葛の葉日記

たまたまその辺にあったものに魅入られて

葛の葉日記

たまたまその辺にあったものに魅入られて

最近の記事

散蓮華

中華の汁ものをすくう陶製の匙を 散った蓮のひとひらに見立てレンゲと呼んだり 丸めたお米に餡をまぶしたお餅を 春は牡丹に見立て大きく丸く作りぼた餅と呼び 秋は萩に見立て俵型に丸めてお萩と呼ぶのなど 日常に詩的なものがひそんでいるようでおもしろい 他にそんなものがあるか考えたら あまり思い浮かばなかった 新幹線がこだま・ひかりときて それより速いのが のぞみであり 国土を行き来して走るのも なんかもう呪術的でいい (写真は鉢の睡蓮)

    • 香出ら

      枝垂れている樹があれば 懐にもぐりこみたくなる 葉が桂に似ている気もするけど 枝垂れる桂なんてあるのだろうか 黄葉のころにもぐりこめば あのべっこう飴のような甘い香りに囲まれるだろうか 落葉するまで甘い香りはしないのか

      • 紅海の底

        砂漠が囲む紅海  流れ込む川はなく 透きとおって深海まで光を通す 深いところでも水温は高く 生物がいる 海底の地層深くに岩塩の層があり 地殻変動による海底の割れ目に 地球内部から岩塩の層を通った塩水が湧く 塩分濃度の濃い水は海水と混ざらず 海底に池のような塩水の層をつくるという 海のなかに池があるような不思議な光景 塩水池は強い浮力ゆえに潜水艦をはね返し 池のなかは無酸素で上から来た生物は生きられない 海水と塩水のさかいに 沈んで来た有機物が留まり それを採りにエビ

        • 遍く

          独唱かデュエットくらいだった蛙が 大雨のあと合唱になってきた いまもなお、カートゥーンチャンネルで見られる トムとジェリー なんて息の長い 学校から帰ってきた小学生につられ スナック菓子などつまみながら見入る 鳥獣戯画にもなにか通ずる あれは国宝なのだ さらに息の長い愛されかた たまたま、おじゃる丸の再放送を見かけると和み 手を止める 共通するのは、小さくか弱いものが 虐げられることなく、心のままにしていること であるように思う 世界が遍く そうでありますように

          好奇心のトーン

          一歳になったばかりで、まだお話はしない甥が 最近しきりに疑問形で「ン~!?」 と言うようなトーンの声を出すようになった 遊んでいる途中のこともあれば、 抱っこで連れて行って欲しい方向へ 手を伸ばしながらのこともある 初めて目にするものや、気づいたもの、 日常は未知のものだらけで、 毎日が発見の連続なのだろう 「!?」のトーンを聞きながら 勝手にそう想像している つかまり立ちでドアノブに手が届き、 レバーハンドルを下げて引くことでドアが開く 開け閉めを繰り返すのを手を挟まな

          好奇心のトーン

          ガリガリ君の虹

          箱入りのガリガリ君は、個包装の袋が透明 アイスを取り出し、袋を座卓に置く 食べ終わって気づいた 窓からの光を袋が分光したのか 居間の座卓に虹色の影

          ガリガリ君の虹

          みづくろい

          こたつ布団のうえに舌の櫛で念入りに毛を梳かす猫 浅い流れに羽をふるい水しぶきをあげる小鳥 コガネムシは三対の肢を駆使してすばやい 真ん中の一対で葉をつかみ 同時に前肢同士、後肢同士をぬぐい 次に前肢で頭、後肢でお尻を同時にぬぐうや否や飛びさった みづくろいする身近ないきものを見て和むのは共感か 蛸もするというから見てみたい

          街路

          小さい子とたびたび接する機会があると 童心が呼び覚まされてしまうのか つやつやの露をたくさん乗せる街路樹の葉にふれて ゆれ落ちるさまを見たくなったり 下草の綿毛がまるまると誘惑して 吹き飛ばしたくなるの心を危うく抱えながら 大人の顔をして歩道を行く そんな子がまだ居たのかと驚きながら 鳩がたまっていたら 走り込んで行きたくなるだろうか

          彼岸

          これくらいあたたかくなると、去年、花筏の川岸を一緒に走った犬がもう居ないことに涙が出る。 向こう岸で再会した元の飼い主と走ってくれるに違いない。

          甲辰

          辰年、どこかのお寺で龍の絵がみられるといいな。 お正月、従弟の子たちが来た時、龍の絵をリクエストして描いてもらった。それを飾って満足し、今のところお参りはできていない。 雨、川、雷、台風、恵みであり脅威でもある水の力。 その象徴として捉えられてきた龍。 天地の間を行き来する存在とされている。 仏法を守ると言われ、お寺の襖絵や天井画に描かれていることもある。 その絵と対峙するとき、身の丈より高い視点から自らの姿勢を問う機会を与えてもらえる気がする。 その感覚を辰年を期に意識

          六根

          川沿いの草園は一変、機械で跡形もなく刈られ 落ちた種などを、鳥が集まって啄んでいた とはいえ、根こそぎにはしていないので、 この季節すぐにまた元の勢いを取り戻すに違いない 案の定、すでに取り戻した 石と砂利と樹一本だけの坪庭 樹が大きくなりすぎて、家の者が切ってしまったけど それもまた芽を出して小さな姿で これまでと違う景色を見せてくれている 姿がみえずとも根が残っていれば そこにいるも同じ  むしろ実体であるかのようにさえ感じる 根で連想したのが最近目にした 六「根

          水光

          老犬がリードをつよく引き橋を渡れば 風に波立つ池が 眩暈するほど 西日できらきら照らしてくるのを 祝福されているかのように錯覚し これ以上なにを望む?とか思う いつもの青鷺 梔子が匂いたつ

          唐草

          瑠璃唐草という和名は、 ネモフィラという音よりも沁みる 親指の先ほどの花が群れ広がって咲く様子が 唐草模様の連続して伸び広がるのを想わせた 日本古来、唐草模様には茎や蔦をのばして広がり おおい尽くしていく植物の生命力にあやかろうとする 願いが込められたという はるばる古代ギリシアに発し この東の果てまで伝い広まったとされる 蔦がはびこるより遠く 模様は洋の東西を越えて伸び広がってきた 植物も模様も、風土や文化によって形を変え 多様化しながら互いに影響し せめぎあいな

          光背

          拝観時間ぎりぎりのお寺で お堂に入ると思わず声がでた。 大きな仏像の透かし彫りの光背が レースのような影をお堂の壁にうつしていた。 見知らぬ人が、 この時間は仏像を見るにはいい時間ですよ と言って去った。

          結界

          しめ縄がベンチで昼寝している?ということは その神さまは今お出かけ中なんでしょうか 自分のような鈍臭すぎて 自然界では生き残れなさそうな性質の個体が 淘汰されずにまだその性質を残してるということは 私をこれまで助けてくれた人たちに感謝するとともに 同じような性質をもった先祖を助けてくれた 数多の人がいたことが想像され 胸がつぶれそうな嫌気さす出来事も多く起こるが、 人類いいとこもあるやん。となる いいとこをこれからも信じていられるように 神さまはどこもかしこもそこらじゅ

          葡萄

          井戸の近くから勝手に生えてきた植物 葡萄かもしれないと父が言い支柱を添えたら 屋根の雨樋をつたうまでに伸びた そのうちなった実は大粒の葡萄 甘すぎず爽やかな味だった あたらしい葉は金箔のような光沢を帯び 光っていない葉との対比は 工芸のデザインにつかわれていてもよさそう 裏側は白みを帯びた和紙のような質感 落ちた種がたまたま育ってくれたのか 葡萄が来てくれなければ こんなにまじまじ葡萄の葉をみることはなかっただろう