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エアコン

本格の暑さ来たらむ前に、エアコンの掃除をせり。クリーニング用のスプレーを家中のエアコンに吹きかけ、フィルターもことごとく洗ひぬ。やうやうエアコンの古びたること気にかかるものの、清らかにすれば使用には障りなし。

前回エアコン掃除せしは、七年以上昔のこと。エアコン掃除の業者を招きて、掃除の終はりに、

「これだけの汚れ出でました」

とてバケツの水を見せられき。真っ黒に濁りたる水なり。
我、

「わあ、すごきことかな!」

と驚けり。かく汚れたるとは知らざりき。
やはり業者を呼びて良かりけりと思ひぬ。

しばらくして、この業者は毎回この「汚れたるバケツの水を見せる」ことをなすと気付きぬ。
なほ、もう一台のエアコン掃除終はりて、また、

「こんなに汚れ出でました」

とバケツの水を見せられき。

「わあ、すごきことかな」

と大げさに驚く我。
茶番なり。


三台目のエアコン掃除終はりぬ。

「これだけ汚れ出でました」

「わーお」

なんぞ、このロールプレイは。

エアコンの掃除、どこを洗ひたるか見えにくし。依頼者には「きちんと洗ひぬ」と証明するために「バケツの水」を見せるならむ。しかし、三度も同じことされて、さすがに辟易しぬ。エアコンきれいになりたるも、なんだか気疲れして、それより業者呼ばざりき。

かくて、フィルターのみ洗ふばかりして、そのほかは放置したるまま使用しけり。今年、やうやく我が手にて掃除しぬ。よく見るに、真の内部はまだ完全に清からず。されども、九割方は新品同様になりぬ。だいぶましなり。七年の間に、便利なる商品普及せり。スプレー一本分吹きかけるに、内部の汚れ、排水ホースより出で行く。

すでに梅雨のごとき空。心地良き五月は去らむとす。憂鬱なれども、エアコンの清きは救ひなり。

さることながら、ひとつ忘れぬ。 排水ホースにバケツをあてがへばよかりけり。

バケツの水、見たかりきなり。

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