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『フラ・フラダンス』が描く【お仕事モノ】×【被災地復興】×【青春アイドルアニメ】

【Amazon Prime Videoでまもなく配信開始のアニメ作品をレビューするシリーズ 2023年1月編 その4】

新入社員・夏凪日羽が飛び込んだのは、プロアスリート式の生活。南国のスローでのんびりしたイメージとはかけ離れた世界だった。

アニメ映画『フラ・フラダンス』(総監督:水島精二、監督:綿田慎也)は、「スパリゾートハワイアンズ」に就職した日羽(CV:福原遥)の物語だ。

フラダンスといえば、2006年の実写映画『フラガール』を思い浮かべるだろう。昭和40年にハワイアンズの前身・常磐ハワイアンセンターが誕生したいきさつを描く作品だ。一方、『フラ・フラダンス』の舞台は現代のハワイアンズで、作中世界でも「フラガール」のブランドは既に確固たるものとなっている。

しかし、フラダンス業界のシステムは世間であまり知られていない。プロのフラダンサーを目指す全国の若者が、ハワイアンズを経営する常磐興産株式会社の入社試験を受ける。それをパスすると、入社と同時に養成機関・常磐音楽舞踊学院へ入学する。『フラ・フラダンス』は、そんなフラダンサーの舞台裏を描く「お仕事モノ」作品だ。

「いいなぁ、踊ってお給料もらえるなんて」
専門学校に通う友人にうらやましがられても、日羽は曖昧に笑うしかない。舞踊学院で「査定」を受けたばかりだったからだ。半年に一度、講師の前でフラとタヒチアンダンスをひとりずつ踊り、その成績と普段のステージでのパフォーマンスで順位がつけられる。日羽に渡された査定評価表には「40人中40位」という残酷な結果が……。

また、日羽の同期5人の間ではシビアな会話が交わされている。
「夜は炭水化物とらないことにしてるの」
「スタイルを維持するのも、体調維持するのも仕事でしょ?」

新社会人の日羽を待ち受けていたのは想像以上に厳しい世界だった。映画の中盤では、打ちのめされていた彼女にこんな言葉がかけられる。

「乗り越えられるよ。ここはあの時、誰もが乗り越えたんだ」

「ここ」はハワイアンズ、「あの時」というのは東日本大震災のことだ。本作は、震災から10年となる2021年に、被災3県を舞台とするアニメ作品をフジテレビが発表する企画「ずっとおうえん。プロジェクト 2011+10…」の一環として制作された。

『フラ・フラダンス』は「お仕事モノ」であると同時に震災からの復興をテーマとしている。さらには青春アイドルアニメのようなテイストで、個性豊かな同期5人の成長も描く。内容てんこ盛りの作品だった(『劇場版 ヴァイオレット・エバーガーデン』『聲の形』を手がけた名脚本家・吉田玲子によって見事にまとめ上げられている)。

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