episode:2 たった1億円じゃダメですか
Lakeside Storiesの横塚です。
中禅寺湖2024シーズン解禁まであと50日を切りました!
今年は様々な変化があるシーズンになりそうです。
ところで、中禅寺湖アングラーのみなさんは、1日の釣行でいくらお金を使っていますか?
釣り券代をはじめ、地域のお店での飲食や貸船の利用などなど。
今回は、釣りによる経済効果の視点から、地域と釣り人の関係性について考えてみます。
1 経済効果から漁協を応援したい
2012年、中禅寺湖は原発事故の影響で「禁漁」か「キャッチ&リリース(C&R)」の2択を迫られ、C&Rで解禁することになったワケですが
“釣り人を呼び込む”漁協の活動は、地域のためにもなっているはずなんだけど、行政や地域から評価されることはあまりない。
この地域にとって、漁協も釣り人もなくてもならない存在であることを示したくて、釣りによる経済効果を調べることにしました。
2018年に、栃木県水産試験場の数名で、湖畔を歩き回って、釣り人にアンケートに協力してもらい、1回の釣行で、どこで、何に、いくら使ったか調べました。
インセンティブもないのに、1シーズンで延べ794人もの釣り人がアンケートに回答してくれました。
これぞ中禅寺湖アングラー!とても感謝しています。
(調査に承諾してくれた漁協にも大変感謝しています)
2 釣り人1人1日あたりの消費額
釣り人1人1日あたりの消費額をまとめるとこんな感じ↓
みなさん、遊漁券を買う以外にも、きちんと地域にお金を落としています。
それにしても、船釣りの消費額はすごいですね!
宿泊費を見ると、岸釣りより船釣りの方が、2倍くらい宿に泊まっている傾向がありそう。
飲食代とその他(主にガソリン代)は、釣り方に関わらず一定というところも面白いですね。
3 年間1億円を生み出す釣り人たち
シーズン中、全ての釣り人が使ったお金の総額(経済効果)はこんな感じ↓
※ここでは、お金の総額を経済効果と呼ぶことにします。
中禅寺湖の釣りによる経済効果は、栃木県内で1億4千万円、奥日光で8,900万円!
すごくないですか?
岸釣りの強みは人数(リピート率の高さ)
船釣りの強みは単価
といったところでしょうか。
昔、ヒメマスが釣れていて、船釣りが多かった頃は、もっと大きな額が動いていたことが伺えますね!
4 地域にとって釣り人とは
漁協と釣り人は地方創生に欠かせない存在
“漁協は全国から2万人を呼び込む優秀な組織”
“釣り人は地域を消費で支える大切な存在”
であることを示したくて、始めた経済効果調査。
約400人の住民が暮らす中宮祠地区に
毎年2万人の釣り人が訪れ
約1億円のお金を使う
みなさんの感覚では、いかがですか?
すごいことですか?
大したことないですか?
ぼくは、実感として「まだまだこんなもんじゃない。もっと増やせる!」と思いましたし、地方創生を実現する上で、行政や地域にとっても無視できない数字だろうと思っていました。
たかが1億
観光分野に目を向けてみると、奥日光の観光客数は少なくとも年間延べ50万人、釣り人の25倍です。
湖周辺での消費額は調べられていないので分かりませんが、相当な規模でしょう。
ここで話が少し飛びますが
令和6年4月から湖畔の県営駐車場が有料化されることになりました。
理由は「釣り人によって駐車場が満車になり、観光客が停められないからなんとかしてくれ」という声が、数年前に地域の一部の人たちから上がったからです。
栃木県が誇る観光名所“中禅寺湖”で、観光客が駐車できない事態となれば、当然行政は動きます。
その解決手段が“県営駐車場の有料化”。
これまで国立公園の駐車場が無料だった方がおかしいくらいなので、釣り人としても納得できます。
さて、本題はここから。
駐車場のシステムに大きな問題がありました。
朝4時に日付が切り替わる料金体系。
中禅寺湖釣りのルールは、朝3時に釣り券販売が開始になり、駐車して、ポイントに移動し、4時に釣り開始。
駐車時間が4時を跨いでしまうため、2日分の駐車料金を支払うことになります。
朝4時前に駐車が必要なレジャーは、他にはそうはありません。
釣り人だけ2日分の料金を取られる仕組み。
いやぁお上手です。さすがお役所👏
ぼくは、同じお役所勤務なので、超悔しいんですよ。
釣り人が地域に来てくれることの大切さを十分に示し、行政と地域の理解を得ることができなかった。
2万人、1億円じゃダメですか?
逆に考えると、釣り人が多すぎて観光客が停められないって、すごくないですか?
そんな地域、他にありますか?
釣り人だけの競技を見つけろ
ぼくの感覚では、奥日光に来るほとんどの観光客にとって、湖は目的地ではなく、旅の通過点。滞在時間も短い。
観光客は50万人と数が多いけど、地域との関わりはかなり浅いと思う。
一方で、釣り人にとっては、“湖が旅の目的地”なんですよね。そこに用がある。
たかが2万人。たかが1億。
でも、観光分野に人数や金額で圧倒的な差を突き付けられ、眼中にないよと言われて、本当に良かったなと思うようになりました。
ピンチの時こそ、必ず相応のチャンスが眠っている。
このままだったら、「釣り人は地域にお金を落としているから、地域振興に貢献しています!」なんて聞いたことのある薄っぺらいシナリオを描くところだった。
あぶねぇ。
数とか量、金額の多さっていう、戦後から続く古い物差しでは測れない、“別の価値”を見つけに行かなきゃ。
先行者と同じ競技で勝負するな。
自分だけの競技を作れ。
戦略として、プレミアム(いくつもの競合の上位)じゃなくて、ラグジュアリー(競合のいない唯一無二)を狙わないといけないことを再認識しました。
キーワードは、“地域との関わりの深さ”、“異常なリピート率”
中禅寺湖の釣り人の年間釣行日数は、平均6日、多い人は50日をゆうに超える。
釣り人の7割が県外者で、居住地は北海道から九州まで多岐にわたる。
釣り人は、シーズンを通して何度も湖を訪れ、朝から晩まで地域に滞在する。
滞在時間が長いため、地域に愛着が湧き、人と出会い、関係性を築いていく。
“お客さん”の関係を超えた、人と人の深い繋がりが生まれる。
禁漁後のオフシーズンにまで、人に会いに湖を訪れる。
さらには、チャリティーTシャツで募金を集め毎年数十万円も地域に寄付するとか、釣り人が有志で湖畔を綺麗にするとか
こんなにも地域に深く関わっている外部の人間は釣り人しかいない。
おそらく、どの観光客と比べても、ダントツのリピート率と深さ。
これをどう可視化して、関わる全ての人たちの気持ちをいかに高めていくか
もっともっとリピートしたくなる、中宮祠と関わりたくなるような仕掛けをずっと模索しています。
中禅寺湖の釣りのルールでしか実現できない、ワクワクする仕組みを想い描いています。
釣り人だからこそできる、中禅寺湖を訪れる“意味”を大切にした新たな競技で、地域と繋がり、新たな価値を見出していく。
まだうまく言葉にできないけど、イメージはできてる。
もう少し。
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