名CM考 第十一回 1991年 第一生命 「PERFORMANCE 1991」

まずびっくりする事実を伝えます。商品を一切宣伝してないんです。


そしてこのCM自体が宴の終わりの象徴でもありバブルの終わりの象徴ともなったCMです。

こっちのCMの方が重要なんですが。そう「人は1人で生きていくことはできない」という説教じゃなくて「人は1人で生きるなんてつまらない」と言ってるのです。それが大人の本当の在り方ですよね。



1991年版はなんと3つCMあるんです

いやあ、こっちが恥ずかしくなるくらいのCMですね!

なおクレジットは「想う気持ちは、 言葉をこえて」とあるのにナレーションは「想う気持ちは……」です。なかなか粋でしょ?

この「Oh! Yeah!」は両A面曲でもうひとつの曲はかの有名な「ラブ・ストーリーは突然に」で両曲とも1991年の代表曲です。でも「Oh! Yeah!」はなぜか忘れ去られてしまった名曲なんですね。なので私がこうしてこんな名曲があったよと宣伝までします。

このように第一生命に限りませんがつい30年ほどまで生命保険というのは商品なんて宣伝してないんです。むしろ社会貢献とか文化活動支援とかそういうことを宣伝してたんです。

ええ!?嘘?本当!?

それがこの証拠の動画でね。

本来の生命保険というのは現役世帯主に死んでは困るから、仮にそうなった場合でも遺族が安心して暮らせるようにかけるという保険であって、いつまでも生に執着するための道具じゃないし、一生涯という言葉の通り「死に際」に自分はいい人生だったと振り返られるようにするための金融商品なんですね。満期が来たらそれで終わりなんです。だって、そのための公的年金だし。

ところで1991年版第一生命CMのように恋愛のCMって最近見ました?

見ませんよね。それが現実です。CM1つこうやって切り取っただけで日本社会の劣化が分かります。先に言いますが外国は恋愛シーンのCMなんて当たり前にありますからね。日本だってつい30年前はそうだったのです。

日本はいつしか人を愛することを出来なくなってしまったと言っても過言ではありません。くどいほどいいますが男はATMじゃないです。またバブル期は生涯未婚率が2%だったのがなんと2020年は男性25%つまり4人1人は一生涯結婚したこともなく、さらに結婚した人の約35%が離婚です。ということは約半分は結婚できないか結婚生活を破綻してます。

そういう時代にこういう生保のCMが流せるか。流せませんよね。

家族は社会の最小単位です。その最小単位すら成り立っておりません。

1991年版のパート2をもう一回見てください。

ひとりきりでも生きられるのなら 音楽なんてきっといらない

なんでそう言ったと思います? 一人だと孤独死のリスクが倍増どころでは済まないからです。保険会社にとってもそれは大損だし、社会にとってもそれは損失だからです。だから恋愛して結婚して幸せになってくださいという当たり前のこと言ってるのです。しかしこの国は音楽をも殺しましたよね。そこらじゅう握手券アイドルばかりですし。

そして、日本は30年後に孤独死大国という不祥事になるわけですね。

だからこのCMって今こそ必要ですし、単なる名CMじゃないんですね。

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