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すばらしき★映画パンフの世界 ④シャンテ シネの映画パンフ


こんにちは。銀座ライオンで生ビール(大ジョッキ)が飲みたくてたまらない平田です。

今回は、「シャンテ シネ」の映画パンフをご紹介したいと思います。「シャンテ シネ」というのは、東宝が経営する日比谷の単館系(ミニシアター系)の映画館です。古書店の映画パンフコーナーでは必ず見かけますね。よく見かけるのが大ヒットした『ベルリン・天使の詩』『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』あたりでしょうか。

ぼくは高校時代にジム・ジャームッシュ監督の『デッドマン』をリアルタイムでシャンテ シネで見て、パンフを購入した思い出があります。中学・高校時代は今以上に孤独な映画オタクでしたから、ひとりで見に行きました(泣)。

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前回までご紹介したパンフは、サイズが特殊なものばかりでしたが、「シャンテ シネ」のパンフはシンプル質実剛健であります。シンプルではありますが、内容はとても充実しており、ずっと手元に置いておきたいパンフです。

ネットで映画の情報はなんでも検索できる時代になりましたが、ネットにアップされていない情報がぎっしりと詰まっており資料的価値がとても高いのです。

シャンテ シネのパンフは、B5サイズで表紙のデザインは固定、本文はモノクロ刷りがベースで、数ページだけカラーのページが挿入されます。コストを抑えているためか、基本価格が600円とリーズナブルです。

主な構成要素は下記になります。

1:イントロダクション(解説)

2:ストーリー

3:監督インタビュー

4:キャスト&スタッフ情報

5:映画評論家、著名人による密度の濃い映画評

6:各国の映画評

7:映画祭での受賞一覧

8:シナリオ採録

EX:その映画をより深く知るための歴史的背景

テオ・アンゲロプロス監督の名作『ユリシーズの瞳』を例に構成要素を見ていきたいと思います。

まずは表紙。ハーベイ・カイテル様の横顔が渋い

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目次です。

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歴史的背景を読み解くためのバルカン紛争とバルカン半島マップ。

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キャストの紹介。ハーヴェイ・カイテル氏の紹介では、フランス版ポスターをさりげなくあしらって、『ユリシーズの瞳』の原題から英語題〜日本語公開題名までの経緯を解説しています。

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共同脚本のトニーノ・グエッラの紹介。単なるプロフィールに留まらないで、アンゲロプロス監督との関係性が分かるエピソードを散りばめています。

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写真家・繰上和美氏による映画評。本文と呼応させるように、美しいスチールが配置されています。

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黒沢清監督による映画評。1シーン1カットの長回し撮影を「串団子のような映画」と表現。アンゲロプロス監督を敬愛して止まない黒沢監督の着眼点がユニークです。

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見開きがスチールのページ。舟を漕ぐカイテル氏。曇天の下、エメラルドグリーンの水面が美しいショットです。

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フランスの映画評。フィガロ紙は「アンゲロプロスは、世界の不条理さに直面しながら、希望の光と言わぬまでも、あるやさしさを救い出そうとしている」と評してます。

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奥付のクレジットのページ。当時はフィルムでの上映でしたので、「全9巻、4,835M、2時間57分」の表記があります。こういった細かい情報までが網羅されているのです。

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シナリオ採録ページ。日本語字幕はアンゲロプロス作品の全字幕を担当された池澤夏樹氏です。

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駆け足でご紹介しましたが、ざっとご覧いただいただけでも、「シャンテ シネ」の映画パンフの密度の濃さ情報量の多さ資料的価値の高さがお分かりいただけたかと思います。

80年代から90年代にかけて、「シャンテ シネ」の映画は「フランス映画社」という配給会社が配給していました。フランス映画社に関してはここで書き切れない沢山の思い出がありまして、涙が出そうになりますので、また別の機会に書きたいと思います。

配給した作品のどれもが傑作でまばゆいばかりです。ぼくが所有しているパンフをご紹介しながら、どれだけ傑作が多いかをご覧いただきたいと思います。

たとえば、ホウ・シャオシェン監督の一連の作品。『恋恋風塵』!『悲情城市』!『冬冬の夏休み』!

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ビクトル・エリセ監督の永遠の傑作。『ミツバチのささやき』『エル・スール』『マルメロの陽光』。アナ・トレントの無垢な瞳。。。

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冒頭でご紹介しました「デッドマン」のジム・ジャームッシュ監督作品。

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テオ・アンゲロプロス監督の作品群。圧巻です!

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所有しているパンフを並べて見ました。

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表紙から傑作のエネルギーがほとばしっております!

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いかがでしたか?

昨今、「終活」「断捨離」「ミニマリズム」・・・と、モノを処分していく風潮にありますが、今回挙げたシャンテ シネのパンフは、ぼくには捨てることの出来ないものばかりです。きっと永遠にミニマリストにはなれないでしょう。

次回も熱いパンフをご紹介したいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします!

平田陽亮

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