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#01 一番古い話

結論からいうと、俺が5歳の頃に患った難病というのは、抗リン脂質抗体症候群という指定難病の一種です。

抗リン脂質抗体症候群の症状は、
『動静脈血栓症や妊娠合併症以外に、心臓の弁の異常(弁膜症)、四肢にみられる網目状の皮疹(網状皮斑)、血小板減少、腎障害、神経症状などがみられることがあり、抗リン脂質抗体関連症状とよばれています。 また、まれですが多臓器の血栓症、臓器障害をきたし、急激な経過をとり致死率の高い劇症型APSという病型もあります。』

ネットで調べるとこんなふうに出てきます。
ちなみに俺が患っているのは、後半に書いてる急激な経過をとり致死率の高い劇症型APSというやつだと思います。
そう診断された記憶はないけど、エピソードを辿ればほぼ間違いなくそれです。

僕の人生は大別すると5歳以前と5歳以降に別れます。早い話、5歳で発病して以来、人生が180度変わってしまったのです。

5歳までの俺はどこにでもいる平凡な男の子でした。いや、私立の保育園に行っていたし、ピアノや絵画を習っていたので裕福な家の子だったのだと思います。しかも足が早かった。
園で一番早かったし、大きな陸上大会に出場した記憶も朧げにあります。

超リア充ですね。

それがある日突然変わりました。
春夏秋冬いつだか分からないある日目を覚ますと、なぜか祖母の寝室で横になってしました。
目の前には曇りガラスの引き戸があり、その僅かな隙間から弟達の遊ぶ声と祖父母の声が聞こえてくる。ああ、そうか。お母さんが入院したからお婆ちゃんの家に泊まってるんだ。
そう納得して二度寝したのが、ある意味最後の記憶です。

次に目を覚ますと、目の前が真っ暗でした。
意識はぼんやりとあって微かにお母さんの声が聞こえる。入院してたのにどうしてだろう?お父さんの声がお父さんじゃないみたいだ。

次に目を覚ますと、見慣れた景色が広がりました。
白い天井、白い壁、ここ病院だ。そう思ったのも束の間、お母さんに「大丈夫?」と聞かれ「大丈夫!」と答えました。
答えた後になって頭の右側から管が伸びていて、その中を見たこともない量の血液が走っていることに気づいて。

あ、大丈夫じゃないかも。と思った。

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