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歩いて楽しいのが美術館

 美術館に行く前に注目するのは、やはりそのとき企画されている展示内容なのだが、行ってしまえばそうでもないのがわたしの場合だ。
 それというのも美術館周辺は、とても歩くのが楽しいつくりになっている。建物の外観すらも見るものを楽しませる所もあるし、街の中や駅前などにある小さめの美術館でも建物内に引かれた展示の導線で歩くのが楽しい工夫がされている。アミューズメント施設の大型迷路に入ったときのように、ちょっぴりの非日常感と落ち着いた静かな時間が同居する空間を散歩するのは、それほど敷居の高いことではないことを知ってほしい。
 どうしても美術館というと、壁に飾られた絵の前に順に並び、自分の前後にいる皆のように腕組みでもしながら真剣に作品に集中または集中しているふりを続けなければいけない、もしかしたらそんなふうに思ってしまう人もいるかもしれない。たとえば入場制限のあるような大人気企画展なら、右に倣えで歩幅を合わせる必要もある。でも、それだけが美術鑑賞の全てではない、しかも私と同じように美術に詳しくは無いけど「美術館に行くのが好き」という人種からすると、そんな窮屈な時間を過ごすために来たのではないと、その日の印象は薄くなってしまうのだ。
 
 だからこその楽しみ方。「美術館を歩く」を提案したい。
 まず、身軽で行って欲しい。公園に散歩に行く時のような両手の空いた格好がわたしは好きだ。時間も、あまり気にしないでほしい。退屈ならさっさと帰ってもいいのだ。
 ここが重要なところなのだが、順路を極端に外れて逆走するのはマナー違反だと思う。しかし、目の前の作品が自分にとってピンとこない(綺麗ともかっこいいとも凄いとも思わない)なら、それをじっくり見る必要はない。スーッと他の人の邪魔にならないように次の作品に映ればいいのだ。視野を広くして部屋を見渡しながら歩けば、自ずと気になるものがあるだろう。それが有名な作品かもしれないし、どこかの学生の作品かもしれない。あるいは、その部屋の高い天井や階段の照明が気に入るかもしれない。もしかしたら作品よりも、見やすく目線を誘導してくれる企画展を計画した裏方の仕事に感動する敏感な人もいるかもしれない。それでいいのだ。わたしたちは、ただ新鮮な驚きを感じた日を記憶すればいいだけなのだ。
 
 これから夏に向かう。
 美術館は建物内の空調も整っているし、カフェを併設しているところが多い。休憩がてらに訪れてみてはどうだろうか。
 お試しあれ。

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