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国語力の出発点に迫る!我々の「読む」はどうやって形成されるのか?

あなたは今、
文章を読むときに音読をしていますか?

おそらく、
ほとんどの人がしていないと思います。

しかし、幼い子どもは、
声を出さなければ、
文章を読むことができません。

なぜでしょうか?

実は、「音読」という行為は、
就学前から小学1年生になるときに、
最も大きく立ちはだかる壁といっても
過言ではありません。

音読が苦手な子どもは、
ほぼ、確実に国語が苦手
になります。

今回は、

人間がどのように「読み」というものを
獲得していくのか、

その行為にどれだけの影響力があるのか、

を解説していきます。

発達性読み書き障害

彼ら彼女らの特性を把握すれば、
「読み」の獲得のカラクリは解き明かされ、
どのようにアプローチすればよいかが
見えてくるはずです。

「日本語の文章を読む」

という根源に触れる記事にしていきますので、
よろしければご覧ください。



発達性読み書き障害の事実

発達性読み書き障害。

それは、
脳機能の特性上、
読みや書きに困難を抱える障害

限局性学習症(学習障害)の1つでもあります。

本来、
ディスレクシアが「読み」、
ディスグラフィアが「書き」に困難を
抱えるのですが、

日本語の特性上、
読みと書きの関連性が非常に高いので、
発達性読み書き障害と言われることが多いです。

世界各国の「読み」に困難を抱える、
ディスレクシアはどのぐらいいるのでしょうか。

分布を見てみます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

英語圏 5~17%
アラビア語 1%
イタリア語 3.1~3.2%
中国語 3.9%
日本語 7~8%
(日本は発達性読み書き障害の割合)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ちなみに、
発達障害全体の割合は、
文科省の調査では6.5%
と報告されています。

ADHD、ASDを除いた
発達性読み書き障害だけで、
6.5%という数値を超えている

如何に、
文科省の調査は実態を掴めていないか
教育現場で気付けていないかが分かると思います。

では、読みに困難を抱える子どもは、
どのような見え方をしているのでしょうか。

当事者×言語聴覚士として働きつつ、
講演活動も行っている方に話を聞きました。

あなたは以下の文章を、
何秒程度で読めるでしょうか。

ちなみに答えは・・・

めちゃくちゃ難しくないですか?
(内容の是非はさておき 笑)

ひらがなを解読するだけでエネルギーを使い、
さらに意味を推測するのに時間がかかる。

通常ならば1~2秒でパッと読めてしまう内容。

ですが発達性読み書き障害の子は、
毎時間文字を見る度にあの状況なのです。

つまり、
発達性読み書き障害の子どもは、
普通の子どもが1秒2秒で読む文章を、
30秒、1分と時間がかかってしまう感覚
なのです。

そして人よりも時間がかかっていると、

「まだ読めてないの?」
「○○くんいつも遅すぎ・・・」
「またみんなであの子を待つんかい・・・」

みたいな空気が漂い始める。

勉強が嫌いになって
当たり前だと思います。

1クラスに2~3人平均で在籍しているのに、
普通に「読める」ことが当たり前として
授業が進行している。

これは本当に恐ろしいこと。

そして、あなたの周囲にも
当たり前にいる人なのです。

芸能人で言えば、
平野紫耀くんなんかがそうだと思います。
(違っていたら申し訳ないですが)

彼の書いた文章、日記を
たまたま見たことがあります。

鏡文字が存在していたり、
字の形もアンバランス、
読みもたどたどしいといった感じでした。

その代わり、彼はダンスといった
素晴らしい力を開花させている。

余談ですが、LDの人は、
芸能分野の才能が開花する人が多い

海外だとトム・クルーズが有名ですね。

このように、
探せば周囲に当たり前にいる存在なのです。


音韻の獲得

読みの能力を獲得していくために必要なのは、

「音韻の獲得」

これに尽きます。

音韻の獲得のために必要とされるのが、

「1文字と1音の対応」

です。

健常児であれば、
自然と文字に興味をもち、
読み聞かせなどを行っていく中で
勝手に獲得をしていきます。

そして、
文字を見れば自動的に
脳内で音に変換されるようになる。

これを

「デコーディング」

と言ったりします。

ただ、発達性読み書き障害の子どもは、
先に示したような状態で文字が見えているので、
文字情報だけでは一致させることが困難です。

そこで、絵カードのような教材を使います。

要するに、
「あ」の文字であれば「あり」の絵があり、
絵と一緒に文字を覚えていくのです。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

そして、音韻の獲得が困難なのが、

拗音
促音

です。

そういった音韻のトレーニングを行える方法を
幾つか紹介します。


■ グリコじゃんけん

じゃんけんをして階段を上ったりする遊びですね。

「グリコ」は3拍
「チョコレート」は5拍
「パイナップル」は6拍

のように拍を使いながら音を入れていく

「チョ」と「チ」と「ヨ」に分けると、
音韻に問題がある子はますます混乱します。

これで1音と入れた方が易しい。

「ッ」の促音は1拍と捉えさせる方がよいです。


■ たぬきクイズ

「た」を抜くクイズですね。

かたたたきを手に入れる

「た」を抜くと答えは・・・

「かきを手に入れる」

です。

文字と音を一致させ、
1文字が1音であることを際立たせていく

他にも、

ことりゲーム/いすとりゲーム

なんかもOK。


■ 反対言葉

単純に言葉を反対から言うゲーム。

「かき」→「きか」
「くるま」→「まるく」

などなど。

頭の中に文字羅列を思い浮かべて、
それを逆から読む

文字と音の一致です。
ワーキングメモリのトレーニングにもなります。


■ 動物探し

隠れている動物は何かな?

みたいなクイズです。

例えば、

れいぞうこ

に隠れている動物は・・・「ぞう」ですよね。

楽しみながら、
トレーニングができます。


■ 拗音トレーニング

図のように、
拗音を一致させていく問題を
解かせるトレーニングです。

選択式にしたり、
絵の補助を入れたりしながら、
スモールステップで段階をあげていく。

ここまで細かくトレーニングしていけば、
大分音韻の力は上がると思います。

この後も、
〇の数を増やして隠す文字を多くしたり、
完全に慣れてきたら絵をなしにしても
いいと思います。


「読む」のステージへ

「読み」は先の章でも書いたように、
読み聞かせが最強ですので、
幼少期に読み聞かせはたくさんしてあげたい。

その上で、
1文字1音の一致ができてきたら、
文章でも一致できるようにならしていきます

そのために音読をするのです。

ただ、発達性読み書き障害の子どもは、
見え方に困難を抱えているので、
その補助をする支援を入れる。

例えば以下の支援です。

▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢

❶範読/オーディオブック
❷読みを補助する道具
❸スラッシュ法/囲み法/ルビ振り

▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢

自分だけで読むのは困難なのですから、
まずは音声から入れてあげる。

教師が手本として読む「範読」から入る。

もしくは、オーディオブックで聴かせる。

今では、教科書教材を読み聞かせるだけでなく、
蛍光マーカ―や、スラッシュ、
振り仮名を入れることができる
デイジーポッドといったアプリ/ツールもあります。

また、読みを補助するために、
リーディングトラッカー
カラーバールーペといった道具も有効。

リーディングトラッカー
カラーバールーぺ

一部分しか見えないようにしたり、
一部分が強調されて見えるようにする道具。

また、
2年生の途中から「わかち書き」が
教科書からなくなるので、
スラッシュで区切ったり、
単語を丸で囲ったりすると読みやすくなります。

ルビ振りも極めて有効な支援です。
あるのとないのでは全然違います。

「指で追いながら読む」という
作業を加えるのも支援の1つです。

他にも、歌を覚えてから歌詞を見たり、
暗唱をする指導法も有効。

ある元教師×療育者は、
暗唱をしっかりやっている学校は、
LDが少ないイメージがあると言っていました。

暗唱指導については、
以下の記事をお読みください。


受けられる合理的配慮

障害者差別解消法が制定され、
「合理的配慮」が努力義務化されました。

法律に制定されているということは、
入試でそれを適応しなければならないということ。

別室で試験を受けることができたり、
試験時間を延長させてもらえたり、
ルビを振ってもらえたり・・・

受けられる合理的配慮は、
事前に確認しておく必要があります。

ただ、その時に、
合理的配慮を受ける資格があることを
証明できるもの
があった方がスムーズ。

医師からの診断書、
通級や支援級での支援の記録、
療育手帳など。

そういう活用できるサービスは、
本人が望むのであれば、
最大限使わせてあげる。

その為に、周囲の大人が、
サービスの存在を知っていることが大切です。


まとめ

1文字1音の認識ができて、
音読ができるようになる。

音読が習熟していく中で、
脳内で音声が自動化され、
黙読ができるようになる。

そうなってようやく、
文章の内容読解に入ることができ、

読解ができると、
解釈を加えることができるようになります。

これが、国語の「読み」の力の体系です。

後は「語彙力」をどれだけ高めるかで、
相乗効果的に「読み」の力は上がっていきます。

日本ディスレクシアセンター理事長であり、
筑波大学元教授である宇野彰さんは、

「発達性読み書き障害の子で、自動車学校の運転免許試験に落ちた子を見たことがない」

と言っていました。

だから、必ず、
彼ら彼女らに適する指導方法が存在するはず。

これまで、
音読ができなく、数々のつらく、
かなしい思いをしてきた人々の思いを
無駄にしない
ためにも、
よりよい方法を探し続けていきたいです。

読解に関する支援方法は
以下の記事にも記載してありますので、
そちらをご覧ください。


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