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オーストリアのコーチ資格制度

オーストリアのアルペンスキーコーチの資格はDから始まり、C、B、Aとレベルアップしていきます。ちなみにこちらでは「トレーナー」がコーチの意で、DトレーナーやCトレーナーという呼び方をします。

コンディショニングを担当するいわゆるS&Cコーチは「コンディトレーナー」と呼ばれ、AT,PT領域の人は「フィジオ」と呼ばれています。

以前はCトレーナーから受講することができましたが、今はDトレーナーを取らないとCトレーナーを受講することはできません。ですので私もDトレーナーからスタートし、COVID19の影響で卒業試験だけを残して中断されている状況です。

ちなみにDはジュニアをメインとした内容、そして基本的なスポーツ科学。Cは実践的な技術や戦略的な部分、より高度な内容。そしてなんとBトレーナーはナショナルチームのグループチーフを経験しないと受講できないという資格になっています(オーストリアなどの強豪国は人数が多いので種目やレベルに応じてグループ分けされています)。

Aトレーナーに関してはだれがどうしたらなれるのか良く分かりません。

オーストリアスキーチームのコーチは基本的にCトレーナーを全員取得しています。また、Cトレーナーの教官、試験官の資格を持っている人も沢山います。なのでグループ内でCトレーナー受講時の先生と生徒が一緒に働いているなんてこともあります。

コロナによってスケジュールが遅れCトレーナーの受講が難しいので、私のグループのCトレーナーの教官に日々教わってます。大変ありがたい環境だなぁと感じる日々です。では実際にトレーナーコースがどんな流れなのか紹介したいと思います。

Dトレーナーコースはまず雪上にて試験があり、GSゲート滑走、フリースキーを圧雪、非圧雪コースでそれぞれ行い、これに合格すると受講することができます。Dトレーナーの受講は基本的に無料で、教材費として100ユーロ支払います。雪上での授業の際はリフト券や食費など都度かかる経費は各自支払いといった形です。

実際の内容としては

3月テスト 午前午後 1日

4月 第1回 雪上実技 座学 10日間

6月 第2回 コンディショニング実技 座学 5日間

10月 第3回 コンディショニング実技 座学 3日間

翌年4月 第4回 中間試験 雪上実技 5日間

最終試験 雪上実技 指導実技 テスト
(州代表以上のチームで5日間の研修と消防署でファーストエイド講習の受講を行い、それぞれの修了書の提出が最終試験に必須になります)

といった形で、年間で約25日ほどの拘束になります。思ったより長いと感じるのではないでしょうか。

しかし、講義の内容はかなりしっかりしていて無料で受けれるクオリティではなかったです。素直に驚きました。私は早稲田大学でスポーツ科学を勉強していたので復習のような内容も多かったですが、ちゃんとした先生が毎回来てくれてスポーツ科学の基礎を叩き込んでいました。特にバイメカではスキーに特化した内容をフランクフルトの大学の先生講義がかなり面白かったです。
そして実技ではスクワットからオリンピックリフトまでウェイトリフターの先生がきてみっちり指導してくれました。

つまりオーストリアでは初期のコーチ資格の段階で、スポーツ科学(教育学、解剖学、生理学、バイオメカニクス、心理学、哲学)そしてスキー技術、練習法、コンディショニングの基礎基本などを早足ではありますが一通り勉強するということになります。

さて、私はこのトレーナーコースの制度、内容、これらが意味するところを我々は考えなければいけないと思います。
オーストリアでは地域や学校、クラブチームで教えているコーチは一通り上記の勉強をしてきていて、ある程度の知識を持った状態で指導をしています。幼少期やジュニア期はコンディショニングもスキーコーチが指導しなければいけないと思いますが、体の仕組みから運動生理、指導法まで学んだコーチが指導をしています。
10-12歳からプラスチックの重りでヒップヒンジやスクワット、リフティングの動きを学び始め、高校生の年代からはしっかりとしたフォームでウェイトをガンガンやることができるし、ノルウェーではなお早い段階で始めているとのことです。

ワールドカップでの他国の表面的な技術や体の大きさを模倣する前に、その国でなにが行われていて選手が育ってきているのか、指導者はどういう取り組みをしているのか、指導者の養成に国と連盟はどういったことをしているのか、こういった部分を知り日本ではこれからなにをすべきか考えていかなければ強豪国への道は難しい気がします。

その一助になれるよう私も日々勉強していきたいと思います。

河野恭介

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