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落語日記 得意な演目は、久しく掛けていなくても熟成させている馬治師匠

第31回 馬治丹精会
4月15日 日本橋社会教育会館
裏方のお手伝いをさせてもらっている馬治師匠主催の独演会。今回も受付等で事務作業をしていたので、ときどき脇の通路から高座を覗く程度でしか拝見できず、後は、ロビーに流れるモニターの音声を作業中に聴くのみで、集中して聴くことは出来なかった。なので、日記は簡単に演目の紹介程度。
客席は、常連さんを中心に、前回よりも若干多めの入り。コロナ禍が明けて、客席の動きも元の状況に戻りつつあるとの感触。

隅田川わたし「強情灸」
前座は前回に引き続き、馬石師匠の弟子のわたしさん。語り口は馬石師匠に似ている。
マクラでは江戸っ子の強情な気質を伝える小噺、熱い湯船に浸かる江戸っ子たちの大騒ぎを丁寧に語る。小噺にも真摯に取り組んでいる様子は好感が持てる。

翁家和助・小花 太神楽曲芸
この日も、夫婦仲良く楽しい曲芸を見せてくれた。小花さんの突き放した様子と、仕方ないという風情でキッチリと見事な技を見せる和助さんの対照が際立つコンビ。舞台に寄席の雰囲気が溢れる芸能だ。

金原亭馬治「崇徳院」
マクラは夫婦の話から。ご本人の実話が、爆笑を呼ぶ小噺となっている。こんなマクラを聴けるのも、この独演会ならではの魅力。自虐的なネタに常連さんたちは大喜び。
この夫婦の話からの連想で、若旦那とお嬢様の恋煩いの演目へ。一席目にこの日のネタ下ろしを持ってきた。
幾代餅の清蔵や千両みかんの若旦那など、思い悩んで寝込んでしまうというエキセントリックな青年を描かせたら、絶妙に上手い馬治師匠。この演目の若旦那も、弱々しさと純真さが突き抜けていて、その極端さが可笑しさを呼ぶ。
店に出入りの熊さんの奮闘ぶりも楽しい熱演。じっくりと聴きたかった。

仲入り

金原亭馬治「らくだ」
二席目は、しばらく掛けていなかった得意の演目。ネタ下ろしの後は、馬治師匠のほっとした感も伝わり、慣れた演目で長講の熱演。
強気の兄貴分と弱気でお人好しの屑屋の対比をリアルに描いてみせ、後半の大逆転での爽快さが際立つ一席。この日も屑屋は絶好調で、最後はやくざな兄貴分も心を許すお友達になっていた。
ネタ下ろしの後だけに、客席も安心感を持って聴けて、皆さん大喜びの様子だった。終演後にロビーでお見送りしていると、皆さんの表情から喜んでいただけたことが伝わってくるのだ。


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