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ウィズコロナ時代の採用

ウィズコロナの採用

思えば2021年も半分が終わろうとしています。緊急事態宣言とまんえい防止等重点措置の繰り返しで、業種によっては大きな打撃を受ける日々が続いています。私が出資している日本酒の酒蔵も、海外に売り出していこう!と意気込んだ矢先にその影響をモロに受け、苦戦を強いられています。

一方、ウィズコロナの世界になって1年半、適応しやすい業種を中心に、採用活動は徐々に活気を取り戻してきているように感じます。スタートアップ業界も、コロナ禍にありながら上場して2,000億円を超える時価総額になったビジョナルさんや、未上場ラウンドで100億円を超える大型調達を行いユニコーン入りしたSmartHRさんなど、明るいニュースも増えてきました。

私が所属しているメドレーは相変わらず採用活動を加速させ続け、組織としても最近、新しいステージへの大きなチャレンジをしていく上での大きな大きな土台づくりを行いました。発信できるようになるのはもう少し先になりそうですが(発信できるようになることが今から楽しみです)、上場してM&Aも増え、グループ化していく中で着実に毎年、未来への仕込みを続けています。

個人で実施している採用ブランディングの会社も4期目になり、40社ほどの会社に携わらさせていただきましたが、最近また一気に引き合いが増え、東京以外のエリアでの案件をいただくことも増えてきました。東京だけでなく全国で、市場が徐々に元気を取り戻しつつあることを感じます。

難易度が上がる採用ブランディング

ステージが変わる中での採用ブランディングや、新しい業種業態のクライアントさんが増える中で、自分がこれまで積み上げてきた型をブラッシュアップさせる必要性を感じてきています。

正確には、型そのものを変える必要性は感じておらず、そこは普遍的に適応可能なものではあるのですが、その型にしっかりとはめ込んで確固たるストーリーや企画に落とし込んでいく過程をいかに研ぎ澄ませていくか、という手法のバリエーションを増やしていく必要性です。

これまでは、インターネット化していなかったものをインターネット化していく、オンプレミス型だったものをクラウド型に移行していく、既存のプラットフォームベースのBtoCしかなかったものをCtoC化/DtoC化していく、といったシンプルな説明で通用していたものが、そういう会社が山ほど増える中で、その中での強い個性やコアコンピタンスは何か?勝ち筋は何か?といったところまで掘り下げる必要性が出てきました。

また、これまではバリュー/行動規範を定めている会社が少なかった中で、バリューを定めてその説明をしていればある程度個性の表現に繋がっていたものが、バリューを定めることそのものは当たり前になっていく中で、それをいかに濃く体現しているのか、ということを表現していくことが求められるようになりました。

こうなってくると、単純に表面をなぞればそれなりのストーリーができるようになる、というわけではなく、より深く潜り、より深く掘り下げるプロセスが必要になってきます。

3つのギャップに向き合う必要性

最近よく感じるのは、以下の3つのギャップに向き合う必要性です。

・自分たちは考え抜いた上で至っている今の方向性や勝ち筋は他人が思うよりも繊細で紙一重な違いであり、市場に伝えられているようでその繊細さまではまったく伝えられていない。その結果、情報の受け手にそのコアな部分が全くと言っていいほど届けられていない。

・自分たちが設定したバリュー/行動規範の文言はそれ自体はありきたりなものであるがゆえに、それをただ説明するだけでは、その会社の真に良いところや個性を伝えられていない。その結果、情報の受け手にそのコアな部分が全くと言っていいほど届けられていない。

・会社は社内外の環境変化を受けて常に変化しているものであり、ある時点で確立した採用ブランディングはその時点で過去のものであり、未来の採用力を約束するものではない。その結果、ある時点で現状に満足した瞬間からその会社の採用力は衰退していくが、その時点の採用がうまくいっていればいるほど茹で蛙のようにその事実に気づきづらい。

質問力を研ぎ澄ます

1つ目については、その繊細な違いをどう伝えていくか、という手法論のブラッシュアップが必要になってきています。最近新しく試しているのは、この繊細な違いをシンプルに説明できるようになる質問の仕方です。より深く質問する。これまでよりも多様な視点から質問する。いかに研ぎ澄まされた質問ができるか、という質問力を鍛える必要性を感じます。

最終的には誰もがシンプルに理解できる言葉と型に落とす。最終的にシンプルにする過程の中で最初は多くの発散を行います。発散を通じていかに良質な材料を吐き出すか、そして収束の過程でいかにそれをシンプルに昇華させ落とし込んでいくか。このプロセスをこれまでよりも数段階次元の違うレベルに引き上げていくことが必要です。

2つ目についても同様です。バリューに込めた言葉をどの程度体現できているのか。具体的なエピソードはあるのか。他社にも同じようなバリューがあるとしたら、そこと比べてどういう個性がにじんでいるのか。そういう些細な違いや深さをどこまで引き出せるのか。掘り下げた結果実態がないのだとしたら、これからどう作っていくのか。そういう課題感を具体的にイメージして共有することが必要です。

完成された現在は、その瞬間から過去の遺物である

認めたくない事実ですが、こと採用ブランディングの領域について言えば、蓄積されたブランドはあれ、その賞味期限は他の領域よりも短いと思った方が良いです。事業であれば、ステルスに積み上げた確固たる強みやプラットフォーム型事業におけるネットワーク効果などは、他の会社が一朝一夕に崩せるものではありません。

しかし、常に面白い会社が生まれる採用マーケットにおいては、競合は特定の業種や領域の数えられる範囲の会社ではありません。競合は常に、全業種の中でその時点で注目されていて面白いと思われている会社です。これまで積み上げてきたブランドはすぐには消えませんが、他の会社の話題が増えれば増えるほどどんどんぼやけ、いつしか風に吹かれて消えていきます。

他方、採用活動としては、これまで培ってきた採用プロセスが回っているため、目の前の採用が今すぐガタつくことはありません。だから、その変化に気づきづらい。しかし、成長企業であればあるほど、候補者への要求は増え、採用難易度は上がっていきます。気付いたらスカウトの返信率が徐々に下がり、内定承諾率が徐々に下がり、1人あたり採用費用が徐々に上がるということが起こってしまう。これがなんとも怖いところです。

変化は必然。自分と組織をアップデートする

変化は必然です。メドレーを見ていてもそう感じますし、自分の会社でクライアントさんに向き合っていてもそう感じます。本質は変わりませんが、変化に適応し、自分をアップデートし続けないと、課題解決をし続けることはできない。

多くの会社が採用ブランディングに興味を持ち、自分たちなりに実践していく中で、コンテンツそのものはどんどん増えていきます。上記したようなポイントを研ぎ澄まし、確固たるストーリーを作ったとしても、それを伝える手法にズレがあれば、やはり効果的に届くことはありません。明らかに難易度が上がっている。年々本当に上がってきていますよね。しかも、気づかない人はそうなっていることすら気づかない。やっかいな時代です。

コンテンツを正しく作っておくだけでは採用ブランディングにつながらない。一朝一夕では届かない。時には文化を体現する人たちの「あそび」をうまく誘発してコラボレーションを生み出したり、ストレートだけでなく変化球も駆使していく必要があります。

採用に直接携わる人だけでなく、全社員がどれだけその意識を共有して採用活動に臨めるか。という組織の力が、ますます重要になってきているのを感じています。


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