]

フリエタ・ブロヅキ・エルナンデス(Julieta Brodsky Hernández)
Twitter @jubrodsky
女性・38歳
所属政党:社会収斂党
前職:
職業・専攻分野:人類学、都市人類学
出身大学:グラナダ大学(スペイン)
コメント:
よく知らない。

科学技術イノベーション大臣 [Ciencia, Tecnología, Conocimiento e Innovación]

フラビオ・サラサル・オンフライ(Flavio Salazar Onfray)

科学技術大臣 フラビオ・サラサル
  • Twitter @DrFSalazar

  • 男性・56歳

  • 所属政党:チリ共産党

  • 前職:チリ大教授

  • 職業・専攻分野:免疫学

  • 出身大学:ウプサラ大学、スイス・カロリンスカ研究所、チリ大学

  • コメント
    欧州最先端の免疫学を学んだ学者なんだけど、チリ共産党の党員で、2020年から党中央委員会の委員にもなっている共産党員。
    癌に関わる免疫学が専門のようなので、政治よりもアカデミアの方で名前が良く上がってるみたいだけど、よく知らんので、割愛。

まとめ。

つかれた。


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