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俵万智「情けは人の・・・」考 ~Microsoftのソリューションを活用して~(iPadにしか見えないのはご愛嬌)

今回は高等学校現代文B(大修館書店等)の教科書に採択されている
俵万智さんの「情けは人の・・・」についてです。

情けは人のためならず

「情けは人のためならず」の意味として正しい方を選んでください。
A)人に情けをかけるとその人のためにならない
B)人に情けをかけるのはその人のためではない

少々意地悪な設問にしていますが、正解はBです。
情けを人にかけるのはその人のためではなく、因果応報的な理屈で結局は自分自身のためになるという意味です。
極めて仏教的な考え方であるがゆえ、仏教色が薄い現代社会の若者には馴染みが薄いように思われます。

文化庁国語課 H22調査

文化庁国語課が実施している「国語に関する世論調査」によると、平成22年時点の16~19歳について、誤用を選択した割合が50%に達しているのです。
これはもはや「誤用」というよりも、一定の意味変化が生じているように思えます。


俵万智が「情けは人の・・・」において語った立場


「情けは人の・・・」では日本語の「誤用」を巡って、歌人である俵万智さんが自身の考えを高校生にもわかりやすく伝えてくれています。
簡潔にまとめますと、「有意味な誤用、誤用発生の理屈が合理的である誤用についてはある程度認めてもよいのでは?」となります。
また、「情けは人のためならず」の誤用についても、「因果応報といった仏教的な観念が薄れている現代社会が逆説的に誤用の背景となっているのでは?」としています。

誤用が発生しそうなことわざ、四字熟語等の調査

ここからがICTの活躍の場となります。今回は一人一台のWindowsマシンを用いて、生徒に調査を実施してもらいました。
その上で、Formsを用いたミニテストの作成とその解き合い活動を行いました。
思いの外、誤用が身近なところにあふれているといった気づきが得られたほか、「本当の意味を知ってしまったら、安易に言葉を使えなくなる」といった感想を得ることができました。

例)「確信犯」

誤用に容認?否認?生徒の立場は?

クイズ作成→解き合いっこ→まとめ
この流れでもよかったのですが、せっかくの学びが薄く終わってしまうように思われましたので、もう一捻りです。
ズバリ、日本語の「誤用」に対して、生徒各人の立場を問う活動を行いました。

日本語の誤用について考える上で必須となるのが、長きにわたって日本語の単語の意味には変化が発生しているという事実を認めるところから始まります。
そこで、Word2vecを用いた形容詞の意味変化についてクラス内で共有することとしました。引用参考資料は近藤泰弘先生の研究紹介ページです。

『源氏物語』内のシク活用形容詞から約1000年後の現代語形容詞(シイ形)のそれぞれの意味変化についてわかりやすくまとめてくれています。
ここでは非常に面白い結果が得られているのです。

簡単に言うと、現代語の形容詞ではその意味の守備範囲が格段に拡がっているといったところでしょうか。より正確に言えば
「『主観性』に関わる意味体系の語形の変化」となります。

生徒は先行研究の一端に触れた上で、卑近な例も交えながら、誤用に対しての立場を明確にすることとなります。
最終的にはPowerPointを用いたプレゼンテーションを行い、本単元は終了予定です。
2学期中間考査までになんとか活動しきれるように、生徒の皆さんには頑張ってもらいます。