サイケ蟹光線

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本当(ガチ)のメンヘラと付き合って、日本刀で斬りかかられたのち心の病気になりたい

「ねね」 「今日のみゆビジュどうだった」 「?」 「ねえ」 「おい」 「寝た?」 「寝た?」 「死ぬ」 「しんぢゃう」 「不在着信」 「不在着信」 「おい、なあ」 「殺す」…

サイケ蟹光線
2か月前
50

架空の友達との会話〜ゴボズ〜

「あれ、なにお前勉強してんの」 してたんだけどさ、さっき思いっきりコーヒーこぼして全部いやになっちゃった 「うーわ。こぼすって段階じゃないくらいこぼしてるなこれ。…

サイケ蟹光線
2か月前
23

見放さないで、虚仮にしてくれ

「ホワイトデーに、マカロンを作ろう」 4ヶ月ぶりに会った相楽健花は、喫茶店の淡い光に溶けてしまいそうなほど蒼白な顔色をしていた。 「お前さ、高校来ないで何してたん…

サイケ蟹光線
2か月前
28

【先輩日記③】先輩は成人式シーズンになるとごちゃごちゃうるさい

1/17 家に帰ったら水子の霊がいた。よく見たら先輩だった。『本当に怖いのは幽霊でなく人間』というのはあながち間違いではないかもしれない。 「先輩、俺が陰陽師を呼ぶ…

サイケ蟹光線
4か月前
22

変わり者の先輩から急に恋愛相談をされて訳わかんない感情になりたい

立藤高等学校の屋上は閉鎖されている。 4月、新入生たちは屋上入り口の無骨な南京錠を見て高校生活最初の失望を経験するのだ。それでも私が昼休みの度にその閉ざされた扉を…

サイケ蟹光線
4か月前
53

逆に弱くて臆病なオカマキャラとかいても良くないですか、という小説

タイラー王国の空は乾いていた。 涼やかな風が頬を撫で、長旅の疲れを癒す。 この地に立ち寄るにあたって雨季を避けたのは良計であった。国王署名の魔王討伐要請書を見せる…

サイケ蟹光線
7か月前
38

夏のエモ鏖(みなごろし)サークルを設立して皆さんの夏を台無しにしたい

「諸君、俺は夏が嫌いだ」 午前3時、屋根が腐り落ちた廃ラブホテル。 高々と積み上げられたスケベ椅子の壇上で、男が呟く。もう3年は朝日を浴びたことのなさそうな土くれ…

サイケ蟹光線
9か月前
72

俺が片想いしてる女子と親友を泣きながらくっつけるだけの小説

「織姫真琴さん、そして、有田鷲一。ご結婚おめでとうございます。今日という日が……あ?ハハ、うるせえよ。お前は呼び捨てでいいだろ。あ、申し遅れました。わたしは2人…

119

先輩日記② 先輩が俺の墓前にタバコを供えたがっている

5/1 (月) 家に帰ると春のよくない部分を司りし妖精がいた。よく見ると勝手に部屋に上がり込んでいた先輩だった。 春先は不審者が活性化するとはよく言うが、春そのものの…

39

変な部活のマッドサイエンティスト先輩に部屋を爆破されたい

小井手 天音とのファーストコンタクトは極めて奇妙であった。『発明部』の看板が立て掛けられた、寂れた部室棟の隅。なぜか何重にも張り巡らされた警告テープをくぐり辿り…

78

何処かに消えてしまいそうな儚い雰囲気を纏っているがクッソ生命力強い女の子と付き合いたい

「ねえ、私が死んじゃったらさ、今度はもっと元気な娘を好きになってね」 ちょっと泣いたら、私を忘れて。 8月の、どこか白々しい太陽に照らされ、糸杉さらさは笑った。…

149

エイプリルフールに人類がついたウソが全部ホントになって世界メッッチャクチャになれ!!!!という短編

エイプリルフールのウソを吐いて良いのは午前中のみ、というのは有名な話である。とりわけ今年の4月1日はこれを遵守しなければならない。 何故なら、今年のエイプリルフー…

70

こんな退屈なパーティと東京と地球と宇宙、2人で抜け出さない?

「ねえ、こんな退屈な授業、2人で抜け出さない?」 あの日、三枝華那多は僕の手を取り、積分の授業の最中であった3-2教室を脱走した。 校門を抜け、ふたつの秋風のように…

74

先輩日記① 先輩がSEXのことを考えすぎておかしくなった

3/7(火) 家に帰ると妖怪がいた。 よく見ると妖怪に限りなく近づいた先輩だった。 「なんでいるんですか先輩」 「SEXについて考えていた」 先輩は言語野を銀貨3枚で売り…

68

「髪型どうしますか?」 全体的に好いてください

私の醜いところも、愚かなところも、全体的に好いてください。 川森順子といいます。今年で38歳になります。 神田の、小さな図書館で司書をしております。 青春の多くを図…

55

帰りの会をはじめます 連らくのある人は手をあげてください

無いみたいなので、ぼくから言いたいことがあるので、聞いてください。 出席番号28番の、すみかわあいらさんに意見があります。 あいらさんは、ぼくの気持ちをおかしくす…

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本当(ガチ)のメンヘラと付き合って、日本刀で斬りかかられたのち心の病気になりたい

本当(ガチ)のメンヘラと付き合って、日本刀で斬りかかられたのち心の病気になりたい

「ねね」
「今日のみゆビジュどうだった」
「?」
「ねえ」
「おい」
「寝た?」
「寝た?」
「死ぬ」
「しんぢゃう」
「不在着信」
「不在着信」
「おい、なあ」
「殺す」
「ブチ殺す」
「不在着信」
「不在着信」
「不在着信」
「返事して」
「殺すぞおい」
「40分後に刺殺するぞ」
「家行くね」
「不在着信」

失敗した。完全に失敗した。
いくら、いくら小雨美憂が可愛いからとはいえ、幼馴染とはい

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架空の友達との会話〜ゴボズ〜

架空の友達との会話〜ゴボズ〜

「あれ、なにお前勉強してんの」
してたんだけどさ、さっき思いっきりコーヒーこぼして全部いやになっちゃった
「うーわ。こぼすって段階じゃないくらいこぼしてるなこれ。『ゴボズ』と言ってもいい」
はは、こぼすの上位互換だ
「どうすんのこれ」
目瞑って河川敷に投げ捨てる
「ダメだって!!」
自分が目瞑ってたら他の人からも見えてない気がするから
「まだ赤ちゃんの感受性持ち合わせてるんだなお前。お目目ないない

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見放さないで、虚仮にしてくれ

見放さないで、虚仮にしてくれ

「ホワイトデーに、マカロンを作ろう」
4ヶ月ぶりに会った相楽健花は、喫茶店の淡い光に溶けてしまいそうなほど蒼白な顔色をしていた。
「お前さ、高校来ないで何してたんだ」
「最近はもっぱら新海誠の映画ポスターを買い占めてリビングで燃やしているよ」
「そうか」
意味不明な提案を聞き流そうとしたらさらに意味不明な情報が飛んでくる。彼の脳にまともな部分はもう残っていないのかもしれない。
「ホワイトデーに、マ

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【先輩日記③】先輩は成人式シーズンになるとごちゃごちゃうるさい

【先輩日記③】先輩は成人式シーズンになるとごちゃごちゃうるさい

1/17

家に帰ったら水子の霊がいた。よく見たら先輩だった。『本当に怖いのは幽霊でなく人間』というのはあながち間違いではないかもしれない。

「先輩、俺が陰陽師を呼ぶ前に帰ってください」
「後輩よ、成人式には行ってないだろうな」

先輩はコンビニで前頭葉を寄付してしまったのでまともな会話ができない。

「行きましたよ3日前に。先輩の葬式には行きません」
「たわけ!あのようなイベントなど時間の浪費

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変わり者の先輩から急に恋愛相談をされて訳わかんない感情になりたい

変わり者の先輩から急に恋愛相談をされて訳わかんない感情になりたい

立藤高等学校の屋上は閉鎖されている。
4月、新入生たちは屋上入り口の無骨な南京錠を見て高校生活最初の失望を経験するのだ。それでも私が昼休みの度にその閉ざされた扉を見に行くのを辞めなかった理由は、自分自身よくわからない。逃避先を求めたのか、あるいは奇跡を待っていたのかもしれない。気まぐれに触った南京錠があっさりと開き、鎖が水のように流れ落ち、眼前には青空が広がる。そんな小さな奇跡を。

初夏の頃だっ

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逆に弱くて臆病なオカマキャラとかいても良くないですか、という小説

逆に弱くて臆病なオカマキャラとかいても良くないですか、という小説

タイラー王国の空は乾いていた。
涼やかな風が頬を撫で、長旅の疲れを癒す。
この地に立ち寄るにあたって雨季を避けたのは良計であった。国王署名の魔王討伐要請書を見せると、住民たちも我々一行に非常によくしてくれた。不寝番を置かずに腰を落ち着けられたのは一体いつ振りだろうか。

それでも後ろ髪を引かれず出発できたのは、ひとえにこの国の珍妙極まる国民性ゆえである。

「アッラ〜〜❤️アナタよく見るといいオト

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夏のエモ鏖(みなごろし)サークルを設立して皆さんの夏を台無しにしたい

夏のエモ鏖(みなごろし)サークルを設立して皆さんの夏を台無しにしたい

「諸君、俺は夏が嫌いだ」

午前3時、屋根が腐り落ちた廃ラブホテル。
高々と積み上げられたスケベ椅子の壇上で、男が呟く。もう3年は朝日を浴びたことのなさそうな土くれ色の顔貌が憎悪に歪む。拡声器を持つ手が震えているのはビタミンDの致命的な不足によるものだ。

「海の家で、夏祭りで、田舎のあぜ道で、文化祭で、この地上で行われるありとあらゆる青春行為が大嫌いだ」

彼の名は徒花 嫌夏(あだばな けんか)

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俺が片想いしてる女子と親友を泣きながらくっつけるだけの小説

俺が片想いしてる女子と親友を泣きながらくっつけるだけの小説

「織姫真琴さん、そして、有田鷲一。ご結婚おめでとうございます。今日という日が……あ?ハハ、うるせえよ。お前は呼び捨てでいいだろ。あ、申し遅れました。わたしは2人の幼馴染ってことでスピーチを任されました、古田七海と申します。え〜……今日という日が来るのを、心待ちにしておりました_______ 」

真琴と鷲一は幼馴染だ。それこそ、産まれたときからの。同じ病院で産まれ、同じ学校で義務教育を受け、高校は

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先輩日記② 先輩が俺の墓前にタバコを供えたがっている

先輩日記② 先輩が俺の墓前にタバコを供えたがっている

5/1 (月)

家に帰ると春のよくない部分を司りし妖精がいた。よく見ると勝手に部屋に上がり込んでいた先輩だった。
春先は不審者が活性化するとはよく言うが、春そのものの不審者が出るとは思いもしなかった。

「先輩、俺がセコムを呼ぶ前に帰ってください」「後輩よ、貴様タバコは吸うか?」

先輩は5年前から夢と現実の区別がついていないのでまともな会話ができない。

「吸いませんよ。先輩の死骸に唾を吐いて

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変な部活のマッドサイエンティスト先輩に部屋を爆破されたい

変な部活のマッドサイエンティスト先輩に部屋を爆破されたい

小井手 天音とのファーストコンタクトは極めて奇妙であった。『発明部』の看板が立て掛けられた、寂れた部室棟の隅。なぜか何重にも張り巡らされた警告テープをくぐり辿り着いたその扉を開けると、馬のマスクを被った奇人がいた。

「地獄の底へようこそ、1年生。実験を開始する」

言うが早いか、彼女はマスクを著しく痙攣させながら無数のドリンク類を大釜に投入し始めた。『マカ皇帝倫』の空き容器が視界の隅を踊る。

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何処かに消えてしまいそうな儚い雰囲気を纏っているがクッソ生命力強い女の子と付き合いたい

何処かに消えてしまいそうな儚い雰囲気を纏っているがクッソ生命力強い女の子と付き合いたい

「ねえ、私が死んじゃったらさ、今度はもっと元気な娘を好きになってね」

ちょっと泣いたら、私を忘れて。

8月の、どこか白々しい太陽に照らされ、糸杉さらさは笑った。揺れる黒髪は陽炎のようだった。

そんな冗談、言うなよ。
思わず目を背けた俺の視界を、鮮やかな赤が覆った。

糸杉さらさは、1学期の終わり頃という何とも中途半端な時期にこの田舎町に転校してきた。肺を悪くして、療養のために居を移したのだそ

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エイプリルフールに人類がついたウソが全部ホントになって世界メッッチャクチャになれ!!!!という短編

エイプリルフールに人類がついたウソが全部ホントになって世界メッッチャクチャになれ!!!!という短編

エイプリルフールのウソを吐いて良いのは午前中のみ、というのは有名な話である。とりわけ今年の4月1日はこれを遵守しなければならない。

何故なら、今年のエイプリルフールは、午後に吐いたウソが全て現実になってしまうからである。

春の日差しが降り注ぐ平和な昼下がり。
閑静な住宅街に、突如として7562体の大谷翔平が出現した。

「おい!!誰だ『あそこに大谷翔平がいたよ』なんてウソを吐きやがったバカ野郎

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こんな退屈なパーティと東京と地球と宇宙、2人で抜け出さない?

こんな退屈なパーティと東京と地球と宇宙、2人で抜け出さない?

「ねえ、こんな退屈な授業、2人で抜け出さない?」

あの日、三枝華那多は僕の手を取り、積分の授業の最中であった3-2教室を脱走した。
校門を抜け、ふたつの秋風のように落ち葉を散らし小さなバス停まで駆けると、ちょっと踊って、共犯者のように笑った。忘れられない思い出である。

「色々思い出しちゃうよなぁ、華那多」
僕は純白のドレスで身を包んだ彼女を見遣った。
今日はふたりの結婚式。たぶん、人生最高の日

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先輩日記① 先輩がSEXのことを考えすぎておかしくなった

先輩日記① 先輩がSEXのことを考えすぎておかしくなった

3/7(火)

家に帰ると妖怪がいた。
よく見ると妖怪に限りなく近づいた先輩だった。

「なんでいるんですか先輩」
「SEXについて考えていた」

先輩は言語野を銀貨3枚で売り払ってしまったのでまともな会話ができない。

「俺は異性間性交渉未経験者なのでSEXに憧れ続けていたが、ついにはSEXに失望してしまった。蛙化現象だ」

絶対に違う。
それと隣にSEXのことを考えている人がいると落ち着かない

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「髪型どうしますか?」 全体的に好いてください

「髪型どうしますか?」 全体的に好いてください

私の醜いところも、愚かなところも、全体的に好いてください。

川森順子といいます。今年で38歳になります。
神田の、小さな図書館で司書をしております。
青春の多くを図書館で過ごしてきましたから、愛着があるのです。
そういうわけで、お察しかと思いますが学生時代の恋愛経験はなく、気付けば交際と結婚がイコールとなるような年齢になってしまいました。
さすがにさすがにと思い、一念発起、マッチングアプリという

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帰りの会をはじめます 連らくのある人は手をあげてください

帰りの会をはじめます 連らくのある人は手をあげてください

無いみたいなので、ぼくから言いたいことがあるので、聞いてください。
出席番号28番の、すみかわあいらさんに意見があります。

あいらさんは、ぼくの気持ちをおかしくするのをやめてほしいです。

あいらさんが休み時間のときにぼくの席に座るのをやめてほしいです。教科書を見せたときに、すみっこにこっそりぼくの顔をかいて気づくまでニヤニヤ笑ってるのをやめてほしいです。たまに手にぬるいいにおいのヤツをぼくに分

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