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【Behind the Frame 〜とっておきの景色を〜 ストーリー考察】

『Behind the Frame 〜とっておきの景色を〜』はSilver Lining Studioが開発した、筆で絵に色を塗ることで先に進んでいく短編のポイント&クリックゲームだ。ゲームとしての難易度はかなり低く、ストーリーとビジュアル、BGMを含めた全体的な世界観を楽しむ作品となっている。特にストーリーが非常に優れており、それを補強するビジュアルとBGMも素晴らしい。作中全体に存在する小さな違和感や謎などが、終盤に一気に解決していくのはプレイしていて気持ち良かった。クリアまでの時間が小一時間ほどと、手に取りやすいボリュームなのも良い点だと感じた。

私は先週この作品をクリアしてから、うっすらとこの作品のストーリーについて考えていた。そして、ある程度考えがまとまったので、ここに書き残しておこうと思う。
断っておくが、この考察は私の考えに過ぎない。この作品に限らないことだが、作品に対する感覚・感情はプレイした本人だけの者であり、誰の意見であっても捻じ曲げることはできない。という点が重要なのであり、そのことを念頭に置きながら、参考程度に読んで頂けると幸いである。

以下ストーリーの解説を含みつつ考察を書いていくので、プレイしていないひとは今すぐ買ってプレイしてほしい。
プレイ後に不明点が存在したら、この記事に戻ってくるのが良いと思う。

以下、ネタバレ防止画像

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主人公は誰なのか?

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これについては作中で言及されている通り、「Amber」だ。
しかし、「Amber」ではあるが、現実世界に存在する「Amber」ではなく、向かいの家に住んでいる老人「JACK」が描いた絵の中の存在である。
モデルになった「Amber」は、作中の最終章で語られている通り、ニューヨークのデザイナーとなり、数十年前に引っ越してしまっている。
若かりし頃のJackは向かいに住むAmberのことを想いながら、彼女の姿を描き、しかし想いを伝えきれぬままAmberはニューヨークへ発ってしまう。
そして、数十年が経ってからも、その絵を壁の一面に置き絵画を続けていたのだろう。

Amberが絵画である伏線

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これについてはかなり多くのヒントが隠されている。
自分が気が付いた点について、列挙していこうと思う。

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・こちらの呼びかけに応じない老人
絵が実際に声を出せるわけではないので、聞こえているわけが無い。しかし、Amberはめげることなく声をかけ続けている。何ともけなげで切ない話だ。

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ベニヤで防がれた窓
Jackが倒れたことをAmberが確認したあと、窓はベニヤで防がれてしまう。
この瞬間にAmberの絵画はJackの部屋から展示会場へ移されていったものだと考えられる。輸送のために、絵を保護したのだろう。

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・変化しない部屋
絵の中では、時間はループしている物だと考えられる。
PCのデータは保存できず、パンや卵は食べても消費されず、カレンダーは捲ってもめくってもずっと同じ日付だ。
おそらく、絵の中のAmberもループを抜けるまでは同じことを繰り返していたのだろう。丁寧に毎日のやることリストまでメモされており、それを繰り返していたものと考えられる。
では、このループを破ったものは何なのか?それについては、次に説明をしていこう。

ループを破った原因は?

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ループを破る原因となったもの、それは「絵の具」である。
ゲームを始めた直後、Anberは黄色の絵の具しか所持していなかった。コンクールに出す予定の作品に必要な色は最低でも黄・緑・青・赤の4色が必要だったのにも関わらずだ。これは、Amberがコンクールに出す作品を完成させてしまうと、ニューヨークへ渡ってしまうという実際の出来事とリンクしており、絵が完成しないことにより、Amberは絵画の中に止まった時間と共に存在していたのではないか…と考えた。しかし、緑の絵の具を見つけたところからストーリーが動き始める。緑の絵の具のフレーバーテキストは「万物を蘇らせる色。」つまり、AmberがJackとの思い出を蘇らせ、どのような相手だったかを思い出し、もう一度絵を描くための準備を整えるという全体的なストーリーの暗示になっている。

「私」の色の意味とは?

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作中において、紫の絵の具を取得した際にAmberは「私」の色と説明する。
何故、紫が私の色なのか?単純に考えれば、いつも来ている服が紫色だから…一番好きな場所だったから…となるだろうが、少し待ってほしい。私はこれがただの服の色ではないだろうと考察した。

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上記の画像は、Jackと2度目の出会いを果たし、お互いが知り合いとなった時の絵画だ。
Jackは黄色、Amberは赤色の傘を差している。(部屋にあるマグカップもお互いに傘と同じ色のものを使っている。)
彼らは突然の雨に打たれ、階段の下に逃げ込んだ。そこで出会った二人は会話を交わし、これから始まる関係性のスタートラインに立ったのだ。
では、少し考えてみよう。
Amberは「赤」の傘を差し、「青」の雨に降られたことにより、Jackと出会った。Jackも同じく、「黄」の傘を差し、「青」の雨に降られたことにより、Amberと出会うこととなった。

赤と青を混ぜると「紫」に。

黄と青を混ぜると「緑」に。

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Amberの色が紫なら、Jackは緑だろう。

互いの人生が交差した瞬間に、「私」の色が完成したのだ。

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実際、Jackと出会う前の1度目も2度目もAmberは白のワンピースを着ていた。白の意味は「純潔の象徴」。つまり、Amberは同じ絵画の趣味を持つJackと出会うことによって文字通り「人生が色づいたような」経験をしたのだと考えられる。

Jackのサイン

思い出の絵画を通じ、Jackを思い出したAmberは彼の名前を忘れることが無いように、名前を書き残す。

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部屋の隅に現れた黄色い部分に鏡文字でJACKと文字を描く。

置いてあった時には、書かれることの無かった彼の名を。

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展示会場でAmberの絵が展示される際には、左下に彼の使った傘の色と同じ黄色をバックにJACKのサインが残されている。
Jackが書いたものなのか、Amberが絵の中から書いたものなのか、真相は分からない。間違いないのは、Amberが隣に住んでいたころからこの絵は存在し、Jackが病に倒れるまでの間、彼のアトリエの全体が見渡せる位置に彼女の絵が飾られていたことだ。

その後の二人

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Amberがニューヨークへ渡ったのち、彼女はデザイナーとして活動し、子供や孫に囲まれる人生を送ったと考えられる。Jackは絵を描き続け、個展を開くことができるほどに大成した。
Amberは描かれた自分を見て、Jackとの思い出に涙を流し、絵の中の若かりし頃の自分に彼との大切な思い出が詰まっている筆を託したのだった。

以上がこの作品に対する私なりの考察だ。
語り切れていない場所もあるが、自分なりにある程度まとまったのでこうして記事にさせていただいた。
クリア済みの皆さんも、2週目をやることによって新たな発見などがあるかもしれないので、時間を見つけてやってみることをお勧めしたい。


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