輸出・輸入における銀行の使い方4選
おはようございます。現役信金マン 兼 中小企業診断士の山西です。
事業をする上で輸入・輸出は欠かせない状況になりつつあります。
直接自身で輸入しなくとも、海外から輸入したものを使うことは珍しくありませんし、人口減少により日本国内の市場が縮小する中、輸出で売上を確保するのも自然な流れです。
しかし、輸出入にはリスクが付きものです。
そこで今回は、輸出入のリスクを軽減させるために銀行を活用する方法4選をお伝えします。
①安心安全な取引のために銀行を利用する
輸出を行う場合、商品は送ったけれど、お金が届かない、なんてことが起こる可能性があります。
また輸入の際には、お金を支払ったけれど商品が届かないパターンも想定されます。
こういったトラブルは国内取引でも起こり得ることですが、国際取引になるとさらに難しい問題になります。言葉の壁や制度の違いがあるためです。
どうすれば、こういったトラブルのリスクを減らせるでしょうか?
銀行の使い方(1)信用状の発行
銀行が信用状を発行することで、安全に取引できるようになります。
信用状とは、銀行が輸出入に係る支払いを約束するために発行する書類のことです。英語で「Letter of Credit」となるので、よく「L/C」(エルシー)と呼ばれます。
例えば、後払いで輸出する際には、商品を送ったものの代金を受け取れないリスク(信用リスク)がありますし、先払いで輸入する際には、お金を支払ったものの商品を受け取れないリスク(貨物入手リスク)がありますが、信用状を利用して銀行が間に入ることで、このようなトラブルが起こるリスクを減らしてくれます。
こういった方法は、第三者寄託を意味するエスクローという仲介サービスの一種です。第三者(信用状の場合は銀行)が間に入ることで、安全に取引が出来るようになります。日本では、メルカリを行っているようなサービスです。
なお、信用状の発行には手数料がかかりますので、各銀行のHP等で確認されると良いでしょう。例えば、福岡銀行であれば、発行手数料が「信用状金額×0.3%(最低金額7,000円)」※手数料計算期間:92日ごと、電信料が7,000円かかるようです。
②為替リスクヘッジ
輸出入には為替リスクが付きものです。円安が進行すれば日本円で海外のものを購入する負担が増えますし、円高が進行すれば、日本のものを海外に売りづらくなるリスクがあります。この為替リスクも、銀行を利用することで軽減することができます。
銀行の使い方(2)為替予約
真っ先に思いつくのが為替予約でしょう。
「為替予約」とは、将来の特定の日付において、あらかじめ決定した為替レートで外貨を売買するための契約を指します。これは通貨の変動リスクを管理し、予算計画を安定させるのに役立ちます。
例えば、日本の中小企業が米国からの輸入を計画しており、3か月後に10万ドルの支払いが予定されているとします。現在の為替レートが1ドル=110円の場合、その支払いは1,100万円になります(現時点)。
しかし、3か月後に1ドル=120円となった場合、支払いは1,200万円になり、コストが100万円増えてしまいます。
このリスクを避けるために、企業は「為替予約」を利用して、現在のレートである1ドル=110円を固定することができます。これにより、3か月後の支払いは確実に1,100万円となり、為替変動による損失を防ぐことができます。
この方法は為替変動が大きい時期に財務の安定性を高める手段となります。一般的に手数料がかかりますが、潜在リスクを減らすことが出来ます。
銀行の使い方(3)通貨オプション
通貨オプションを利用する方法もあります。
「通貨オプション」とは、将来の特定の日に、事前に決められた価格(行使価格)で通貨を売買する権利を持つ金融商品です。このオプションを使えば、通貨価格の変動リスクを軽減しながらも、有利な市場の動きに対応する柔軟性を保持できます。
例えば、ある日本の中小企業が、6ヶ月後にアメリカから機械を輸入する予定で、支払い額が100,000ドルだとします。現在の為替レートが1ドル=110円の場合、この企業は為替レートが上昇するリスクを避けるために、1ドル=115円の行使価格でドルの購入オプションを購入します。オプションの費用(プレミアム)は支払いますが、これにより、レートが上昇した場合でも115円でドルを確保できます。
これだけ聞くと、為替予約と同じようなものに見えます。しかし、為替レートが不利に変動した場合でも、行使価格で通貨を交換することが可能な「リスク管理」の点、市場のレートがオプションの行使価格より有利な場合は、オプションを行使せずに市場価格で取引することができる「取引の柔軟性」の点で為替予約と異なります
その一方で、オプションの購入にはプレミアムが必要だというデメリットもあります。このコストは、取引を行わない場合でも支払わなければなりません。
銀行の使い方(4)オープンインパクトローン
インパクトローンとは、資金使途の制限の無い外貨建ての融資のことです。
インパクトローンには、為替予約付きのもの(スワップ付インパクトローン)と為替予約無しのもの(オープンインパクトローン)がありますが、為替リスクのヘッジとなるのは、オープンインパクトローンです。
オープンインパクトローンを利用する主なメリットは、融資を受ける通貨と事業で使用する通貨が同一であるため、為替変動の直接的な影響を受けにくくなることです。
仮に、あなたの会社がアメリカ市場に製品を輸出しているとします。この場合、売上はドルで発生します。もし日本円で融資を受けると、ドル売上を円に換える際に為替レートが変動していると、得られる円の額が予想より少なくなるリスクがあります。これにより、融資の返済負担が重くなる可能性があります。
しかし、ドル建てでオープンインパクトローンを受けると、このリスクが大幅に減少します。融資も売上もドルで行われるため、売上から直接融資の返済が可能であり、為替レートの変動による返済額の不確実性が解消されます。
このように、オープンインパクトローンは、融資を受ける通貨と事業で使用する通貨が同一であるため、為替変動の直接的な影響を受けにくくなることです。
そして、資金使途の定めがある外貨建ての融資であるタイドローン等と異なり、特定のプロジェクトに限定されずに、より広範囲なビジネスチャンスに対応可能です。
銀行の力を利用して、様々なリスクを排した事業展開を行っていきましょう。
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