「収入は読書量に比例して増える」のウソについて考察
読書量を増やすとキャリアアップや年収アップに繋がる、という話をよく聞きます。果たして本当でしょうか?
ここでは、読書量とキャリアや収入との相関関係・因果関係について、調査結果を参考にしながら考察します。
読書量と年収との相関関係はあるが因果関係は不明確
まず結論から。
読書量と年収には相関があります。しかし、因果関係を示すデータは見つかりません。したがって、「読書をすれば年収が上がる、とは言えない」が実態であると考えます。
<読書量と収入の相関>
「収入が多い人は読書量も多い」という調査結果は複数あります。
最近のデータとして、こちらの記事を参照してください。
→ 参考記事(mynavi.jp) :「「読書量が多いと年収は高い」は本当か~過去調査との2時点比較で見る傾向~」
この記事では、例えば、2021年の調査結果として、「1ヶ月に3冊以上」本を読む人の割合として、
のようなデータが紹介されています。
「読書量」「収入」の間に、正の相関があると言えそうです。(詳しい分析は、統計学の専門家に委ねたいところです…)
<因果関係と相関関係は別>
しかし、上記の記事では読書量と収入の「因果関係」については明確に説明されていません。
他にも世の中の記事・論文等で、読書量と収入の因果関係を説明する文献を探してみましたが、見つかりません。
「読書量が多い」→「収入が多くなる」という因果関係が成立するとは断定できない状況と言えます。
(相関だけでなく、因果関係を示すデータがあるなら、教えてほしいです)
ここで、「相関関係はあるが因果関係はない」というケースについて補足します。
(1) 逆方向の因果関係の可能性:
「読書量(A)と収入(B)が比例する」というデータを見て、「A→ B」と早とちりしてはいけません。逆方向の「B→A」の要素もあるかもしれません。
つまり、
によって、収入と読書量の比例しているかもしれません。
(2) 第三の因子の可能性:
相関関係にあるA, Bの2者間には、多くの場合第三の因子(C)があり、「C →A」 と 「C→B」 が起こることで、A, Bの間に相関関係が生じているのを、A→B(またはB→A)の因果関係と誤解されがちです。いわゆる疑似相関です。
本件の読書と収入の場合のケースで考えると、第三の因子(C)として、例えば「その人の潜在的な知的水準」があると考えられます。
つまり、
のようなケースが成立しているのかもしれません。
以上の(1)(2)のように、結果として読書量と収入が比例しているように見えるからといって、単に読書量を増やせば収入が必ず増えるわけではないのです。
当たり前の話ですが、質の低い読書を大量にしても、収入が増えるはずがないのです。
自己啓発本やお手軽なビジネス書を読み漁っても、自動的に収入アップとはなりません。残念!
とはいえ、私の私見ですが、「良い本」を「良い読み方」で読めば、思考力や教養レベルが上がって、収入を増やす(または収入減を防ぐ)効果をもたらす可能性はあるとは思います。
>> 参考記事: 『読書大全』で本選びの迷いが解消された
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