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[一語一会の種 #10] Overpopulation

Overpopulation: 人口過剰.

Aldous Huxleyの"Brave New World Revisited"というノンフィクションに出てくるテーマの一つだ.1932年出版の"Brave New World"というディストピアを踏まえつつ再評価するノンフィクションで,出版されたのは1958年であるが,現在でも考えるべき点が多くあることがある.したがって,そこに含まれるテーマについても今後取り扱っていきたいと考えている.

今回は人口過剰.1950年代後半の当時においても人口爆発は非常に大きな問題であったことがうかがわれる.当時は,現在では悪く言われがちではあるが,農薬のDDTや医療・薬品の進歩によって,死亡率が低下した.一方で特に大戦終結直後ということもあって出生率が維持された.その結果として人口が大幅に増えることとなった.

結果として,急激に生じがちな死,例えば感染症などの病気や出生時の死亡は減少したものの,そしてそれは倫理的に正しいことであると思われるものの,生活の質が低下して,長期的に見て苦痛ある生き方をせざるを得ない人が増えたという点では,問題がある.

もちろん,Huxleyがいうように,遺伝的に劣った人たちでも生き延びることができる世界になった,ということは一定正しいのかもしれない(そして,これが彼の主張かというと自信はないのだが,当時多くの人がそういう考えを持っていたことはよく聞く).

しかし,これはナチスのユダヤ排斥の論理に通ずるところがあるから,というだけではなく,個人的には違和感がある.
まず,生命科学的に見たときにも,多様性を確保しておくことは種の生存において非常に意味がある,つまり急な環境変化に対して対応できる可能性が高まる,ということである.
また,そして社会はそういった弱さもある人達を包摂できるように形成されてきた,努力を続けてきたと考えられる.ここでいう包摂とは,能力等に関係のない肌の色などの形質はもちろん,弱みが際立ってしまうような人でもその人のできること,強みとしていることを活かして生きてもらうということである.

だから,今後も人口がまだまだ増えていく中でも,そういった差別化,個性を活かしていく社会をつくっていきたいし,そのための科学技術の進歩を願うのだ.(もちろん科学技術によってそれがなければ生きられないという状態に至ってしまうのは危険であると思うが,それは多様化によって一定回避できるのではないだろうか.)

さて,世界の人口は今年の11月に80億人を突破すると推計されている.さらに2058年には100億人にも達するという (UNFPA Tokyo | 世界人口は今年11月に80億人に:国連が「世界人口推計2022年版」を発表).正直なところ,2011年に70億人を突破した後,11年でさらに10億人を上乗せしてしまったという人類には驚きが隠せない.

より多くの人がより良い生活をできるよう,みんなで保証できるような枠組みにしていく必要がある.適正な家族計画であったり(もちろん自由は妨げない),富の再分配であったりが重要となるだろうし,これまで取り上げてきた言葉にもきっとヒントがあると思うので,改めて考えていきたいし自分を顧みていきたいと思っているところだ.


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