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【140字小説】冬の星々3作品

星々さんの【季節の星々(冬)】応募作品です。


怒りで電話を切った。
母の死を忘れられたことに腹が立ったのだ。親友だと思っていたから。
私は、彼女のことを大体は知ってる。なのに。
寒空を見上げていると「大体知っている」が、何なのか分からなくなった。誰かのことを知ってると思った時点でおしまいね。さっきの広美の言葉が頭をコダマする。


瞼がゆらゆらした何かを察知した。
目をひらくと、見たことのない黄金の光が部屋に差し込んでいた。
そのあまりの神々しさに、天に召すことを覚悟したほどだ。私は恐怖の隣でわずかに心躍らせ、息を呑み、膨らんだカーテンを両手で開け広げた。
はっ!露わになった黄金を吸い込むと、色は日常に戻った。


「広い」と聞いて、海が思い浮かぶのは子供の頃に聞いた歌の影響だろう。母と。そして友と口ずさんだ記憶。行ってみたかった場所は何処だったのだろう。波に揺られ、そこへ向かったのだろうか。コーヒーを片手に、自分の口元が優しく上がったのが分かった。広く大きな景色と出会ったあの人を想像して。


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