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【シャニマス・考察】緋田美琴、その名を呼ぶ。

緋田美琴。

その名前を呼んでみる。

彼女は気付かない。

ならば、彼女の名を叫ぼう。

彼女を呼ぶ声がある事、彼女を待っている人がいること。

彼女に知ってもらうんだ。


◆ ◆ ◆


2021年4月18日、七草にちかに続き、緋田美琴が新アイドルとして登場した。

彼女は、強く、しなやかで、美しかった。

283プロダクションに来る前からアイドルであった彼女には、およそ非の打ち所が無く、プロデューサーとして彼女にしてあげられる事は少ない様に思えた。

そんな彼女のコミュについて触れて行きたいと思う。

本記事では緋田美琴の共通コミュ、それに伴った緋田美琴自身の人間性について触れていく。また一部のイベントコミュについても言及する。
そのため、ネタバレを考慮しない。
また、個人的な解釈を含むため激しい解釈違いを含むかもしれない事や、読み切るのにかなりの時間を要する解説とも考察とも言えない怪文書である事に注意されたし。


1.遅咲き

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天井社長から直々に「会わせたい人がいる」と連絡があり、事務所へと足を運ぶプロデューサー。

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緋田美琴、彼女とはそこで出会う。

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彼女は283プロダクションに入る前から、他の事務所でアイドルとして活動しており、前事務所を退所し新しい事務所を探している折、283プロダクションを見つけたとのこと。

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およそアイドルに必要だといわれる技術は準備してきたつもり、という彼女。

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「私、アイドルになりたいの。」

「………死ぬほど。」

283プロに来る前からもアイドル活動をしていた事、そして自信に裏打ちされた技術がある事、そして何より「死ぬほど」アイドルになりたいという彼女の言葉、どれを取っても並々ならぬ彼女の覚悟の大きさと、アイドルへの思いの大きさを感じる。

彼女は【アイドル】という存在に対してどう向き合っているのだろうか。


2.ひたむき

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おそらく仕事終わりだろうか、かなり遅い時間にプロデューサーはふと、レッスン室の電気がまだ点いている事に気付く。

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そのレッスン室には、彼女がいた。
彼女の名前を呼ぶ。彼女は気付かない。

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今度は彼女の名前を叫ぶ。

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「来てたの、本当に気が付かなかった」

プロデューサーが来ていることに叫ばれるまで気付かなかった美琴。

練習に対してどれほどの集中をしていて、練習に対してどれほど真剣に向き合っているかある程度伺える。

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それだけではない。
彼女のその練習量は『狂気的』とも言えるストイックさを孕んでいた。

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『こんな時間まで』レッスン室に電気が着いている事に違和感を覚えるぐらいの時間までレッスンしてもなお、レッスンを続けるという美琴。

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283プロに来る以前からキャリアを積んでいて今すぐステージに立っても問題ない実力を持つ彼女。
そんなストイックに練習しなくても、とプロデューサーは彼女に伝える。

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「昨日できたことが、今日絶対にできるとは限らない。
だから、毎日、毎日同じように練習するの。
それが本当に、できるってことだと思うから」

これは、にちかの記事でも少し触れた事だが、基礎という物は身につける物ではなく、日々の練習でいつの間にか身についている物だと思う。
1日たまたま出来たから「もうしなくていい」というわけではないだろう。

また身についた基礎も日々研磨していくことで「出来た」のレベルを上げていく。

そうして身についた物が自然と「出て来る」のだと。

彼女はおそらくそう言っていると思う。
だから練習をずっと続けている。

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しかしあまりにもストイック過ぎる。
ほぼ毎日こんな夜遅くまで、名前を呼んでも気付かないほど練習に耽るなんて、多分一般的に見て普通ではない。

『狂気的』ですらあると思う。

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「そのくらい、難しくて切実な夢だと思うから。」
「自分のなりたい、アイドルになるってことは」

緋田美琴はかつて言った。

私アイドルになりたいの、死ぬほど、と。

しかし、どうやらただアイドルになりたいのではなく、『自分のなりたい』アイドルになることが彼女にとって大事な事らしい。

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そう、彼女の目指すアイドル像とは『歌やダンスなどのパフォーマンスで感動を与えるアイドル』の事らしい。

なるほど、であれば技術を研磨し研磨し研ぎ澄ましているのも理解できる。

彼女が狂気的なまでに練習にこだわる理由は、技術で観客を感動させたいから、パフォーマンスで物を言わせるアイドルになりたいから。

技術がなければ感動させる事は出来ない、とそう彼女は考えているからだ。

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「……そうなれるなら、死んだっていいの」

『歌やダンスなどのパフォーマンスで感動を与えるアイドル』になれるならば死んでもいい。

逆説的に、そういったアイドルになるために生きている。
なれなければ生きている意味がない。

だから死んでもいい。

彼女は夢を追いかけ14歳で故郷を飛び出した。
彼女は今24歳。

青春や華々しい学園生活を捨て、夢を追い続けた彼女。

まさしく彼女は自身の全てを捧げ、アイドルになるために生きている。

文字通り人生をかけている。

「アイドルになれるなら死んでもいい」と、そういう彼女の言葉には計り知れない"重み"がある。
重すぎるほどの。


3,袂

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彼女は前の事務所、いや、今までのキャリアを通じて業界に多く顔見知りがいる。

しかも、向こう側から気付いて声をかけてくれている。
緋田美琴が有する【人柄】が良く、人から好かれるものであることが伺える。

緋田美琴が人に好かれる【人間味】の持ち主である事は後々大事な意味を持つ。

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美琴の表情や話し方も優しい物で、昔からの知り合いとの再会や、また同じ現場で仕事をする事をポジティブに捉えているように見える。

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しかし、これまで友好的、社交的に接していた美琴だが、このディレクターにだけ反応が違う。

おそらく今までの仕事関係で、ディレクターに良くなかった印象を持っている事は想像に容易い。

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「今日ルカちゃん、隣のスタジオで撮影入ってるよ
ほらあっちのほう、なーんかピリピリしてるでしょ」

それを聞いた美琴の顔は、先程まで久々に顔を合わせた昔馴染みと会話していた時のような、楽しそうな顔の面影はまるでない。

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そして彼女はルカと呼ばれる女性と出会う。

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「……何?
 ルカには関係ないでしょ」

ルカと呼ばれる女性に対しての美琴の態度は、今までの昔馴染と話していた時の物とは全てが違う。

冷たく、突き放すような言葉と言い方だ。

逆に、美琴の中でルカは他の昔馴染とは違う別の、特別な枠組みに入るという事だろう。

二人にどんな確執があるのか、二人がどんな関係だったのか現時点ではなんの説明もないため知る由もない。

だが並々ならぬ関係であることは読み取れる。

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「ふざけんなよ……!」

一触即発の空気であったが、なんとか難を逃れた二人。
最後にルカは言葉を吐き捨て、その場を去った。

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もちろん、プロデューサーとしては美琴の事を知りたいと思う事は不思議ではない。

むしろ、あそこまでバチバチにやりあったら「なにかあったんだろうか……」となるのが普通。

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しかしどうやらその事について話したくない様子の美琴。

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「ああ、でも
 あの子は美琴のー……」

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「ううん
 ……ルカはもう、ひとりでちゃんとやってるから」

斑鳩ルカ。

彼女は283プロダクションに来る前の美琴とユニットを組んでいた。
そして、美琴とのユニット活動も終わり、ルカはソロでの活動をしていた。

「プロデューサー、知らないわけじゃないでしょ?」
「私に聞かなくたって」

そう、今や斑鳩ルカはソロ活動で大成功しており、若者から『カミサマ』と崇められている存在らしい。

その斑鳩ルカとユニットを組んでいた美琴。
その斑鳩ルカとのユニット活動は終わり、お互いがお互いに別の道を行く事になり、袂を分かつ事になっていること。
それでもまだ二人ともアイドルをしているという事。

そこには、やはりなにか確執めいたものがあるに違いない。


4,轍

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プロデューサーは美琴のlesson室を訪れる。
彼女の名前を呼ぶ。彼女は気付かない。

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「いつもありがとう」

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(お腹が空くのって忘れるものなのか……?)

おそらく、またお昼過ぎから夜まで練習していてご飯を摂ってないのだろう。
パフォーマンスの事と、その練習が思考のウエイトを占めている。

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プロデューサーが差し入れを美琴に持ってきたのは、別の用事があったからだ。

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前のルカとの事も含めて、こうやって美琴と向き合って話をする時間を作る。
美琴の事を知る、美琴の話を聞くのがプロデューサーがレッスン室を訪れた本当の理由なのだ。

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「……これまでって?生まれたとこから?」
「……嘘、冗談だったのに」
▲冗談を言って笑う彼女の【人間味】に注目。

冗談をはさみつつ、彼女は自分の過去を語り始める。

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彼女は北海道出身で、最初はアイドルではなく歌手志望で上京をしてきたということ。

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それがいつしか歌って踊りたいになっていって、段々とステージで誰かを感動させるアイドルになりたいと思うようになったこと。

「その頃からなんだな
 美琴が、アイドルを目指したのは」

▲美琴はただアイドルになりたいのではなく、パフォーマンスで感動させられるアイドルになりたい、という点に注目。

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そして夢を追いかけ上京したこと。
青春のような学生生活を捧げ、アイドルになるために全てを費やした事。

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何度もデビューのチャンスがあったこと。
その全てでうまくいかなかったこと。

斑鳩ルカとユニットを組んでデビューしたこと。
そしてルカとのユニットは成功したこと。
自分の歌が初めてCDになったこと。
その事を夢のようだと喜んだこと。

そしてそのルカとの関係を終わらせたこと。
自分のなりたいアイドルになれなかったから。

ここが美琴が『なりたいアイドル』になる事にとてもこだわっている根拠になりえる描写。

夢のようだと言っていたほどのCDデビューを果たしたルカとのユニット。
それをおじゃんにするほどパフォーマンスにこだわっている。

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「うちの事務所が1番だ!」と言うプロデューサーに対して、
「他の事務所の事、あまり知らないんじゃない?」と返す美琴。
他の事務所を貶めるわけでもなく、283の事を持ち上げるわけでもない。
前の事務所が嫌になったり嫌いになったり、人間関係が原因で辞めたわけでない事が推察できる。

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テレビを見ていた美琴に対して「今の時間なら芸能ニュースやってるよな」と言うプロデューサー。
しかし美琴は「気になるものは無かった」という。
前の事務所をなにか不祥事で辞めたわけでもないことが伺える。

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つまり、美琴が前の事務所を退所した理由はただ1つ。
『今の事務所ではなりたいアイドルになれないから』だと推察する。
美琴が言い出したのかどうかは、美琴コミュでは明言されてないものの、ルカとのユニットを終わらせたのは「ルカとだと目指すアイドルになれない」と考えた美琴だと予想できる。

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しかし、CDデビューまでしたルカとのユニットを終わらせた事。
自分がなりたいアイドルになるために決断してきた1つ1つの事に、後悔はない、と彼女は言う。

そして私にはこれしかないとも言った。
悩む余地すらない、と。

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「そうかよ……?
 そこまでして……ははっ」
ルカの「そこまでして……」というセリフ。
これは、「CDデビューまでして、成功したユニットと事務所と、私を捨ててまでパフォーマンスにこだわりたいのかよ?」って意味に取れなくもない。

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彼女の過去を彼女の口から聞いて、やはり思う。

文字通り人生を懸けている。

ただのアイドルではなく、なりたいアイドルになるために全てを捧げている。
なりたいアイドルになるために、生きている。

だから、なりたいアイドルになれるのならば死んでもいい、と、そう言える。

なりたいアイドルになるために私の人生は価値があり、なれないのならば私の人生に価値がない。

そう聞こえる。

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「でも、もし選べるなら
 その時はレッスン室よりステージがいいな」

選ぶ。

『死に場所』を。

もし死に場所を選べるのならばレッスン室よりステージがいいな、という彼女。

もし、死ぬとしたらアイドルとして死にたい。アイドルになってから死にたい。

パフォーマンスで感動させられるアイドルになって、そんなアイドルとしてステージに立つことが出来れば、悔いはない(死んでもいい)と彼女は言う。

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人生の大半を過ごしてきたレッスン室――よりも大きくて眩しい。

そんなステージに立つことが出来れば。
そんなステージに立つことが出来るアイドルになれれば。

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必ず、なれる。
美琴がなりたい、アイドルに。

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以前の事務所では思えなかった『なりたいアイドル』への予感。

283プロダクションと、そのプロデューサーとなら。

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大きくて眩しい、ステージに。
美琴は立つことが出来れば死んでもいいと言ったが、そんなことはない。

きっと何度だって立つことが出来る。

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「……そうだね、プロデューサーを連れて行こう行ってあげないと」
「ちゃんと、恩返ししないとね」

恩返し。

以前彼女と彼女の実家について話した事がある。

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前述の通り、彼女は北海道出身だ。
遠方であるし、なにより彼女は14の時に飛び出して10年以上こちらにいる。

そんな彼女は実家に全然帰っていないと言う。

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「ちゃんと、ここで結果を出すことが恩返しだと思っているから」

彼女にとって、北海道で待つご両親、そして応援してくれているプロデューサーやファンに出来る『恩返し』とは『結果を出すこと』でしかない。

信じて送り出してくれたご両親に対して出来ること、それは、たまに実家に顔を出すとか、心配かけないようにこまめに連絡を寄越すとかそういうものではない。

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恩返し。

恩を返す。

つまり美琴は応援してくれている事を『恩』だと感じている。

誰かに応援して貰えることだって、プロデューサーがいて活動をサポートしてもらえる事だって、当たり前ではない。

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「ありがとう、プロデューサー」

ありがとう。
美琴はよく、そう口にする。

それは応援して貰えることは当たり前でないと知っているから。

ありがとう。

有り難し。

有る事が難しいということ。

それは有る事は当たり前ではないと言う事。

応援して貰えること、それは美琴にとって『有り難し』事なのだ。


5,こころ

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レッスン室。

美琴はプロデューサーにパフォーマンスを見てもらっていた。

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「すごかった……!
 完璧だったよ」

パフォーマンスは『完璧』だった。
非の打ち所もない、悪い所もない。

美琴が有する技術はやはりかなりハイレベルな物らしい。

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「……何かないの?」

しかし美琴はまだ『足りない』らしい。

パフォーマンスは完璧だった。

完璧。

『これ以上望むものがないほどに』。

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「デビューする前も後も、実力なら一番って言われて……
 でも、重要なのはそれじゃないんだって」

そもそも不思議だったのだ。

283プロダクションに来る前からアイドルで、沢山のキャリアを積んでいながらも、それにあぐらをかく事もせず、ひたむきに努力が出来る美琴。

いつステージに立っても問題ないどころか、実力なら一番とまで言われるパフォーマンスが出来る美琴。

なぜその美琴が上手くデビュー出来ないのか、そもそも不思議なのだ。

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「完璧じゃない方が応援したくなるし」
「見た目が良くて、個性があって
 キャラが立ってて、推せればいいんだって」

本当にその通りだろう。

283プロダクションにも、沢山のアイドルがいる。

幼馴染はみんな才能の持ち主なのに、自分一人だけ才能と呼べる翼を持ち合わせておらず、それでも幼馴染たちに追いつくため、幼馴染たちと一緒にいるためにひたむきに努力する事が出来て、その努力する姿が見る人を勇気付けたりする。

そんなアイドル。

自分には個性が無いと考え、他にはない個性として名前をモジッた『チョコアイドル』として自分を売り出すことを決めた。

そんなアイドル。

結局、そういうアイドル達の方が応援したくなる、応援しやすいんだ、と。
彼女はそう言った。

同じ事務所のアイドルの在り方、どころか他のアイドル、キャラクター、コンテンツ全てに一石を投じかねないまさかの発言である。
流石にビビった。

美少女アイドルコンテンツで美少女アイドルへの【アンチテーゼ】……!?

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でも真実である、とも思った。
小糸の頑張る姿を見て勇気を貰った自分が確かにいて、その小糸の事を応援したいとも思った自分も確かに存在する。
その事を否定できない。

だからそういうやり方が絶対に間違いとは一概に言えない。

でも、そういった完璧じゃないパフォーマンスで応援してもらう事や、キャラクターや個性、見た目の良さで売り出すのでは、美琴の目指してるアイドルになれない。

パフォーマンスで感動させられるアイドルには、なれない。

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だから、美琴にはそれが出来なかった。

出来なかったから、『完璧だった』『実力じゃ一番』なんて言われても、デビューできない。

応援してもらえない。

そう理解っていても、なりたいアイドルになる以外の選択肢がない。
迷う余地すらないと彼女は言った。

だからルカとも終わりになった。

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ルカについて詳しく触れられてないので考察でしかないが、おそらくルカはそういったキャラクターや個性を売り出したアイドルとして成功した、と考えるのが妥当だと言える。
そのルカとのユニットもおそらくそういった方向性でやっていく事になったのかと想像できる。(故に美琴が解散させた)

現場で出会った時、唯一美琴の顔が渋ったディレクター。
ディレクターとはつまるところ監督だが、仕事をしている上で、キャラクターや個性を押し出した仕事を強いられたりしたのかな、と想像してみたりもした。

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『歌が上手いだけの子』『ダンスが上手いだけの子』と言われ、そして……

最後には応援して貰えなくなる。

そうやってデビューを逃してきた彼女。

そういった背景があるので、『応援して貰える』ことは彼女にとって『有り難し』ことなのだろう。

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アイドルとは、ファンがいて、応援してもらわないと存在が出来ない。

だから応援して貰えなくなったアイドルは、アイドルとして死んでしまう。

最後には応援して貰えなくなってしまうアイドル。
そんなアイドルは本当は誰も求めてないのかもしれない、と彼女は言った。

そう思っても仕方ないと思う。
人生を懸けてアイドルの為に全てを費やしても、報われない。

実力じゃ1番、なんて言われても応援して貰えなければ死んでしまう。
またステージに立たせて貰えなければ、売れなければ、求められなければ。

応援して貰えなければ。

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「……ねぇ、プロデューサー
 アイドルって、どうやったらなれるんだろう」
「……難しいね」

そういった彼女の声色は、苦しそうでどこか悲しそうに、聞こえた。

なりたいアイドルと、応援されるアイドル。

なりたいアイドルになるために全てを捧げてきた。
けれどそのやり方では生き残れない。
そう理解っていても、キャラクターや個性で売り出すのでは、なりたいアイドルになれない。

でも他に選択肢がない。

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「………いや、求められてるよ」

パフォーマンスで感動させられるアイドル。 

そんなアイドルを待つ人がいる。

少なくともプロデューサーは、もう一度美琴のパフォーマンスを見たいと心が動いた。

美琴を呼ぶ声はちゃんとあると言った。
美琴の名前を呼ぶ声が。

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美琴はなれる、なりたいアイドルに。

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「努力家で、いつもレッスン室にいて、たまに飯を食べ忘れたりするくらい抜けてるところもある」
「そういうのも全部知ってもらうためにさ」

思い出して欲しい。 

美琴はかつての仕事仲間たちに出会った時、向こうから気付いて声をかけてもらえる人格の持ち主だ。

飯を食い忘れたり、冗談を言って笑う、【人間味】の持ち主である。

その美琴の【人間味】は売れるために作られたキャラクターではないし、アイドルのために用意された個性でもない。

美琴自身の、美琴が有する魅力のはずだ。

プロデューサーという語り手を通して除き見しているだけの分際にすぎない私だが、それでも狂気的なまでにストイックだけどどこか抜けてる天然な美琴を知っている。

美琴の【人間味】を知っている。

だから美琴がちゃんと悩んでいる事を知っているし、苦労していることも、人が心配になるレベルで練習に取り組めることも、今こうやって悩みを打ち明けてくれていることも。

彼女の【人間味】に触れたから、そんな美琴を応援したくなったのではないか。

美琴は決して『上手いだけのアイドル』なんかではない。

しかし美琴が目指すアイドルに、個性やキャラクターは含まれていない。
パフォーマンスに必要ない物は、削ぎ落とし、削ぎ落とし、ステージに持ち込まない。

結果、『実力は1番だが、ただ上手いだけで人間味がない』と評価されてしまうのだ。

上手いだけのロボットを積極的に応援したいとは思いにくい。

美琴とにちかのユニット「SHHIS」初のイベント『ノーカラット』では【自動演奏ピアノ】という単語が登場する。
人間味がない、完璧なだけで『上手いだけ』ならば自動演奏ピアノと同じでロボットと変わりない。

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確かに、キャラクターや個性で売り出すアイドルも、やり方が違うとは一概には言えない。

パフォーマンスや技術だけを求めて、キャラクターや個性、人間味をステージに持ち込みたくない美琴は、確かに応援され続けにくいかもしれない。

それでも美琴が有する確かな実力が評価されない理由にはならない。

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「だからさ、世界が変わるくらいすごいものを見せてやろう」
「……美琴なら、それができるだろ」

だから、変える。

キャラクターや個性をステージに持ち込むやり方に美琴を変えるのではない。

美琴を見る世界の方を、実力でわからせる。
そして世界の方を変える。

実力でねじ伏せ圧倒する。

美琴ならばそれが出来る。

美琴の持つ力で、魅力で、変えるのだ、世界を。

◆ ◆ ◆

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「当たり前のことだとは思ってない
 ……そうじゃないって、知っているの」

応援して貰うこと、応援し続けて貰うことの『有り難し』事を彼女は知っていた。

だからこそ彼女は狂気的な努力をすることが出来るし、応援して貰える事に感謝を思うことが出来る。


……ただ、私は思うのだ。
どんなに技術があって、圧倒的であったとしても、そこに『美琴』という名前、ひいては『美琴』という存在、『美琴』という人間味がなければ、美琴がパフォーマンスをする意義がない。

それでこそ上手いだけのパフォーマンスならロボットだって構わないはずなのだ。

でもそれじゃ意味がない。
美琴がパフォーマンスをすることに意義があるとするならば、それは美琴の存在が垣間見えるようなパフォーマンスでなければ、ロボットと変わりないのだ。

キャラクターや個性で売り出すアイドルたちが評価される世界を、さらにその上から技術とパフォーマンスでねじ伏せ、世界を変える。
それは凄く崇高な理想ではあるが、それでは美琴のパフォーマンスが評価されても『美琴』が評価されない。

上手いだけのロボットを、応援し、応援し続けようとは誰も思うまい。

応援してくれるファンなくして、アイドルはなり得ない。

アイドルに死ぬほどなりたい、と彼女は言ったが、このままでは彼女は死ぬべくして死ぬ。

◇ ◇ ◇

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とある少女は言う、熱意があればいいわけでも、技術があればいいわけでもない。

『アイドル』という存在に必要なのは、熱意、つまり人間味と、それを裏付ける技術。

アイドルには両方が必要だと彼女は語る。


6, call my name

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彼女はWING本戦まで駒を進めていた。

評価して貰うことの有り難し事を知っている彼女は、ちゃんとパフォーマンスを見て貰えるといいなと言う。

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「実力も、魅力も全部をちゃんと評価して貰えるように……」

プロデューサーが美琴にかけるこの言葉から、美琴の人間味も評価されて欲しいとプロデューサーは考えている事が伺える。

美琴が有する素の彼女は、【魅力】の一部であると考えている。

私もそうだと思う。

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「だから、応援してて。
 ……美琴って、名前を呼んで」

彼女の名前を呼ぶ。
彼女の事を、応援する。

彼女の名前を呼ぶ事、すなわち彼女個人を呼ぶ事は『彼女のパフォーマンスではなく彼女個人を応援する事』だ。

彼女は、私みたいなアイドルは誰も求めてないのかもしれない、と言った。

彼女は、自分の名前を呼ぶ誰かの事を、まだ気付いていない。

ならば、彼女の名を叫ぼう。

彼女を呼ぶ声がある事、彼女のパフォーマンスではなく、『彼女』を待っている人がいること。

彼女に知ってもらうんだ。


7,今日という日

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WING決勝戦。

その舞台袖に彼女はいる。

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「なるべく大きく、一歩
 踏み出せたらいいな」

幾度となくデビューのチャンスがあって。
スタートを切ったと思っても、踏み出した足は宙ぶらりんのままで、またスタートまで戻って。
たくさんのかつての同期を見送ってきてきた。

そして、また彼女は新しいスタートに立った。
踏み出した足をちゃんと、次の一歩に繋げるために、しかと地に着ける。

その一歩は出来るだけ遠く。
踏み込む。

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「何度だって大きくて眩しいステージに立てる」
「絶対、なろうな!
 美琴の目指す、アイドルに!」

WINGは、通過点だ。

美琴が目指す『アイドル』になって、輝くステージに何度でも立って。

彼女の名前を呼ぶ声が、確かにある事。

それを彼女に知ってもらわなければならない。 

WINGはそのスタートラインにすぎない。

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その為に、生まれてきたんだから。

その為に全てを捧げた私の人生の意義はそこにしかない、という意味。


◇ ◇ ◇


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優勝。

それは美琴のパフォーマンスだけでなく、『美琴』も評価された結果。

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「俺、本当に感動してさ……」

『美琴』という【人間味】を宿したパフォーマンスは、見るものを【感動】させるものだった。

人の心を動かすために人の心が必要なのは、きっとなんとなく理解できる。

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優勝した彼女はなんだか、ぼんやりとしていた。

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「……少しびっくりしてただけ」

人の心を動かすためには、人の心が必要である。

多分、そんな簡単な事実にようやく気付いたため、彼女はびっくりしたのだと私は考える。

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ちゃんと評価してもらえることの『有り難し』事を、彼女を噛み締めて、そう口にした。


◆ ◆ ◆


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 彼女の名前を呼ぶ。

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彼女は気付かない。

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ならば、彼女の名前を叫ぼう。

彼女の『名前』には大切な意味がある。
彼女は決して人間味が欠落したロボットなんかではない。

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「ごめんね、最初から聞こえていたの」

そう言って彼女は微笑んだ。

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「いつもこうやって呼んでくれてたの
 初めてちゃんと聞けたかもしれない」

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彼女を呼ぶ声。彼女を応援する声。
彼女を求める声。

その声は美琴に届くようになっていた。

私みたいなアイドルは求められてないのかもしれない、と言った彼女は。
自分を呼ぶ声を聞いた。

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「……死んじゃうかもって思ったの」

そう切り出して、彼女はステージでの事を語る。

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「走馬灯っていうのかな、ああいうの」

ステージで、走馬灯を見て死んじゃうかもと感じたと語った。

かつて彼女は、なりたいアイドルになれれば死んでもいい、と言った。
かつて彼女は、もし死に場所を選べるのならば大きくて眩しいステージがいい、と言った。

優勝を果たした彼女は、WING決勝という大きく眩しいステージを、死に場所として選んでもいいかもと直感的に感じたと言う事だ。

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走馬灯の景色はほとんどがレッスン室だったのと笑う彼女。

人生の多くをそこで過ごし、人生の多くをそれに費やしたのだろう。

そのレッスン室の隅っこで、自分の名前を必死に叫ぶプロデューサーが走馬灯にもいたという。

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自分の名前を呼んでくれる人。
自分を応援してくれる人。
そんな『有り難し』事を当たり前のように、応援してくれる人。

そんな人に直接「ありがとう」と言えて良かった、と彼女は言った。

これは私の妄想で、過大解釈でしかないかもしれないが、彼女は自分の名前を呼ぶ声に気付いていながら、気付かないフリをしてたのかもな、と思うのだ。
ルカとのユニットでCDデビューまでしているのだから少なくとも応援してくれていた人たちはいたはずで、美琴もファンを悲しませる事は一番したくない事だと言っていた。
でもそのやり方だと、なりたいアイドルにはなれないから、その『自分の名前を呼んでくれる声』は聞こえないフリをして(実際にシャットアウトしていたのかもしれないが)ルカとのユニットを終わらせたのではないかと思うのだ。

彼女は「ごめんね、最初から聞こえていたの」と言った。

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彼女は言った。

まだスタートラインに立っただけだ、と。
WINGは通過点でしかない。

だからWINGのステージが"最期"ではない。
これから始まる物語が、たまたま今日というその日に幕を開けたにすぎない。

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「もっと早く、プロデューサーと……」

彼女はそう言いかけて、口をつぐむ。

14の時に夢を追いかけて飛び出し、人生の全てを捧げ、それでも報われぬ日々をただ積み重ねて来た彼女。

人の心を動かすために人の心が必要である……その簡単な事実を知った今日という日まで、渇望しがむしゃらに求め続けた10年という歳月。

もっと早くプロデューサーと……
続く言葉は『もっと早く出会っていれば』である事は想像に易くない。

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「……ううん、多分
 今だったんだね」

もし仮にプロデューサーともっと早く出会っていたとして。
もっと早く『アイドル緋田美琴』が成功していたとして。

今、目の前にいる『美琴』は在り方を間違えているのか?

断じて、否である。

狂気的なまでにストイックな彼女の練習量や、それを継続することは『有り難し』事であるし、10年という歳月や、それらによって形成された『美琴』という人間味、魅力は否定することが出来ない。

それが優勝という1つの結果として出ている。

だから決してその報われぬ10年は無駄ではない。

きっと全てが上手くいくために、『今』というのが選ばれたのだ。

『美琴』という魅力を構成する今までの轍の上に『今日という日』は成り立っている。


8,死ぬべくして死ぬ

彼女は、強く、しなやかで、美しかった。

そして決して芯を曲げず、愚直とすら言える誠実な心を持っていた。

それ故に不器用で、苦しんだところもあったろうと思う。

彼女のコミュで選択肢を選んだ後の会話が(他のアイドルと比べても)とても短いのが気になって、『彼女はもう既につよく美しい、きっとプロデューサーがかけてあげられる言葉はそう多くないのかも知れない』と思ったりもした。

彼女は才能があるし、アイドルでなくてもきっと何をやっても上手くいく。

むしろアイドルという道を選んだからこそ、たくさんの葛藤があったのだろうと思う。

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「でも、アイドルを選んだんだな」

でも彼女はアイドルを選んだ。


◇ ◆ ◇

残念な事に、彼女のユニット『SHIiS』のイベント『ノーカラット』では、美琴は人間味にまだ触れられてない。

人間味を帯びたパフォーマンスをまだ出来ていない。

そう物語が進行している以上、共通コミュで美琴という人間味が評価されている世界線は『if』であると仮定するのがいいだろう。

彼女はアイドルに死ぬほどなりたいと言ったが、やはりこのままでは彼女は死ぬべくして死ぬ。


9,あとがき

私は既に、緋田美琴に虜になっている。

彼女を応援したいと思うし、応援し続けたいと思う。

でもそれは、プロデューサーという語り手を通して、彼女の【人間味】に触れているからだと思う。

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▲あんま料理しないらしい、かわいいね

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▲家事あんましなさそう、かわいいね

やはり、彼女が有する素の彼女は、魅力であると思うのだ。

ただ難しいのは、人間の魅力というのは自分で理解出来るようなものでなく、他人が決めるものだと思うのだ。

自分では魅力だと思っている部分でも、他人から見たらそうでもなかったりしたりするもので。
逆もまたしかりで、自分ではなんとも思ってないものが他人から見たらそれが魅力的に見えていたりするもので。

それに通ずる話で、パフォーマンスで感動するのは、見ている人が勝手に感じる結果であり、受け手に依存しているということ。

感動させるぞ、と作為的にされたパフォーマンスで感動しないと思うし、むしろ作為的であることに気付いてしまうと観客は白けてしまう。
(お涙ちょうだい映画とかのそれ、ほら感動しろと鈍器で殴られている感覚になる)

だから受け手依存である【感動させる事】をゴールにするとそりゃ苦しいのは当たり前だよな、と思う。

素晴らしいパフォーマンスを見た結果感動するのは理解できる。
感動させるためにされたパフォーマンスではどうなの?という話


最期に『なんでも推しのキャラソンに聞こえる病』を発症しているので緋田美琴のキャラソンを紹介して今回の記事を締めようと思う。


[Alexandros] /Famous Day

Walking down the street
I lost myself
頭の中で こう もがいている
I try I try I try
届かずくすぶってる

Waiting for a light to shine this life
必ず報われると信じ切って
I tried I tried 灯り灯らずに腐った

I try so hard but
Lights go out
血眼になって唸っても
正解は見つからずに

「私」を探して
居場所を探し
追い求めて辿り着いた時に
夜が来て 見えなくなって

Coz I've been waiting for this very moment all this life
(私は今の今までこの瞬間という瞬間をずっと待っていた)

I'm never gonna give it all away
the world is mine
you never ask why
(手放すわけにはいかないんだ
この世界は私の物 理由なんて必要ない)

I'll make my day
until I could believe it's famous day
(最高の日にしてみせる
今日こそが"その日"だって確信できるまでに)

before I'm gonna throw this world away
(この世から消え去る前にね)

Walking down the street
I found myself
頭の中で弧を描いている

yes I know I know I know
I think I finally found it

「私を探して」居場所を探し
追い求めてた
あの日突然「答」見つかった

Coz you've been waiting for this very moment all your life
(君は今までずっとこの瞬間という瞬間を待っていたんだろう?)

You're never gonna give it all away
This world is yours don't u ever ask why
(手放してはいけない
この世界は君のもの 理由なんでどうでもいいから)

Take your chance
I wish you could believe in famous day
(この好機を逃すな
今日が"その日"だって確信できたらいいね)

Before u gonna kiss this world good-bye
(この世に口づけをして去る前に)

And I believe I'd be the king
Try to spread the wings
(王様にだってなれる 翼を広げるんだ)

Bring the ring
I'll never fade away
("あの指輪"を持ってきてくれ 俺は消えないから)

They say they hate my song
But I'm never ever wrong
(連中に嫌われたとしても
絶対に間違ってなんかないんだ)

Survive the days and fight until the end
(最期の日まで闘い生き延びてやる)

Coz I've been waiting for this very moment all this life
(今までずっとこの瞬間という瞬間を待っていた)

I'm never gonna give it all away
It's mine
(手放すわけにはいかない 私のものだから)

I'll make my day
I wish I could believe it's famous day
(最高の日にしてみせる
今日こそが"その日"だと確信出来るくらい)

I guess it's about to kiss this song good-bye
(そろそろこの曲にキスをして去る時がきたね)

アイドルの在り方に疑問を抱き、自身の在り方さえも求められてないのかもね、と言った彼女。
それでも歩みを絶対に止めない彼女。
アイドルとして生きていくと覚悟決めた彼女。

人生の全てを捧げた。
アイドルになれる"その日"のために。

◆ ◆ ◆

ここまで解説とも考察ともポエムとも言えない怪文書をご覧いただき誠にありがとうございますごめんなさい。
彼女の事をより深く知りたいと思っている方や、新しくシャニマスに興味を持ち始めた方のの助けに、少しでもなれれば幸いです。

にちかと美琴の記事を書いたので、これらを踏まえてノーカラットの記事を個別に書く予定です。
よろしければそちらもお願いします。

それではまたどこかでお会いしましょう。
ごきげんよう。

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