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現時点での離婚後共同親権の導入には反対ですー誰1人犠牲者を出さないために

 子どもの福祉を考えるからこそ,共同親責任を認める諸外国制度の経験(別居親による監護中に子が殺害されたり,引っ越しも自由にできず監視されているような状況,行ったり来たりすることで負担が大きい,監護親への日常の監護への介入,攻撃が続き,安定的監護に悪影響がある,監護を担っているからと養育費はさらに減らされる等)を先例として,「共同親権」の負の側面,特に子どもの心身の安全・安心と適時適切に必要な事項を決めてそのニーズを満たすことへの支障が出るリスク(監護親の安心と安全を含む)を踏まえ,慎重に制度導入の可否を検討すべきことは当然のことであり,現状の法案のみで,今後きちんと制度設計・手当をするので大丈夫,といえる状況になっていないのではないでしょうか。

 監護の一部である面会交流ですら,法的根拠ができてから10年余,司法制度,社会資源は乏しいままで,裁判所で話し合って決めた面会交流を行うときに,子や元妻が殺害される重大事案が複数おきていますが,裁判所から,基盤整備ができていない,適切な調停・審判・裁判がされなかったという評価はされていないので,これからも防止できないでしょう。

 現状,DV・虐待事案は「別」で子どものための面会交流のあり方が適切に取り決められている,という実務運用には全くなっておらず,家裁がニュートラルフラットにする,とした後も調停委員を含めすでに染みついた原則実施の運用がされ,同居の監護親の子の福祉への心配・憂慮が反映された面会を取り決めるような運用にはなっていないと感じます。私たちが関与できていない代理人のいない事案では,子の安心・安全が守られなかったり対応する監護親による監護への支障・悪影響が出る事案はさらに多くあるはずですが十分な公的調査はされていません。

 他方,面会交流が法的根拠を与えられた後,マスコミも含めた離別親側からの運動が強くなり,不当に子連れ別居され面会させてもらえないというような主張(それらには相応の理由があるはずだが主張者は認識できていないか,子のために面会が否定されるべき事情があるという評価ができていないことが多い。)が度々大きく報道され,ロビーも強く,役所での支援措置や児相・配暴センター等が攻撃され必要な支援も萎縮し,国も警察や役所での運用をそちら寄りの運用にする部分も出ています。

 「急迫の事情」の法文案にみられるように,今の改正案では婚姻中・同居中の親権の共同行使のあり方にも負の影響を及ぼすのは目にみえており,子連れ別居は親権濫用,誘拐,違法とされます。

 共同親権制度ができれば,相当な事情があって安心安全確保のために別居せざるをえない親子が,よりいっそう行政・裁判所から必要な保護・支援が受けられず,守られないことになりますが,それでいいのでしょうか。

 DV・虐待事案は当事者がそれと認識できていないことも多いので,かなり事案が多いと思いますが,そうでないケースでも,これまで離婚した親子にまで親権変更手続によって適用するとしていますが,国民への影響が大きすぎます。

 諸外国,少なくともオーストラリアでは,民間のセンターで家族をサポートする制度を作って日本と桁違いの予算をつけるという社会資源がありながら,危険な事案のスクリーニングには限界があり,子の安全重視での法改正がされたところです。

 日本で,いま仮に共同親権の立法事実があると考える立場からも,「子の福祉」のためにこそ,「子の福祉」を害するリスクを,これまでの国内及び諸外国の状況もふまえてあらゆる面から必要十分に検討し,慎重な議論を行うのは,政府・立法府として当然かと思います。

 新しい制度によって子どもが誰一人犠牲になってはいけないと思います。引き続き、反対の声をあげていきましょう。

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