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ポエム・エッセイ

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ポエムのまとめです。わたしの頭の中は、こんな感じです。
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空模様

空が包んでいるのか、空と一緒に浮かんでいるのか分からないけど、勝手に僕らはその中にいる。 そして、好きなうたを歌って、美味しいものを食べて、誰かを好きになった。 その日の空はとびきり良くて、自分とセットで一日が造られる気さえするんだ。 でも空はいつでも、誰かにとってはとびきり良くて、もっとも悪くて。 勝手に僕らはその中にいる。 雲が動いて、僕らが動いて。 誰かの空を、今は見てる。

真似してないと心細いの

青空に雨雲を引き延ばしたからこんな色になったんだ 本当は両方欲しいのに どっちか選んだから今日があって 昨日が同じ色をしていないといけない気がしていた 外に出て見れば分かることを 窓を開けて覗いてみたり 大好きなオレンジの匂いの化粧品で 良い気分を感じてみたりする でも今日は大好きなキミの真似をする ドアの隙間を通り抜ける真似をする 身をよじって 耳を擦って 起き抜けでもいい 外に出てから顔を洗う 傘? いらないよね 午後14時03分 わたしは猫

木の葉の音がしない。

 ギューギュー屋根を鳴らす強風が、目覚ましのアラームと一緒に朝を教えてくる。  あっという間に一週間が過ぎるくせに、カーテンを開けて雨が振っているのを見ると時間が少し止まる。  準備はいつも通り。  顔を洗って、適当になにかつまんで、ハミガキして、うんちして。スマホと財布とキーと、あまりワクワクしない気持ちを突っ込んで部屋を出る。  ラジオパーソナリティーがピックアップする曲が、地面を鳴らすのを楽しめと聞こえるのは、金曜まで我慢したから。  強風がボクの軽自動車を吹き飛ばすく

進化の先に〔詩〕

形が崩れてもいいものを創り出した 教室のドアを開けると交わされるのは 崩れた おはよう 聞き取れなくても 何となくでも 文字で書いたら何語かわからなくても 気持ちがわかるような音がする 終わることが不思議で 永遠が当たり前のこと 明日 朝が来る予定をたてた 世界が変わって  夜になれば  不安になるような朧げな月 オハヨウが聞き取れないと 命の終わりをカウントできない 指折り数える さよなら こんなことなら 人間になんてなるんじゃなかった もしも 願いが叶うなら 動物

ひとつの嘘

キミがついた嘘が できるだけ最後のほうにあるように そうだとしたら ボクが悪いことにしやすいから いまさっきの泣き顔だけなら 雪が降るから冬なんだと 信じるくらいに簡単で 今日で最後の夜に なんてしたくないし 景色が見えなくなる準備が できてないから でも 例えばなんだけど キミの嘘が もうすこし前で 「友達と出掛けてくる」って楽しそうにしていたのが  もしも そうだったのなら それは それでもいいから それならば それならば この手の温度は 本当だってことだから あま

夜の下

2日続いての雨でちょっと寒い。 朝から珈琲のことを考えているのは、めずらしいことだ。 平日の僕。 昨日は、久しぶりに夜に出かけたから癖になったように思い出す。 夜。 燃料の減ったままの車の排ガスの匂いは、冷たい夜空に久しぶりに再開したことを実感させたし、抜け出して夜にでるのが大好きだったのは、この開放的な夜空の高さのせいだったと思う。 夜は本物。 昼間なんか紛い物で、あるはずのモノを眩しさで隠した世界。 夜は静かにする。 太陽の下には平気で出る。だけど、夜はこっそり抜け出

言い訳する相手にバイバイ

 煙草を辞めたからベンチに座らなくなったけど、十年前にキミの隣が空いたから、また座る理由ができた。  「ねえ、わたし思うんだけどさ」そんな前置きをしてから、いつだったか君が言っていた。バイバイを言うのは、また会いたいと思ってくれている人で、そういう人ほど「死んでくるわ」みたいなことを笑った顔で言いながらそこに向かって行くから、怖いと。  そのときのボクは分かったような顔をして、分からないのを隠していた。  今日、キミは知らない街へ行く。  ボクは煙草に火を点けた。ベンチに

泣くのは、だいたい後回し

涙袋を指でなぞるように押す ゆっくり でも ある程度しっかりと目元から目尻の方まで押してやる 素人ながらにスッキリする そんなことをしたって 夜になれば眠たくなるのだけれど 涙を巻き戻してやることで なんとか 昼間にやらないといけないことをひとつでも多くやりたいんだ 野菜を切ってみたり 布を洗ったりしているうちに 季節は廻ってゆくのだけれど そんな間にも 涙を巻き戻してばかりいるもんだから 最近はいつ泣いたか思い出せない 多分 動物図鑑のぼくらのページには

リフレッシュ

明日のことを書く すこし前向きになる様に 一日分のたのしいをしないで明日が終わらないように 今日 想像する明日はまだ 何にもならないかもしれないけど とりあえず 前を向いてる だって明日のことなんだから クタクタになった今日を コインランドリーに コインを入れて まわってる もうすぐ綺麗になって戻ってくるから 今日を乾かせば 明日になる 濡れたままは気持ち悪いから 明日を想像しよう 大丈夫 雨降りだって 乾燥機に入れちゃおう 乾かせば 明日になるんだか

献血できなかった日

 29日に5度目の献血に行った。  スマホに入れてある献血アプリから時間を選んで予約するだけ、簡単だ。あとは献血予約日当日に、注意事項をチェックして予約したセンターに向かう。献血は車で行くのだが、周辺に大型ショッピング施設があるのと献血すると結構余裕をもった時間分の駐車無料チケットがもらえるので、その後のブラブラ買い物時間に気がいく。メガネケースがほしい。    献血センターに到着すると、体重を計測して受付をする。ポイント(献血するとポイントが貯まります)がある程度貯まってい

ポトフは野菜を焼いてから作る

 フライパンに少量の油を垂らし、玉ねぎ、にんじん、ウィンナーを焼く。水を入れて煮る前にこれをするだけで、ボクの好きなポトフになる。一人暮らしだと、どうしても同じメニューを食べきるまで連続することが多いから、飽きない汁ものが好きだ。シチューやカレーは、最初の1杯の食べたさに騙されて多めに作ると後悔する。冷凍すればいいのだろうが、そんなに丁寧な生活はできそうにない。確実に面倒臭いが勝ってしまう。だから、ポトフを作ることが多い。  ポトフが好きな理由は他にもあって、まず、わたしは幸

帆のない船

水に浮かぶ舟 すこし水の交じった空の下で 誰かに会うために動き出して 泳ぐ 雨が降ると息苦しいから すこし水の交じった空を見て 何も無い空に見惚れて 泳ぐ 雨からぽっかり顔を出す 真っ暗な宇宙には星が集まってる だから一番息苦しい 息苦しい理由が分かったから 船に戻って 一眠りする 地球が水を引っ張るから たぶん あなたと会った 地球が水を引っ張るから 涙がこぼれ落ちた 水が無いと息ができない わたしが泳ぐ あなたが わたしを引っ張るから

枯れ木

涙が枯れない 何度泣けばいいの 涙のグスが住んでいる部屋 そのドアの前に立ってノックする 昔はよく出てきてくれたのに それは大人になったから それは楽になったから それはキライになったから それは悲しくないから それは苦しくないから それは弱くないから よく似た顔のクスとスス 二人はたまに顔を見せている 映画を見たり 本を読んだり 誰かの悲しい話を聞いたりすると 二人は現れる 似ているけれど グスじゃない 友人が亡くなったとき 久しぶりにグスと会った でもまた それ

羨むことは卑しい時だけじゃない

 いつもの通勤途中に小学校がある。この辺はわたしが育った地域では無いので、詳しいことは分からない。ただ、綺麗で大きな学校。わたしが知っているのは、通学用のバスが出入りしていることくらいだ。それでも、大人になってみると昔は大きく感じたものが小さく見えるものなのに、その感覚からしても“大きな学校”と感じるということは、実際に大きいのだろう。  その学校の校門の前には毎朝、男性が立っている。そして彼は、学校の前を通過する車にお辞儀をしている。にこやかでキチッとした服装だが、威圧感の