プレゼンが苦手だった僕が(精神的に)プレゼンを克服した話
この記事を書こうと思った理由
僕のように、人前で発表するのが苦手だけど「もっと上手くプレゼンできるようになりたい!」と同じような悩みを持っている方が一人でも参考になればと思い、今回記事を書いてみました。
「お前の発表は、つまらない」
僕は昔から人前で発表するのは苦手でした。人と話すこと自体は嫌いじゃないですし、むしろ自分の好きなことなら「たくさん語りたい!」と思うようなタイプなのですが、プレゼンで人前で発表する、みたいなことがどうしても苦手で、他の人みたいに上手く発表できずに悩んでいました。
話は少し変わりまして、僕はゲーム開発者なのですが、 2023年9月16日に行われた Google インディーゲームフェスティバル2023で、自分のゲームについて5分間の発表する機会がありました。
このイベントはざっくりいえば、自分の作ったゲームについて、その魅力を審査員にアピールして TOP3 を競う、というものです。
最初は僕も「他の発表者の人みたいに、カッコ良くものすごいプレゼンをして、TOP3を目指して頑張るぞ!」と思ってました。
しかし、いざプレゼン資料を Google Slides に作って、発表の練習をして、動画などに撮ってみても、全くダメダメでカッコ良くなくて、上手く喋れてなくて、プレゼンの内容もつまらないものになってしまっていました。最初、動画見たときに「え!?なんでこんなに他の人よりもカッコ悪いの!?」と驚愕しました・・・
最初に自分なりになんでダメかを分析したところ:
滑舌が悪く、早口
プレゼンの内容に一貫性がなく、面白みがない
内容が薄く感じる
というものでした。
ちょっとさすがにこれだとマズイと思って、色々なサイトで発表の仕方やプレゼン資料の作り方を調べたり、過去のプレゼン発表者の動画を参考にして、以下の点を気をつけてみることにしました:
堂々と、ゆっくり大きな声で喋る
間をしっかり取って話す
一貫したテーマを持たせて発表資料を作る
テーマに沿って肉付けをしていく
これらのことを気をつけて、何度も発表資料をブラッシュアップし、発表練習を繰り返しました。
友人や職場の方々にも練習に付き合ってもらって、一応それなりの形になって、そこそこ一貫したテーマで、面白いポイントもつけられて、喋り方もまぁなんとか聞けるレベルになったのですが、自分の中ではどこかモヤモヤしていて、もっと上手く面白く伝えられるんじゃないかと思ってました。
それから、一緒にゲームを開発していたメンバーにひとまずの完成版を発表して聞いてもらいました。
正直、自分ではこの発表が面白いのか、良い発表になっているのか、もはや自己判断が出来てない状態でした。
発表が終わったあと、メンバーの一人から
「すみません、kohei さん。つまらないです。全く面白くないです。」
と言われました。
ちょっと驚きました。
普段はなにかを強く批判するような人ではなく、むしろ相手の良いところを見つけて褒めてくるような人だったからです。
何が悪かったのか?
その後、そのメンバーから「いつもの kohei さん通りに発表していいんですよ」と言われました。それを最初に聞いた僕は「そんな訳ないじゃないか!もっと他の人の発表を参考にして研究して、もっと上手く発表しなくちゃいけない!」と思いました。
でも次の言葉にはっとさせられました。
「光の kohei を演じようとしている」
ちょっと字面だけだと意味が分からないかもしれませんが、その当時の僕には衝撃が走りました。今回 Google インディーゲームフェスティバルという大舞台。そこでいかにカッコ良く、面白いプレゼンをできるかが勝負。そう思ってました。そうしないといけないと思ってました。
この大舞台に合わせた誇大なプレゼン、偽物の自分を作ろうとしていたんですね。
また「多少早口になってもいいじゃないですか。他の人と合わせるよりも、自分らしく自然と話したほうが、むしろ個性の1つになりますよ」とも言われました。
要するに僕は
自分の滑舌の悪さや早口であることにコンプレックスを持っていた
大舞台に合わせた誇大な偽物のプレゼン資料を用意していた
大舞台に合わせた誇大な偽物の自分を作ろうとしていた
んですね。
たしかに、改めてそれまでのプレゼン資料を見てみると、「僕のゲームってこんなにすごいんですよ!」「僕のゲームって面白いでしょ!」みたいな意図があるように見えて、さらにそれが今回のイベントのために無理やり捻り出したような内容のものが多いように見えました。
じゃあどうすればいいか?
結論は「いつも通り考えてることを、いつも通り話せばいい」であることは間違いないのですが、これは自分の中で納得するには時間がかかりました。ただ、今回のイベントがインディーゲームイベント、ということもあって、自分を納得させることは実は難しくないことに気づきました。インディーという言葉を聞き慣れない人向けに説明すると、インディーの文化では、クリエイター自身の個性や作家性が重んじられていて、それこそが、インディーであることの意義として、評価される傾向にあるのです。つまり、いつも通りの自分をさらけ出して、それで面白くないと言われるなら、それは実際に面白くないから仕方ない、と思ったのです。
大事なのは、普段、頭の中だけで考えていることをちゃんと言語化して、それを整理して、どう表現して、プレゼンに落とし込めるか、というところだと気づきました。
もちろん、それまでのプレゼンの作り方でも似たようなことはしていたのですが、前提として「この大舞台にふさわしい面白い発表にしなければならない!」という縛りを入れてしまっていたのです。
「面白くなくても、この大舞台にふさわしくなくても、自分の等身大の伝えたいことをしっかり丁寧に伝えよう」と思いました。
滑舌や早口であることは、何を言っているかギリギリ分かる程度に収まるようにしようと思いました。
自分の等身大のプレゼンをする
等身大の自分の発表でいいんだ、と思えてからは、プレゼンの骨子を作るところはまではすんなり終わりました。その後も開発メンバーや自分のパートナーからもフィードバックをもらいながら、ブラッシュアップを続けていきました。
最終的に自分の正直なこのゲームに対する思いや内容を、素直に紹介できたプレゼンが完成したと思えました。
ただ「後もう一つ、何かが足りない・・・」と思っていました。そんなときに、メンバーの一人から「『未来への期待=ワクワク』をテーマにするなら、実際に聞いている人にもワクワクさせるページがあったほうがいいんじゃないですか?」と言われました。
ちょっと補足すると、今回のプレゼンでは「未来への期待=ワクワク」というテーマで資料を作っていました。資料の中ではたしかにワクワクを大事にしていることは伝わっても、具体的にどうワクワクするかはよく分からないようになってしまっていました。
そこで、実際にゲームを遊んである程度ハマってくれたプレイヤーが聞いても、「あ、こんなことが起こるんだ!」と言ってワクワクできるようなページを追加することにしました。
このページは結論からいうと、本番でも会場が「おぉ・・・」となり、審査員の方の質問にも、ここを言及したコメントなどをいただくことが出来ました。
最後のブラッシュアップも終わり、プレゼン資料の提出の締め切りになり、満を持して資料を提出しました。
本番でのプレゼン
本番は渋谷ストリームで行われ、発表者の全20組中の16番目という後ろのほうの発表でした。
緊張とかはしないと思っていたのですが、いざ本番になってみると体が固くなっているのを感じました。
ストレッチをしたり、深呼吸などをしたりして、体の緊張をほぐしたりしていましたが、一番自分の支えになったのは「いつも通りの kohei さんで話せばいいですよ」という言葉でした。
自分のプレゼンの時間が来ました。
会場はさほど大きくはないですが、会場の真っ白な強いライトが視界を覆って、体をこわばらせました。目の前には審査員の方々がずらっと並んでこちらを見ていました。
司会の人がプレゼンを始めるように合図をしました。
プレゼンが始まってからはむしろ気持ち的には少し楽になりました。いつも通りそのまま話そうと決めていたので、いつも通りそのまま話しました。いざ終わってみると、やはり緊張して早口になっていたのか、5分よりもだいぶ早く終わってしまいました。
後から自分の動画を見返してみると「うわ〜〜〜!めっちゃ早口だ😂」と思いましたが、ギリ聞き取れる範囲内でいつも通り話せていたように見えました。
プレゼンが終わった後は10分間ほどの審査員の方々からの質問タイムがあるのですが、こちらも改めて動画で振り返って自分の応答を見てみると「質問と全然違うこと答えてる!!!もっとちゃんと答えてくれ〜〜〜」となりましたが、一応自分が思っていることは伝えることが出来たのかなとは思いました。
当時の動画を改めて見てみると、やはり全然カッコ良くないし、早口だし、滑舌悪いし、発表内容自体もめっちゃ面白い感じでもないし、と思いましたが、でも何よりいつも通りの自分で話すことが出来たなとは思いました。
審査員からの質疑や授賞式のときのコメントを聞いても、ちゃんと「僕が言いたかったことが伝わっているな」と思えました。
賞の結果でいうと、本当にありがたいことに TOP3 をいただくことが出来ました。TOP3 の受賞者コメントのときは、これまで一緒に頑張ってくれた仲間や友人たち・パートナーのことを思い出して、思わず泣いてしまい、本当は感謝の気持ちを伝えたかったのに、何も喋れなかったのが悔しかったです。
結論
プレゼンは presentation = 表現・提示・紹介のことで、なにか紹介するものがあって初めて出来る行為です。
今回のプレゼンでは自分のゲーム、それと開発者自身についてプレゼンをすることを求められていました。
今回は自分のゲームと自分自身について見つめ直し、考え、それを言語化し、整理し、提示することができました。
別に今回のことで特別にプレゼンが上手くなった訳では決してありませんが、今後は発表の場に合わせて自分やゲームを偽り誇大に表現するのは止め、等身大のままに、自分を恥じずにそのままを伝えていこうと思いました。
もしこの記事が、同じ悩みを持ったどなたかの役に立てたなら幸いです。
終わり
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