『OSO18 "怪物ヒグマ"最期の謎』 NHK

『OSO18”怪物ヒグマ”最期の謎』
NHK 2023年

NHKスペシャルより

やりきれない。

生きるために人の放置した獣の肉を食べ、味覚が書き換えられ、草や木の実を食べなくなり、やがてクマとしての生き方を忘れる。
「クマとして」。それが何であるか、人間が定義づけてよいものではない。かけちがったボタンはとまっても、必ずとまらないボタンがある。そう、歯車は時間をかけて狂う。

人があるがままの自然として憧憬と畏怖を抱き、思いを馳せるあの雄大な大地に、そういう生の歪んだ生き物がいることが哀しかった。それに終わりのないことが哀しかった。
人の作った地名と単位から作られた名など持たずに生きる道がきっとあったのに。歪めた手と同じ血の通う頭で恐れる人間の行いを、1匹のクマよ、あなたはどう見る。私はどう見る。貴方はどう見る。
人間の行いの結果に不幸な最期を遂げたクマ。それだけか。
不幸なクマ、かわいそうなクマ。
人に許された言葉であるか。

北海道。
屯田兵によるあまりにも不毛な開拓もまた、この地を物語る。

都会から訪れた私たちの目には自然そのままに見える風景でも、血を吐くような開墾の歴史や生の歪んだ生物たちを孕むと思うとやりきれない。

だが、こんな感傷を持つのもそのときだけで。
帰ればまた雄大な自然の写真を見て、綺麗だったと言うのだろう。憧れを込めるのだろう。また忘れていくのだろう。

私たちが行うべきは何であろうか。