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ネコヤナギ

自宅の向かい側の敷地内にある家を管理しているおじさんが居る。
息子を迎えに行って歩いていると、そのおじさんが何か枝を持って家の前で私たちを待っているのが遠くからでも分かるし、そして多分それは私たちにくれるつもりなのも伝わる。
こんにちは!と息子と2人で声をかける。
“はい、これあげる。ネコヤナギ。ネコヤナギはオスとメスがあってこれはどうやらオスらしい。”
いつも話し方が少し不器用で、早口で面白い。
わぁありがとうございます。と受け取ったそれは猫じゃらしのような芽がついた枝だった。

ネコといえば。と思い出した事、それは引越し先を探している時にこの今家に決めた理由が、人懐っこい猫がいたからだ。

iphone写真で少し画像が粗い。


普通猫は子どもを避ける。が、にゃーんと寄ってきてくれたこの子は、私にも子たちにも優しかった。
私も、子たちもみんな猫が大好き。いつか猫を家族にするのが夢だ。
このお家にする!!と子は大喜び。帰りたくないと言ってみんなで木の下に潜り込んでしばらく出てこなかった。

木の下の子達と猫ちゃん。名前はにーやにすると言っていた。

引越しまでの準備期間1ヶ月くらい間が開いてしまって、いざ越してきたら猫ちゃんはいない。
もしかしたら寒いし、ハウジングの方も地域猫と言っていたから誰かの家にいるのかも。と思ったけど、いくら待っても出てこない。
それをネコヤナギと聞いて思い出して、おじさんがまだ何か話しているのを、”そう言えば”と遮ってしまった。
ネコといえばこの辺にいたネコちゃん、知りませんか?と聞くと少し困った顔をしたので察してしまう。

“あぁ、う〜ん。あの子ね、歳だったから。もう10年以上生きていたし。”

ずしんっ。と何か重い気持ちがのしかかる。苦しい。
息子を見ると何が何だかという顔をしている。やばい。
と思った束の間”にーやは?”とまた聞く息子。
“虹の向こうに行っちゃった!てやつだな。”とおじさんが言って、それからまたネコヤナギの話に戻る。
“これね、だんだん黄色くなって〜”と早口で色々説明してくれるけど、もうほとんど頭に入ってこない。
これって水差しで飾るんですか?と聞くと、嬉しそうにうんうんと頷いていた。

家に入って花瓶を探す、どれが良いかな?と会話しながら息子の様子を伺う。
息子は繊細で、死に対してかなり怖がって悲しがる。だから心配だったけど、本人はやっぱりなんだか分かっていない様子。それで良いやと少し安心をした。
だけど多分また聞いて来るだろう質問にどうやって答えようか、少し不安にもなっている。
何より私も、少し寂しくてつらい。
花瓶にネコヤナギを生ける。
ふとネコヤナギの名前の由来が気になって調べたら猫のしっぽのように見えるから猫の尾をした柳、でネコヤナギ。と知った。
私たちが勝手に名前を付けたにーやは、しっぽがとても短かった。ネコヤナギみたいにピンとしてなくて、まるまるっとしたしっぽだった。
綺麗事のように思うかも知れないけど、もう少し早く会えてればと胸が痛い。
身体が少し大きくて、お母さんのお腹にしっぽ忘れてきた?てくらいに丸くて小さいしっぽのにーや。いくつ名前があってどれだけの人に可愛がられていたんだろう。
地域猫として幸せだっただろうか、幸せだったら良いね。

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