帝王切開の後悔
ご興味を持ってくださり
ありがとうございます。
お母さんを笑顔にするお仕事の人
子育て専門助産師なとりです。
帝王切開について調べていたら
書きたいことが次々と浮かび
シリーズ帝王切開として
5回目の投稿になります。
そろそろほかのテーマについて
書きたくなりましたので
シリーズは今回で終わりにします。
最終回は「帝王切開の後悔」です。
これから帝王切開をされる方だけでなく
過去に帝王切開をされた方には
ぜひお読みいただきたいと思います。
〈最初は励まそうと思っていた〉
帝王切開についての投稿をしようと思ったのは
後悔したり自分を責めたりしている
お母さんにひとこと言葉をかけたかったから。
「帝王切開は立派なお産です」
はじめはそんな切り口で
帝王切開をしたお母さんたちに
エールを送ろうと思っていました。
でも原稿を書くにあたり
帝王切開の情報をあさっていると
穏やかでない情報が目につきました。
ある女性が妊娠して
40年ほど前に帝王切開したお母さんと
出産について話す機会があったそう。
「お母さんの時代は恥ずかしくて
帝王切開だって人様に言えなかったのよ。
周りの人に知られないようにしていたの。」
時代は令和へと変わっているのに
帝王切開への誤解は
昭和から続いているのだなと
切なくなりました。
なので
誰かを励ますというよりも
世間の帝王切開に対する
誤解をなくしたいと思うようになり
シリーズ化して投稿を重ねました。
そのためには
正確な情報を記す必要がありましたので
一字一句確認しながら
自分の想いをのせて丁寧に書きました。
〈きっかけはあるお母さんの一言〉
子育てに悩むお母さんたちと
オンラインミーティングをする
ご縁がありました。
その中のお一人が
なとりさんに伝えたいと
こんなお話をしてくれました。
❝私、帝王切開なんですよ3人。
帝王切開してるお母さんって
自然分娩出来なかったことで
自分を責めてる人がけっこう多くて。
私はそこまでじゃなかったけど
同じようなお母さんに聞くと
普通に産んであげたかったとか
その子になにかあると帝王切開だったからと
結びつけたりする人がけっこう多いんです。❞
その方はご自身のお子さんが2人
現在進行形の行き渋りと不登校で
フリースクールに勤めながら
同じ悩みを持つお母さんのサポートをされています。
話はさらに続きます。
❝それこそ不登校もそうで
赤ちゃんが出てくるまでの試練(陣痛)を
本人が乗り越えてないからとか
お母さんのお腹の中が心地よくて
外に出たくない気持ちが赤ちゃんのときから
あったんじゃないかって言われたことを
変に結びつけちゃったり。
でも私は赤ちゃんを産むために
自分で手術台に上るお母さんって素敵だよねって
なにかの話で言われたときに
自分を責めてたのが解消された経験があって。
後々まで引きずって
自分を責めてるお母さんがけっこういるので
助産師さんとして責めなくていいんだよって
伝えてあげてほしい。❞
不安と緊張の中
手術台に上る女性の姿は
実に勇ましく果断で美しいですね。
少し思惑は変わりましたが
お伝えこともすることができましたし
これからも伝え続けていきます。
またどういった形になるかわかりませんが
こうした方々のサポートもしていきたいと思います。
〈お産は本能〉
本来、お産は自然なもので
医療の手を加えずとも
女性の身体には本能である
「産む力」が備わっています。
そして赤ちゃんにも
「生まれる力」が備わっています。
この赤ちゃんの「生まれる力」は
産道を通って生まれてくる
ということだけでなく
帝王切開でも発揮されていると
私は思うのです。
これは私の第六感的な解釈ですが
赤ちゃんは産道を通って生まれることが
自分あるいはお母さんにとって
安全ではないとわかるのだと思います。
だから
自分もお母さんも安全であるよう
何らかのサインを出して教えてくれて
帝王切開を選んでくれているのだと思います。
経膣分娩でも帝王切開でも
すべてのお産は自然の流れで
なるようになっていて
その流れからの意味では
どんなお産も自然分娩と言えると思うのです。
〈帝王切開の社会的適応〉
帝王切開をする理由には
母体側か胎児側、あるいは両方に
医学的な適応があります。
前回の投稿で
骨盤位(逆子)は無条件で帝王切開になっている
ということを書きましたが
骨盤位と言ってもまた分類がいくつかあって
条件があったときだけ経腟分娩が選択できます。
本来は経膣分娩が可能な骨盤位なのに
大きな括りの骨盤位にあてはめられて
無条件に帝王切開が適応される場合
これは医学的対応ではなく社会的適応になります。
産む側が帝王切開を強く希望する場合や
不妊治療で授かった場合などが
社会的適応の例になります。
日本では社会的適応も受け入れられ
こうした帝王切開を「不必要」と
声を上げる動きは今のところないようですが
海外では帝王切開でのお産が半数を超える国もあり
経済問題にもなっています。
海外の事情を見てみると
・自然分娩の技術が低いため
「自然分娩は危険なお産」とされている
・帝王切開の方が安全で痛みが少ない
・縁起の良い日を選んで産むことができる
・お産は金銭をかけるほど安全だと考え
出費を惜しまない
・帝王切開にかかる費用を出せる余裕がある
というステータスの証である
・予測ができない自然分娩を避けられる
などの社会的適応の一方で、
・医療収入のため医師が帝王切開をすすめる(煽る)
・医師の手術の執刀実績になる
・お産のトラブルを回避し訴訟を起こされずにすむ
・産後のパートナーとの関係(性生活)を重要視している
といったよりリアルな理由も見えてきました。
〈自然分娩への期待と「思い込み」〉
緊急帝王切開になった女性が
こんなことを話してくれたことがあります。
❝想定外の妊娠から始まって
妊娠中ずっと仕事をしていたので
母親学級も全部参加できていなくて。
準備がちゃんとできていなかったせいだと思いました。
自然分娩で産みたかったし
ちゃんと産んであげたかったなって。
立ち合いもできなくなったので
旦那に申し訳ない気持ち。
この子には苦しい思いをさせたから
その分大切にしてあげたいと思っています。
次は自然分娩をしたいなって思います。❞
また別の女性はこう話していました。
❝せっかく女性に生まれたんだから
下から産みたかったですね。
ちゃんと産んでこそお母さんみたいな。
自然分娩で普通に産まれてくると思っていたし
それが当たり前だと思っていたから
帝王切開なんて考えてもみなかったです。❞
❝急に帝王切開になって
私も赤ちゃんも死んじゃうのかなって。
こんなに痛いのに生まれてくれないのと
なんで普通に産めないのかなって
とにかく不安でした。❞
みなさんそれぞれ
「自然分娩で産みたかった」
「下から産みたかった」
「普通に産みたかった」と
後悔の念を口にしています。
ここで気になるのは
「ちゃんと産んであげたかった」
「ちゃんと産んでこそお母さん」
「なんで普通に産めないの」
といった言葉です。
自然分娩ができるという
「期待」があったのですね。
実は「期待」をすることは
「後悔」や「不満」を生じさせるように
「期待」通りの結果をもたらさないことが
往々にしてあるのです。
今回は帝王切開のお話なので
「期待」についてはまたいつか書くとして。
完璧なお産なんてありませんし
お腹で赤ちゃんを育んだ事実があります。
帝王切開はお産のスタイルのひとつと
お伝えしています。
帝王切開は「ちゃんとしていない」
なんていうことはありませんし
お母さんになるのに
お産の方法はどんなだっていいですし
「普通」と定義されたお産はないのです。
経膣分娩でなければ女性ではない
なんてことはないですし
帝王切開だから子どもへの愛情が不足している
なんてこともありません。
すべてはあなたがそう思い込んで
決めつけているだけなのです。
〈あとがき〉
帝王切開を
否定的にとらえないでほしい
そんな想いで
お産の方法のひとつに
帝王切開があるとお伝えしています。
帝王切開が増えているとはいえ
日本は自然分娩を望む女性が多くいます。
どちらがいいかというよりも
経膣分娩と帝王切開の両方の
メリットとデメリットを理解し
「安全で幸せなお産」なら
どちらでもいいと私は考えています。
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