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シエナ・ウインド・オーケストラ 第54回定期演奏会 2024.2.10

以前からジョン・マッキーの曲はプロの生演奏で是非聴いてみたかったので、チラシを見つけて飛びつくようにチケット購入しました。
今回のプログラム、委嘱作品の初演を含めてジョン・マッキー作品を4曲も。嬉しい。
そして挾間美帆氏の2曲、こちらも委嘱作品の初演を含む。

シエナ・ウインド・オーケストラ 第54回定期演奏会
於:文京シビックホール 大ホール

ジョン・マッキー/アスファルト・カクテル
ジョン・マッキー/オーロラの目覚め
ジョン・マッキー/付喪神(シエナ・ウインド・オーケストラ委嘱作品 世界初演)
ジョン・マッキー/レッドライン・タンゴ
挾間美帆/pray(シエナ・ウインド・オーケストラ委嘱作品 世界初演)
挾間美帆/組曲「The DANCE」

Ec1. ジョン・マッキー/リングマスター・マーチ
Ec2. J.P.スーザ/星条旗よ永遠なれ

指揮:出口大地

一番のお目当ては「オーロラの目覚め」でした。クラリネット族のピアニッシモが作り上げるキーンと張りつめた静寂の夜明け前。徐々に明るいグラデーションが広がっていき、やがて眩い閃光が世界を照らしていく。美しい地球、美しい宇宙、吹奏楽の美しい響きをフル出力したスケールの大きな作品です。大好き。
オーロラはあの北欧で観られる光のカーテンのことかと思っていたら、ローマ神話の暁の女神アウローラを示しているのですね。あちらのオーロラも語源は暁の女神アウローラであるようですが。

「アスファルト・カクテル」や「レッドライン・タンゴ」も秀作で演奏も文句無しでしたが、今回注目すべきは世界初演の委嘱作品「付喪神」(つくもがみ)。
大編成の「オーロラの目覚め」から30人規模の小編成に、スタッフも大忙しでリセッティング。
親日家のジョン・マッキー氏が付喪神の話(道具なども100年以上経つと精霊が宿るという日本の言い伝え)にインスピレーションを得て書いた二楽章形式の作品。和の旋律にダンサブルなリズムがミックスされて面白かった。太鼓と S.Sax & E♭Cl が雅楽的。古来の和の音楽といえばやはり雅楽ですかね。
感心したのは60人〜70人規模の大編成から30人規模の小編成になっても、響きの広がりにはそれほど差がなかったこと。もちろん音の厚みは違えど、さすがプロというか、そこは人数じゃないんだなと。

この日はジョン・マッキー氏も客席で聴いてらして、新曲のお披露目に皆で賛辞の拍手をおくりました。休憩中はファンからサインや写真を求められ快く対応。なんて良い人。吹奏楽少年少女たちが行列を成していました。
ジョン・マッキー作品では「シェルタリング・スカイ」や「フローズン・カテドラル」も壮大でファンタスティックな曲なので、こちらもいつか生で聴いてみたい。

休憩を挟んで、後半は挾間美帆氏の2曲。
「pray」も新曲お披露目。なんの pray(祈り)かというと、いまだ終わりが見えない中東紛争への祈り。パレスチナ・ガザ地区に住む女性へのインタビュー、「私たちにできることはありませんか?」という問いに対して、ただ「祈ってください」という返答を目の当たりにし、心動かされて書いた曲だそうです。恐怖と疲労の極限の中で、食糧や物資を求めるでもなく、ただ祈りを求める。我々ひとりひとりにできることは、祈ることだけ…なのだろうか。繊細なアンサンブルが要求される難しそうな曲でしたが、こちらも小編成での秀演。

続いての組曲「The DANCE」は各国のダンスミュージックを取り入れた全五楽章の組曲。挾間氏はジャズの人なんですよね。この曲も元々ビッグバンドのための曲を、挾間氏自身が吹奏楽用にアレンジしたもの。シエナの名手たちによるソロも聴きどころでした。上手い。

指揮の出口大地氏は法学部卒の経歴を持つ。かつては弁護士を目指していたそうですが、争い事が嫌いな性格なので指揮者を目指すことにしたという…w
変拍子てんこ盛りの難曲たちを、それこそ踊るように軽快に振る姿はカッコ良かった。

ラストアンコールの「星条旗よ永遠なれ」はシエナ恒例、楽器を持って来ているお客さんたちをステージに招いて一緒に演奏するのはコロナ禍以降ではこれが初とのこと。吹奏楽界にとってコロナ禍はほんと暗黒の時代だった…。
吹奏楽を好きでいることって、少年少女時代に吹奏楽にまつわる楽しい思い出があるかどうかがほとんどのような気がする。(リスナーのほとんどがプレイヤーなのが吹奏楽界の悩ましいところでもあるのだけど…)
この日、吹奏楽少年少女たちがたくさん来場しているのを見て、吹奏楽界の未来にも再び光明が射してくるのを感じました。

「星条旗よ永遠なれ」については写真OKとのことだったので▼

みんなで一緒に「星条旗よ永遠なれ」♪

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