【ロジハラ】相手が反論できないからってあなたの主張が正しい訳ではない【レスバ】

ロジハラというのは変な言葉だと思ってました。「ロジック(論理)がおかしいのを指摘する」のは「ハラスメント(嫌がらせ)」では無いだろう、と。
でも考えてみるとロジックで嫌がらせは確かにできるんです。いきなり話が飛びますがヘンペルのカラスという「パラドックス」があります。

「(ほぼ)すべてのカラスは黒い」と主張したい時、普通なら「このカラスは黒い、あのカラスも黒い、見かけるカラスはどれも黒いものばかりだ」ということから「すべてのカラスは黒い」という主張の確かさはどんどん上がってきます。
しかしここで逆方向(対偶)からの「証明」も考えられます。つまり、部屋に居ながらにして「この黒くないもの(例えば鉛筆)はカラスでない、あの黒くないもの(例えば紙)はカラスではない、見かける黒くないものはどれもカラスではないものばかりだ」ということから「黒くないものはカラスでない(つまりカラスは黒い)」という主張の確かさがどんどん上がっていくことになります。
直感的にはこれはおかしいです。しかし論理学的にはこの二つの証明方法は同じになります。

さて元のロジハラの話題に戻りましょう。上記の「論理的」に正しいはずのヘンペルのカラスの話にあなたはとっさに反論できるでしょうか?

実際にはヘンペルのカラスについては次のような論理的反論が可能です。カラスのは確かに多いですが、世界全体でも数十億以下でしょう。しかし「黒くないもの」の数はその比ではありません。部屋を見渡すだけで数百個ぐらいあってもおかしくないし、「人間は数十兆個の細胞からできている」とか言い出したら一人の人間だけで世界中のカラスよりはるかに多くの「黒くないもの」が存在することになります。つまり、カラスの総数が例えば10億羽なら10羽調べるだけで「カラス全体の一億分の一」を調べたことになりますが、「黒くないもの」を10個調べてもそれは世界に存在する「黒くないもの」のうち一兆分の一も調べられてないことになります。これでは「こんなに沢山のカラスを調べた」と「こんなに沢山の黒くないものを調べた」を同列に語ることはできません。

要するに、直感的に間違ってる気がしても実際間違った主張だったとしても、反論するのが難しいものは沢山ある訳です。

あなたが「論理的」に正しいことを言ってるつもりだとしても、相手が反論できなくても、あるいは逆にあなたが他人に何か言われて「間違ってると思うけど反論の言葉が浮かばない」と思ってもそれが正しい保証にはならないのです。
もちろん、「論理的に反論できないけど直感的に間違ってる気がするから相手は間違ってるに違いない」と考えたりするのは危険です。ただ一呼吸おいたり誰かと相談したりしてから判断しても遅くはありません。

具体例

実際、世の中で「正論」と言われてるものは別に論理的に正しい訳でないことも多いです。「ロジハラの具体例は何かな?」と検索したらこんなのが出てきました。

さて、これって論理的に正しいでしょうか? これを紹介してたページでは「資格がなければ保育士になれません」とか書いてありますがそういう問題では無いでしょう。何をするかわからない幼児(+親)の対応をしなければいけないんですから。

それに保育園落ちた日本死ね!!! - Wikipediaからもわかるように保育士は人手不足です。資本主義の市場原理からすれば需要が多いものは給料が上がるはずですが、保育所は公立の場合も多いし、そもそも保育士でなくても現在は「社会的に重要な仕事ほど給料が低い」という現象が起きています。

「難しい仕事ほど給料が高いはず」というのは一般常識からすると正しく思えますが、別に統計的論理的に正しいと証明されてなんていません。「誰でもできる仕事だから給料が安いんだろ」というのは正論のようで実際には「それってあなたの感想ですよね⸮ 何かエビデンスあるんですか⸮」という話なのです。世の中で「正論を言っただけなのに反論できないからって腹を立てるとは」と言われてるものは実際にはこういう類かもしれない訳です。

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