見出し画像

6月24日 楽譜の違法コピーの背景に、学校が!?

普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための質問例はこちら。

→著作権に対する意識の低さは問題と思っていたが、背景に学校での例外扱いがあるようだ。著作権を守ることは新たなコンテンツを生み出す力を守ることにもつながる。意識を高める何か良い方法はないだろうか?


1024年のこの日、イタリアの僧侶ギドー・ダレッツオがドレミの音階を定めたことに因んだ「ドレミの日」です。

ドレミ。
…が載っている楽譜について調べてみました。

楽譜。日本楽譜出版協会、というところがありまして、そこでいくつか会報を読んで驚いたのですが、楽譜は「コピー」されることが多く、収益が厳しいことが長い間問題となっているそうです。

そして、最もコピーが多いのが、特に演奏する人数が多い吹奏楽、合唱などだそうです。確かに部員が30人いたら30冊売れる楽譜が1冊ですもんね…

ちなみに、この問題に対応するために、「楽譜コピー問題協議会」という組織まであります。

その協議会によると、日本の楽譜出版界は、30数社あり、それら会社の収入は楽譜の売り上げが主たる収入源です。正確な統計はないようですが、卸価格ベースで120億円程度の市場規模と推計されています。

ベストセラーというものがない世界で、1つの作品が2千部、3千部というレベルの事業で収益性も厳しいようです。

その協議会の記事を読んでいて確かに辛いな、と思ったのが、音楽が好きな方々のコピーによって、得られる利益が得られず、経営的に厳しくなっている、という現状です。


日本楽譜出版協会が行った「楽譜利用に関するアンケート報告書」からいくつかデータをご紹介します。

まず、楽器を演奏する際の楽譜の利用率ですが、約8割は利用しています。


次に、楽譜の購入頻度ですが4割の人は年に1回未満しか実店舗で購入していません。


デジタル楽譜もあるそうですが、6割以上は購入経験がない、ということで、デジタル楽譜は浸透はしていないようです。


そして、コピー楽譜の利用実態です。
紙のコピー楽譜を利用した経験者は7割にもなります。

コピーを使う理由は、
☑️ 演奏仲間や教室から渡されたから 43.6%
☑️ 欲しい楽譜が売っていないから 33.4%

となっています。

こうした行為が楽譜出版業界に与える経済的損失は、95億円にも上る、と推計されています。

先程、市場規模が卸価格ベースで120億円程度、ということでしたから、その9割の影響がある、ということです。半分はコピーと考えればそれくらいになります…

これは、どこから来ているのか、というとなんと学校ではないか、と言われています。

実は、著作権法第35条で、学校で先生が授業で利用することを目的として利用する場合に限り、著作物を複製することが例外規定として許されているのです。
となると、音楽の授業などで楽譜をコピーするのもOKなわけです。
(注:教科書やドリルなど生徒等の購入を想定した著作物はNG)

こうした経験が、「楽譜ってコピーしていいんだ」という意識となって定着しているのではないか、ということです。

そりゃ、ダメですよね。

実際、海外に演奏に行った際に、コピーの楽譜を持っていると著作権の問題がクリアされているのが確認できないと、演奏させてもらえないそうです。著作権に対する認識の違いですね。

この問題を解決するスキームが、近年誕生しました。

もともと感染症拡大によって急遽オンライン授業を行うことになった際に問題になったのが、著作権法上、オンラインで広く資料を配布する場合には許諾が必要なことです。
先程の授業のためにコピーしていい、というのはあくまで対面授業に限ったものなのです(下図、出典:文化庁「授業目的公衆送信補償金制度の概要」)。


ところが、これでは許諾を取るまでオンライン授業ができません。そこで学校側は一定額を指定管理団体に支払うことで個別に許諾を取ることを不要とし、指定管理団体が著作権者に許諾を取り、補償金を分配する、というスキームができたのです(下図、出典同)。


脱線ですが、このスキームの解説文に「教育向けコンテンツのサブスクリプションサービス」とか、「1人年間数百円(珈琲1杯分)程度で何度でも利用可能」といった解説がされているのが、時代だなぁ、と思ってしまいました。


その指定管理団体が一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会、という、なんともすごい名前の団体です。流石にちょっと、と思ったのか、公式な文書にも略称、SARTRAS・サートラス、と書かれていることが多くなっています。

この「サブスク」の利用料金は、以下の通りです(出典:同)。


最後までお読みいただきありがとうございます。

1つでも皆様の頭の体操のネタとなれば嬉しいです。

こうした投稿を一昨年の7月からしています。以下のマガジンにまとめていますのでよろしければ覗いてみてください。



この記事が参加している募集

最近の学び

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?