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河川のインフラ整備(Improvement of Water Flow)

2024年4月21日に熊本県五木村が、川辺川にダムの建設計画の受け入れを正式に表明したことが報道されました。
1965年の球磨川大水害時に既存のダムが役に立たなかったことを受けて、1966年に事業を開始した球磨川水系の川辺川ダム計画には多くの反対がありました。2020年の豪雨では球磨川流域で多くの河川氾濫が起きましたが、ダムによらない治水方法を探る動きに変わりはなかったのです。
ダムによらない治水の具体的な計画がない中、ダムによる治水計画の検証によってダムの効果が示されました。また、川辺川ダム計画を後押ししたのは、国と県による五木村の振興支援が約束されたこともあったからでしょうか。五木村が約100億円の振興策を受け入れたので、地元が建設計画の受け入れ表明をしたともいえます。
日本のインフラ整備で無視できないのが河川の整備です。日本は山の多い急峻な地形ですが多くの人が平地に住んでいるのは、生活基盤が河川洪水の氾濫原である沖積平野にあるからです。昔から日本人は洪水を幾度となく経験してきており、縄文時代から治水が非常に重要な課題だと認識しています。組織的な治水は遅くとも古墳時代に始まったといわれており、河川の改修などによる治水工事は今も続いています。
日本人は昔から幾度も地震と水による自然災害を経験してきました。私たちの自然災害との付き合いは将来にわたって長く続きます。自然災害のうち地震は予測がつきませんが、洪水の発生は予測ができて治水計画を立てることができます。治水計画を立てるときダムによる治水をするのか、他の方法による治水を考えるのかは、ひとえにどのように環境アセスメント報告書を検証するかにかかっています。
治水計画や水害対策計画が、地球環境の影響を考慮しないで作成されることは考えられません。しかし、治水計画に基づいて治水事業が進められていたにもかかわらず、水害が起きることがあります。環境アセスメントが純粋に科学的知見によってなされなかったか、時の権力者や利益享受者に忖度した報告書になっていたからかもしれません。環境アセスメントは私たちの生活を左右しますから、純粋に科学的見地に基づいてなされるべき重要な報告書なのです。
“今回の雨量は「想定外」です”というコメントをよく聞きます。‘計画によると堤防が決壊して洪水が発生することはないはずだ’という先入観があると思われますが、過去の計画に基づいて「想定外」ということは許されるものではありません。各地域の災害対応計画は絶えず見直す必要があり「想定外」といって責任を逃れ、緊急時の対応が遅すぎたり少なすぎたりするのでは被災者は救われません。
水に関するハードのインフラ整備のうち、忘れてはならないのが洪水対策の施設と設備の整備です。水害は毎年のように発生していますから想定可能な自然災害です。水害は自然災害ですから「想定外」でしたということは許されません。河川氾濫などの緊急時に対応する避難所とライフラインは、最優先に整備されていて当然なのです。
乾燥地域のドバイで1年分の雨が1日で降ったり、中国や南米で記録的な大雨が続いて洪水が発生したりのニュースが報道されました。世界中で異常な気候が発生して、世界中どこでも洪水が多発する気候はもう珍しくありません。
人が利用できる水資源は限られていますから、どのような治水をして、どのような灌漑をするかの計画を立てることがあります。ダムをつくり川の流れを変える計画によっては、地域の気候風土に影響を与えてしまうことがあります。地球環境に取り返しのつかない状況になっているところも少なくないのです。整備計画の時点で、環境アセスメントがどのように評価されていたかが問われているのです。
人が生活する上で治水が重要なことはどこでも同じですが、水害に対する対策には違いがあるようです。地域の発展に結びつくだろうとの理由により、基本的にダムをつくって水の流量を調整する方法が多いようです。
日本の技術力(ハード)をもって治水計画を立てるサービス(ソフト)をすれば、先進国の仲間として政府開発援助(ODA)にふさわしい仕事ができます。日本が治水分野で世界をリードしようとするならば、地球環境を考慮した科学的知見に基づいた環境アセスメントができて、地域の総合的な開発計画を立案できる組織が必要です。技術力(ハード)が発揮できる人は少なくありませんし、日本型の運営ができる人も少なくありません。いま日本に必要なのは、国際基準に基づいて組織を束ねてプロジェクトマネジメントができる人です。
日本が先進国の仲間に留まろうとするならば、日本型で仕事ができる人ではなく、国際的に通用する規格と契約を理解する人を増やさなければなりません。今からでも人や教育に使う予算を増やす検討を始めれば、遅すぎることはありません。
 
 追伸:水がなければ蚊は発生しませんから、排水施設や排水溝のたまり水を徹底的になくす活動は日本でも世界でも需要のあるサービスと思われます。

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