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樋口円香は燃え尽きない。

「トップアイドルなんて高望みしませんので。まあ、それなりに。」

結果がそれなりなら私はそれでいい、と彼女は言う。努力なんて無駄ですよ、と。

ドライアイスのように冷たい彼女は燃えない。

多少前後するかもしれないが、プロデュースコミュを上から順番に読んでいきたい。まだプロデュースしてない人は先に一回プロデュースしてみて欲しい。またこれは独自の解釈を含むので激しい解釈違いがあるかもしれない。また、親愛度ボイスやアイドルロードボイスのネタバレを含むことや、読みきるのに20分強はかかる怪文書であることも注意されたし。

0.夜に待つ

樋口円香が283プロダクションに顔を出したのは『幼馴染が所属になったプロダクションが悪さしないか調べるため』だ。幼馴染が誰を指すのか樋口円香は口にはしていないが、そのあとのプロデューサーが「ぜひ浅倉さんと一緒に!」とわざわざ浅倉透ひとりを指しているので、樋口のいう幼馴染は浅倉透でほぼ間違いない。

信用ならないプロダクションに入りたくないため、仕事が終わり、中から人が出てくるのを夜まで待っていた、という場面で始まる。彼女がプロダクションに警戒心どころかドス黒い嫌悪感すら抱いているのが読み取れる。


1.窒素、酸素、そのほか

そもそも樋口円香にとって、アイドルになる直接的なきっかけにもなった幼馴染、ひいては浅倉透とは。

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もう『空気』みたいなものです。そばにいるのが当然だし、楽だし、落ち着くし……

ホーム画面でおさわりが許される(?)親愛度8Lvでのボイスだ。樋口円香にとってそばにいる人というのは『空気』みたいな存在で、そこにいるのが当たり前らしい。普段私たち人間は呼吸していて、『空気』がないと苦しくなってしまうが、呼吸するたびに空気の存在をありたがったり感謝したりしない。あるのが当たり前だから。

樋口円香にとって幼馴染は、浅倉透は、無いと苦しくなってしまう、死んでしまうかもしれない『空気』みたいなものだが、その存在をわざわざありたがったり、言葉にしたりしない。


2.燃える人、燃えない私

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なにかに夢中になっている人、真剣になにかと向き合っている人、夢中になれるもののために努力を惜しまない人、情熱に燃えている人。

低燃費主義、樋口円香にとって『燃えている人たち』は理解し難い存在なのだ。

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『冷』めているように見える彼女だが、これにはおそらく理由がある。

おそらく彼女には生涯『燃えた』経験がない。やろうと思えばそこそこなんでも出来てしまう器用さと、本人自身がなにかに夢中になった経験がないことにも、真剣になにかに取り組んだ経験がないことにも、またそれらに焦りがなく、樋口円香本人がそれでいい、と思っていることに起因している。燃えた事がないので燃えている人たちの事がわからない。いや、わかろうとしていない。

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▲仕事では柔らかい表情を作ることも。彼女の公私切り替えの早さと器用さを感じる描写だ。

自分に個性が無いことを不安に思っているアイドルが放課後クライマックスガールズにもいたが、彼女はそのことに焦りを覚えていて、幾度となくその『チョコロード』を『迷走』していた。

樋口円香には焦りがなく、一種の諦めすら感じ、それでいいとすら本人は思っている。

冷めているように見える、というか実際冷めていて。プロデューサーはこれをクールだと言い表しているが、樋口円香に『燃えて欲しい』とも思っている。樋口円香の心に響くなにかを探しているのはそのためだ。

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そして宣材写真撮影の帰り、街中で絶賛『燃焼』中のアイドルの路上ライブと出くわす。

だが樋口円香はこれに強烈な否定感情を示す。「あんな愛想笑いは恥ずかしい」「技術がお粗末でも商売になる仕事」「笑っていればなんとかなる楽な商売」などと酷いものいいだ。

「そうじゃない、気持ちが重要なんだ。円香だって宣材写真の撮影は全力で、とてもいい笑顔で取り組んでくれたじゃないか」そうプロデューサーは樋口円香に言葉を投げ掛ける。

樋口円香は答える。

「気持ちも入ってない、必死で、全力で取り組んでもいない写真がとてもいい笑顔だったんですね(笑)」と。

やはりそこそこやるだけで十分ですね、と再び樋口円香は冷えきっていく。


3.熱源

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樋口円香は出会う。冷めている自分のファンという人間に。(ファン対応をなんなくこなす彼女に切り替えの早さと器用さを感じる場面でもある。)

「きっとトップアイドルになれます!」というファンの言葉。いわば期待を、熱を。直に樋口円香は受け取った。

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真剣に取り組んでいる訳でも、全力で努力している訳でもない私に?という気持ちが先行する。

それでもわからないなりに、樋口円香は熱を帯び始める。

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努力なんて無駄、そこそこで十分。そんな冷えきった低燃費主義の彼女は、燃え始めていた。予定のない日にレッスン室を借りるほどに。背負った期待には応えなくては、という彼女本人の気持ちだ。

結果、前述の樋口円香を燃やすなにか、心に響くなにかとは『ファンから受け取ったその熱』だった訳だ。

コミュタイトルであるバウンダリーとは境界線のことだ。ここまでの樋口円香とこれからの樋口円香に境界線を引くならば、ファンからの『熱』を受け取ったこの瞬間だと思う。

これは余談だが、2周年衣装の衣装ポエムが「これからよろしくね!」とかなり読解と解釈に苦しんだが、おそらく『冷えきっていた今までの私』と『生まれて始めて燃えるこれからのアイドルとしての私』の挨拶だと(ほぼ無理矢理)解釈した。新しい衣装に身を包んだ、アイドルの新しい私への挨拶だと。(また、これからアイドルとしての道を一緒に歩んでいく衣装へ語りかけているとも私は解釈した。こっちのほうがそれっぽいかもしれない)

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▲物議を醸している「これからよろしくね!」。     浅倉に適当に決めてもらった説とかもあるらしい


さらに余談だが、幼馴染の中に、訳あって努力していることがバレないように、人知れず努力している子がいる。が、樋口円香はこれに気付いている節がある。これは次に登場する『二酸化炭素濃度』のためだと思われる。

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小糸にだけあまあまな円香……。


4.燃焼、二酸化炭素、水、灰。

燃えているものは、空気とその身体を燃やしている。

それが燃え尽きた時。その身を燃やしてきたこと、努力してきたことが報われなかった時。

灰になって消える。

オーディション控え室で他のアイドルと同室になった時の事を樋口円香は語る。

まだ結果も出ていないのに、「失敗した、情けない」と大声で泣き出す子もいて居心地が悪かった、と。

しかも控え室で泣いていたその子とは、以前街中でプロデューサーと一緒に見かけたアイドルだったらしい。

努力しても、全力で取り組んでも、その身を燃やしても、報われない。そういう世界があることを目の当たりにした。そう樋口円香は言った。

化学の話にはなるが、『有機物の完全燃焼』について触れておきたい。

有機物が完全燃焼すると、『二酸化炭素』が発生し、『水』が残る。

これを今のコミュに当てはめる。

燃えている人たちというのは、その身を燃やして『二酸化炭素』を撒き散らしている。これは酸素を使っている、いわば空気を使っているので必然と周囲の人間というのは息苦しくなっていく。

そして、これ以上燃焼が出来ない、頑張ることが出来ない、心が折れて燃えることが出来なくなってしまうと『水』、つまり『涙』となって現れ、燃え尽きて『灰』になってしまう。

燃え尽きた後、残るのは『涙』と、これ以上燃えることが出来ない『灰』だけだ。

オーディション控え室は燃え尽きた人たちばかりで、空気が薄く二酸化炭素濃度ばかりが高かった。だから息苦しく居心地が悪かった。樋口円香が言いたいのはそういう事だ。

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▲『二酸化炭素濃度の話』


また、樋口円香が、浅倉透のそばにいる理由も『空気』と『二酸化炭素』。ここにあると思う。

浅倉透は先も見えず、終わることのないジャングルジムを人生に例え、人生は長くて退屈だと言う。ただ惰性でなんとなくで生きていた浅倉透は、『燃えていない』。燃えていない人は空気を浪費しない、二酸化炭素を出さないから、そばにいても苦しくならない。前述の通り、樋口円香にとって浅倉透とは『空気』そのものだ。

浅倉透の隣は樋口円香の居場所だったのだ。その浅倉透をアイドルにして、樋口円香の居場所を奪ったのは紛れもない、283プロダクションとそのプロデューサーだ。

樋口円香は居場所である浅倉透を283プロダクションに、プロデューサーに奪われることを恐れている。浅倉透とプロデューサーが仲良くすることを良しとしない。彼女が283プロダクションとプロデューサーを悪者にしようとしているのはそういう理由だと推察する。

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▲浅倉透とプロデューサーのツーショット写真を見て、憤る樋口円香。


話が逸れた。


『二酸化炭素』と『涙』と『灰』が蔓延するオーディション控え室を目の当たりにした円香は思考せざるを得ない。

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「本当に私が合格するって思ってます?」

確かに、全力で取り組んで努力しても燃え尽きた人たちを目の当たりにして、いわば『してきた努力が無駄になった人たち』を目の当たりにして、不安に思っても仕方ない。

またこの問いには、私は合格してないのでは?というニュアンスも含まれる。

まあ、仮に私が燃え尽きたとしても、私が『涙』を流すことはないでしょうね。そう彼女は言う。


後日、樋口円香の気持ちとは裏腹に、このオーディションに合格した事が通知される。

全力で取り組んで、努力して。それでも届かなかったアイドルがいる。それならば。

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『勝ち負けは気持ちの問題じゃない。』

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『気持ちが重要』とあなたは言ったけれど。

違いますか?

このオーディションには『単純に技術で勝っていて合格した場合』と『熱意がより大きくて合格した』場合がある。

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樋口円香が全員合格したのを疑ったことや、「本当に私が合格していると思いますか?」という問いからわかるように『技術か気持ちで他のアイドルに私は負けていたのにも関わらず私は合格した』と樋口円香自身が考えている事を推察できる。
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▲自分は合格してない、他のアイドルに負けていると思う、と言う樋口円香

このオーディションで重要だったのは技術であって、気持ちではない事が合否で証明されている。(必死だった他のアイドルが落ちているため)つまり合格した樋口円香に足りていないのは技術ではない。

ならば。

樋口円香に足りていないのは気持ちの方だ。彼女にはその自覚がある。

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▲両方兼ね備えているのが”アイドル”らしい


5.ころびかた

ならば樋口円香はどんな気持ちで仕事やオーディションに挑んでいたのだろうか。

彼女はこう語る。

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「この先いつかダメだった時が来て、自分の限界を知る。背負った期待に応えられなくて、いままでの努力が無駄になって。そんなの私は……」

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「怖い……」

樋口円香は燃えたことがない。

挫折の経験がない。壁にぶち当たった経験がない。転び方を知らない。転んだ時また起き上がる術を、知らない。

樋口円香は、転ぶことを恐れていた。

いままでの努力が、全てが無駄になることを恐れていた。

期待なんか背負いたくないのは、応えるための努力が出来ないからだ。必死になれないのは、必死になったことが無駄になることを恐れているからだ。

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▲この小さくついた息は、してきた努力が無駄にならなかったことへの『安堵』ではないかと思う。

オーディションというのは0か1だ。合格か、そうでないか。不合格ならば、合格するためにしてきたこと全てが、無駄になる。わかりやすく結果が出るそれは、自分を、自分の身の丈を測っている。だから、怖い。

つまり、樋口円香は合格するためにオーディションを受けていたわけではない。

不合格にならないように。

ひいてはそのためにしてきた努力すら、無駄にならないように。積み重ねてきた物が無駄にならないようにしてきたことだ。

心臓を掴む。心臓。

つまり、樋口円香の核。樋口円香の底にあったもの、樋口円香の生き方はそういう生き方だ。努力が報われなかった時が怖いから、真剣に努力はしない。そういう生き方。

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▲泣くほど、私はなにかに必死になることができない。そう言っているように聞こえる。

「本当に私が合格していると思いますか?」

これは彼女自身がマイナスの気持ちを自覚していて、こんな気持ちでは他のアイドルに負けている、と。そう言っている。

当たり前だ、受かるために受けているわけではないのだから。


プロデューサーは1つの解答を出す。

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円香が望めば、たとえ転んでもまた起き上がることが出来る。

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してきた努力を無駄にしないために、努力をしてきた。

無駄になるかもしれない、その恐怖とずっと戦いながらも努力し続けてきたのは、他でもない樋口円香本人だ。彼女本人の力だ。

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▲後述の『あなたのせい』『円香のせい』にも繋がってくる。円香本人の力。

彼女は、転ばないように、たとえ転んでも痛くないように生きてきた。

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いままでの努力が無駄になって、積み重ねてきたものが全て崩れ落ちて、転んでももう起き上がれない時は?

これを避けて生きてきた樋口円香は聞かざるを得ない。この問いの解を、彼女は持ち合わせていない。

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「円香が諦める勇気を持てるまでそばにいる。」

樋口円香は、してきた努力を無駄にしないために努力をしている。

それでも、もう無理だと。

積み上げたきた物を自分の手で崩す勇気を持てるまで。そばにいる。

燃え尽きる時は。

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一緒に燃え尽きよう。

そうプロデューサーは、樋口円香に言う。

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してきた努力は無駄にはならない。

それを私に信じさせてください。

そう言って樋口円香の、生涯初めての『前に進むための努力』がスタートする。

これは前に進むための、飛ぶための。


6.誰が為に

WING出場が決定した。もう転んでもただじゃすまない。大怪我間違いない。

転んでも痛くないように生きてきたはずだった。こんなはずじゃなかった。焚き付けたのはあなた、プロデューサーだ。

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だからいままで積み上げたのはあなたのせいだ。ファンから受け取った熱が伝染したように、プロデューサーからも熱を受け取っていた。

だけど、してきた努力を無駄にしないために努力をしてきたのは樋口円香本人だ。樋口円香がここまで積み重ねてきた。

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そう、樋口円香本人の力だ。

樋口円香がこのハードルを越えたいと願えば、越えられないハードルはない。そのための努力が出来る人だ。

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努力を止めなかったのは、前に進もうと樋口円香が自分で決めたこと。

樋口円香にとって283プロダクションとプロデューサーは悪者だ。自分から浅倉透と、幼馴染たちと、居場所を奪った悪者だ。悪者のほうが都合がいい。


ただの悪者であれば良かったのだ。

優しいところ、気が回るところ、そばにいてくれるところ、全て全て。

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7.完全燃焼

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細かいが、これは準決勝前の緊張感が伝わらないように樋口円香に配慮したプロデューサーのシーン。これは、樋口円香が『空気』に重きを置いているため、空気感から緊張やその他を読み取ってしまうためだと思う。

だが、樋口円香はプロデューサーの隣を選んだ。一緒に大泣きしてくれる人がいなければいけない。燃え尽きる時は一緒だと言った。ここでないといけない。

ライブが始まる前に樋口円香はこう言ってくれる。

『いってきます』、と。

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ならば送り出す言葉は決まっている。

準決勝からは勝ち進んだ場合と、負けてしまった場合でコミュが分岐する。

・敗退コミュ『風穴』

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「……飛べなかった……でも……飛ぼうとした……ふふ…この感覚……この……感覚……」

wing優勝というゴールにたどり着けず、積み重ねてきたものが崩れ落ちる。生まれて初めての『前に飛ぶための努力』が崩れ落ちる瞬間。恐れていたその瞬間にあった感情は想像していたものとは違い、ずっと探していたかのような『この感覚』だ。燃え尽きるのニュアンスが違うが、この清々しいようなこの感覚は一種の燃え尽き、と言えなくもない。

もしかしたら樋口円香はずっと必死になれるなにかを探していたかのしれない。求めていたのかもしれない。『涙』を流すほど真剣になれるなにかを、『水』を、『水分』を無意識のうちに求めていたのかもしれない。

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▲様々なコミュで水や飲み物を求める樋口円香。3枚目は朝コミュの選択肢だが、正確は『飲み物とか』。

敗退した夜、事務所で樋口円香は語る。

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「冷静に考えてみると、私がアイドルなんてあり得ない。なんでそんなものに挑んでいたんだか…ふふっ」

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「でも、冷静になるまで気付かなかったってことは。ねえ、どういうことだと思います?」

冷静になる。頭を冷やす。出会った頃、冷えていた樋口円香が再び冷えるまで気付かなかった理由。

それは文字通り『熱』に浮かされていたのだ。ファンの、プロデューサーの、そして燃える自分の炎の熱で。

熱意は伝染する。

コミュタイトルの『風穴』。これは人生初の、WING優勝のために前向きな努力をした樋口円香の心に、ぽっかりと空いた穴だ。これを埋める事が出来るのはWING優勝した時だけだ。

プロデューサーと樋口円香は再出発を誓う。樋口円香は、まだ燃え尽きていない。

・決勝進出コミュ~決勝

決勝戦進出を決め、プロデューサーの所に戻ってくるや否や、「喉か渇いたので飲み物をもらいたいのですが」と樋口円香は言う。プロデューサーから受け取った水を飲み込むがむせてしまう。

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アイドルマスターシャイニーカラーズの事を信用しているので、無意味なコミュなどないと思っている。思っているが、この水をむせてしまうシーンのしっくりくる解釈が出来なかった。しっくりくる解釈があれば教えて欲しい。

『人生で一番燃えている、炎と言っても過言ではない樋口円香が水を含んだから』では?と無理矢理解釈したがいまいちしっくりきてない。様々なコミュで水や飲み物を求める事を踏まえてもなにか意味があるのでは、と勘ぐってしまう。同じワードを複数回使うのは強調の常套手段だ。(浅倉透でいうセロハンテープ。あれも2回登場するが解釈が難しい)

そして迎える決勝戦。

ライブ前いつものように樋口円香は、いってきます、と言う。プロデューサーもいつものように、いってらっしゃい、と返す。ここ一番の大舞台に、人生を大きく変えるかもしれないこの大舞台に旅立つというのに、もっと強く送り出さなくていいのか、と樋口円香は訪ねる。

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「……ま、これで最後じゃないからさ。気楽にいこう、いつも通り。」

WINGに優勝しても、たとえ負けてしまっても終わりじゃない。だからいつも通りで行こう。ちなみに「いつも通りで」はノーマルオーディション前のコミュ選択肢でもある。プロデューサーも、決勝戦前だろうといつも通りである。

それに気付いているかどうかは定かではないが、樋口円香は「何それ──最低。」と言うのだがこの「最低」の言い方がとても優しくて、めちゃくちゃ良い。是非とも聴いて欲しい。聴いて欲しい。

そして迎えるフィナーレ。

見事優勝を飾る樋口円香。優勝したというのに淡々としている樋口円香とは対象的に、感動のあまり『涙』するプロデューサー。

ハンカチ貸しましょうか、と樋口円香はプロデューサーに言うが、プロデューサーは「ハンカチは円香が使ってくれ」と言葉を返す。

樋口円香は、私にはハンカチは必要ない、と微笑む。

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泣かない樋口円香の代わりにプロデューサーが泣く、というシーン。これも繰り返す事で強調されているセリフだ。もともと泣かない理由は、泣くほど必死になってないからだったと思うが、これは理由が変わっていると思う。

これは樋口円香がWING優勝という大挙を成し遂げたにも関わらず、彼女がまだ『燃え尽きていないから』であると考える。

これは前述のプロデューサーの「これで終わりじゃないからさ」に通ずる所があると思う。アイドル樋口円香はまだここから燃えていく。そう本人も感じているのだ。(まだ実装されたばっかだしね)

8.支燃性

『努力を無駄にしないための努力』から『前に進むための努力』に変わり、結んだ結果といまだ治まることのない熱意と炎。

初めて自分のための努力をして、初めて前に進むための努力をして勝ち取った、初めてのこの気持ち。きっと燃える事を怯えていた臆病なあの頃では想像もつかなかっただろう。

普段ありとあらゆるボキャブラリーと、巧みな言い回しを駆使しプロデューサーを罵倒する彼女からは想像出来ないほど、初めての感情を表現するのが上手くない。

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そして最後に樋口円香はプロデューサーのことを初めて「プロデューサー」と呼ぶ。

これは樋口円香が、悪者であったはずのプロデューサーの事を認めた、という描写だと思われる。が、これは彼女の確認作業にすぎない。というのも、彼女が「283プロとプロデューサーはただの悪者じゃない」と自覚したとっくの昔の時点で既にわかっていることだ。樋口円香自身が考えを改めればいいだけでわざわざ言葉にする必要がない。(むしろプロデューサーに茶化されそうだよね)

それを最後の最後に、ただ一言。付け加えたのだ。確かにコミュタイトル『蛇足』の通りではあるが、これを余計なものだとは私は思わない。

さいごに

他にも『空気』が支燃性である事や、サポートコミュにも触れていきたいが、今回はここで一段落とする。

Pカップ円香金称号を諦めた夜に贖罪のような気持ちで書き進めた本文であり、考察というには感情が乗りすぎていて、解説にしては内容がなく、読みづらい。完全に勢いだけで進んだこの長いだけの稚拙な文章をここまで読み切っている人間がいるのか疑問に思う。もしそんな人間がいれば感謝しかない。申し訳なさも少しある。

また、「noctchillは4人ユニットだが、2人組のペアにも注目して欲しい。」と公式から直々に言われている。本文では樋口円香と浅倉透の関係について多く語ったが、他のカプ……ではなくペアの関係性についても、今後の展開に注目していきたい。

とおまどリバ、まどこい、とおひな、ひなこい……。なんでも美味しくいただけますね







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