見出し画像

<織り装置と織り機の歴史と>

2023.5.19 弥生三十日
おはようございます。

今日は繊維のことから離れて「織り機」の話。織りの図鑑みたいな本『図説 手織機の研究』シリーズを、返す日が来たので一度返却して、また借りて、今度は割とじっくり読んでいます。全部が理解できるわけでは全くありませんが、大変面白いです。
私は葛布に取り組むようになって初めの頃、狭いアパート暮らしで、織り機なんて買える余裕がなかったので、「腰機」や「木枠機」を自作して葛布が織れないかと試行錯誤していた時代があります。その当時の遺物(?)は、数年前に全部処分してしまったのですが、その時の体験は今の織りにも生きていると感じています。中でも「腰機」は、「織り」としては、高機で織るよりも楽しかった気がします。うまく言語化できないのですが、布と体の一体感?全身で織る感覚?道具が糸と棒だけですから、道具を使っているというより、体が道具の一部になっている感覚とでも言うのでしょうか。乗馬で「人馬一体」と言いますが、それに似ているのかもしれません。
その体験をもとに、開業してから数年間、「木枠機による手織り教室」を運営していました。その時習いに来てくださっていた方向けにYouTube動画を作った、それがこちらです。


教室は止めてしまったのですが、教室に通わなくてもご自身で取り組めるようにと思って作ったものです。「綜絖糸の作り方」が結構人気なようで再生回数も地道に伸びています。本当は、木枠でこの装置はちょっと厳しいのですが、「織り」の構造を知るのには大変良いのと、織っていて大変楽しいのとで、採用しています。先日のワークショップでも、この織り機を使いました。

今日、何が言いたいかというと、この織り機は見た目にシンプルなので「簡易的な織り機」と思われがちなのですが、決して「簡易的」(=本来は複雑なものを簡単に簡便にした)ではないことを、強調したいのです。

ここから先は

3,975字 / 3画像

いただいたサポートは制作費として大切に使わせていただきます。 https://kuzunonuno.com