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「質問力」マニアがデザイナーの本を読んだらいろいろ繋がった話

nendo代表の佐藤オオキさんが書かれた「問題解決ラボ」を読みました。
読んでいるうち、過去に読んだあれこれとつながるような気がして本棚をひっくり返してまとめたメモ。

ひっくり返して分かったデザイナーの共通点
✔︎ デザイナーは「ます、答えをイメージする」
✔︎ 正解を見つけることよりも「正しい問題」を見つけることが大事
✔︎ 経営とデザインとは本質的に共通点がある。それは「選択と捨てる」こと

参考図書
『問題解決ラボ』
 nendo代表 佐藤オオキ著
『「売る」から「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講義』
 good design company 代表 水野学著
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』
 山口周著


1、デザイナーは「答え」から「問題」を見つける

このメモのきっかけとなった「問題解決ラボ」の一節です。

マーケティングとは問題から答えを出す技術です。もちろん正しい答えが出ないこともあります。デザイナーの思考は、まず遠く離れたところにポーンと「答え」をイメージします。それは身近なものでも、夢のようなものでもいい。「仮の答え」でいいんです。全然。そして、それを意識しながら目の前に山積みになっている課題と照らし合わせて、それに合った「正しい問題」を見つけること。
これが「問題解決ラボ」の正体です。

つまり、問題から答えを出すのではなく、まず答えをイメージしてそこから問題を、しかも「正しい問題」を見つけてしまうのがデザイナーだ、ということです。

これを読んで、「質問力」マニアである私はハッとしました。
「正しい問題」=「正しい質問」ではないかと。
その「正しい問題」を見つけるのに、答えから考えるという話は、どこかで読んだぞ、と思いました。

ありました。

山口周さんの本で紹介されている棋士の羽生さんのコメントを引用します。

詰将棋の場合は、短いのは特にそうですけど、ほとんど最後の局面をイメージするかどうか、というところなんですね。つくる場合も同じで、最後の局面をつくって、最初をどうするかというかたちで解いている人が多いような気がします。もちろん、最初から着実に考えていくという方法もあるんでしょうけど、実験の場では、そういう時間はないので。

いかがでしょう?

まず「最後の局面」を作ってから、そこにいくにはどうしたら良いかを考える、ということで最初にまず答えをイメージするところが共通ですね。

羽生さんはデザイナーじゃないじゃん、というところですが、この羽生さんの例は、山口さんが「直感」で思い浮かんだ打ち手の有効性を考察する文脈で出している例ですので、類似の例として挙げさせていただきました。

まとめ
☑️ デザイナーはまず「答え」をイメージし、それに合った「正しい問題」を見つけることができる思考を持っている


2、「正解を出すこと」より「解くべき問題を見つけること」の方が求められる時代に

なぜ私が「正しい問題」(=正しい質問)を見つけることに執着しているかというと、質問マニアとして、「どんな質問をするか」こそが、質問のアウトプットである「答え」の良否を決める重要な要素であり、もっと言えば、「質問」次第では解かなくていい質問に対する答えを用意するために無駄な時間を費やすだけでなく、その間違った答えに基づいて社内のリソースを誤って投入することになるからです。

この点について、水野学さんも「水野学のブランディングデザイン講義」で以下のように仰っています。

世の中にはいま「問題を解決する能力」を高く評価する風潮があります。ビジネスの世界でもソリューションといったりして解決策が重視されている。
でも、じつはいま本当に必要なのは、「問題を発見する能力」のほうじゃないかとぼくは思っています。
(中略)
いまの時代は問題を解決するより、見つけることのほうが難しいんです。

そして、「問題を解決する能力」自体が既に価値がなくなっているとするのが、山口周さんがお書きになった「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」です。

多くの人が分析的・論理的な情報処理のスキルを身につけた結果、世界中の市場で発生している「正解のコモディティ化」という問題です。

つまり、皆が同じような手法で問題解決するということは、「他人と同じ正解を出す」ということで、必然的に「差別化の消失」という問題が起こる、起こっているということです。

つまり、差別化の源泉は問題をどう解くか、ではなく、どの問題を解くか、になっていると言えます。

ここまでの、まとめ
☑️ 問題を解決することでは差別化は図れない世の中になっている
☑️ いまの時代は問題を見つけることが難しく差別化となり得る


3、「経営」と「デザイン」の本質的な共通点

山口さんはユニクロがクリエイティブディレクターのジョン・ジェイ氏やデザイナーの佐藤可士和氏、無印良品がプロダクトデザイナーの深澤直人氏に経営者が直接アドバイスを受けていることを紹介し、これは、「経営」と「デザイン」との間に本質的な共通点があるからとして以下のように仰っています。

では、両者に共通する「本質」とは何か?
一言で言えば「エッセンスをすくいとって、後は切り捨てる」ということです。そのエッセンスを視覚的に表現すればデザインになり、そのエッセンスを文章で表現すればコピーになり、そのエッセンスを経営の文脈で表現すればビジョンや戦略ということになります。
(中略)
この「本質の共通性」をちゃんと把握するためには、経営という営みの本質が「選択と捨象」であることを、しっかりと理解することが必要です。

水野さんもユニクロの例を紹介しながら「ブランド力のある企業の3条件」の1つに「経営の直下にクリエイティブ特区がある」を挙げています。

ブランド力を発揮している企業の多くは、つまるところ、経営戦略の中核にデザイン視点を取り込んでいるんです。
昨今は、「デザイン経営」という考え方が注目されたりもしていますが、クリエイティブ領域は、いまやそのくらい経営にとって重要なテーマになりつつあるということ。

まとめ
☑️クリエイティブ領域は経営にとって重要なテーマである
☑️「経営」と「デザイン」は「選択し捨てること」という本質的な共通性がある


4、まとめ

デザイナーの方や経営に美意識が必要だとされる方の本3冊にまたがり、その共通するところを見てきました。

背景として、
☑️ 問題を解決することでは差別化は図れない世の中になっている
☑️ 差別化は問題を見つけることであり、その能力が重要になっている

その問題を見つける手法の一つとして、
☑️ デザイナーはまず「答え」をイメージし、それに合った「正しい問題」を見つけることができる思考を持っている

だけでなく、
☑️クリエイティブ領域は経営にとって重要なテーマである
☑️「経営」と「デザイン」は「選択し捨てること」という本質的な共通性がある

ということがわかりました。

一方で、今から「美意識」や「デザイン」、「センス」を学ぶというのは難しそうです。

じつは、3名の筆者の方はそれぞれの本の中でビジネスパーソンがそういったものをどう身につけるか、書かれています。

また、「優れた意思決定」をするにもデザイナーの方の思考が役に立つとの話もあります。

明日は、この2点について今回同様、3つの本に横串を刺して見ていく予定です。


最後までお読みいただきありがとうございました。

お役に立ったところがあれば嬉しいです。

次回もよろしくお願いします。


なお、「質問力」マニア、ということで以下のような投稿もありますのでよろしければぜひ。




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