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文語俳句と口語俳句の違い 〜使う言葉が違うだけ〜短文エッセイ

俳句にご興味のあるnoteのみなさまに、俳句の様々なことについてご紹介をしていく記事です


「文語俳句と口語俳句の違い」

俳句は現在、文語俳句と口語俳句に大きくわけることができるようです。

文語俳句とは「古典語を基本にしてつくる伝統的な俳句」です。

口語俳句とは「現代語を基本にしてつくる現代的な俳句」です。

古典語でつくるか、現代語でつくるか、基本使用をする言葉が違うだけでどちらも『俳句』です。

ただシンプルに「使う言葉が違うだけ」です。

*575の型・季語・切れ字使用など基礎・基本はほぼ同じです

ですので文語俳句・口語俳句ともに、それぞれの言葉を使って、これからも『俳句』をつくっていけば良いだけなのだと思います。


そうした基本的なことを積み上げていくことができずに、特に口語俳句の分野では、

・崩す必要のない「俳句の基礎・基本」まで崩す

・斬新、奇抜な作品やそのつくり方を追求

・古典語、歴史的仮名遣いとの混用

・しゃべり言葉で作品をつくることが流行

など様々な事象が、過去から現在にかけて起こりつづけてもきたようです。

俳句とその基礎・基本を活かさず、むしろそれを崩す方向に向かいつづけた結果、

口語俳句では『現代語で《俳句》をつくる』というごく当たり前の方法が十分に探求されず、確立されてこなかった経緯があります。

口語俳句をつくる気運・運動が現在まで、高まっては消え、高まっては消えつづけてきたのはおそらくそのためです。


文語・口語俳句の違いをより詳しく見ると、下記のようになりそうです。

◯文語俳句(古典語俳句・伝統俳句)

・文語体(古い時代の文体)を基本にして詠む
・古典語を基本使用
・古典的な切れ字 や・かな・けり 等
・575の定型・季語を活用
・歴史的仮名づかい

◇例句
赤蜻蛉筑波に雲もなかりけり
正岡子規

ものの芽のあらはれ出でし大事かな
高浜虚子

冬菊のまとふはおのがひかりのみ
水原秋桜子

寒雷やびりりびりりと真夜の玻璃
加藤楸邨


◯口語俳句(現代語俳句・現代俳句)

・口語体(現代語の文体)を基本にして詠む
・現代語を基本使用
・現代的な切れ字 よ・か・ぞ 等(要検証)
・575の定型・季語を活用
・現代仮名づかい
・現代の話し言葉そのものの詠み方も可能

◇例句
雲は秋運命という雲も混じるよ
金子兜太

霧に白鳥白鳥に霧というべきか
金子兜太

じゃんけんで負けて蛍に生まれたの
池田澄子

居留守して風鈴鳴らしたりもして
夏井いつき

※上記の俳人の方々は、口語俳句だけでなく、文語俳句を多く、もしくは主としてつくられています


下記は、俳句における
文語・口語の大まかな図です

◇文語=文語体=古典語=古い時代の文体

◇口語=口語体=現代語=書き言葉(文語体)
         ∟==話し言葉(口語体)

◇仮名づかい 歴史的仮名遣い 現代仮名遣い

◇その他 記号・句読点・外国文字など


下記は、口語俳句で使う
現代的な切れ字の候補です

「現代切れ字  18字( 推奨 )」
よ・か・ぞ・と・に・へ・せ・で・まで
ず・れ・け・た・が・て・は・な・こそ


これらの分類や例句から、文語俳句だけでなく口語俳句も『俳句』だということが、より明確に感じられるのではないかと思います。

また口語俳句をつくる場合、斬新・奇抜な作品ばかりでなく、『俳句』をつくることも一方で重要だということが見てとれます。

『俳句』としての基盤を確立することがまず第1の目標だということも、過去から学べるように感じました。


最後に、

文語俳句と口語俳句は「使う言葉が違うだけ」

文語俳句は、古典語が基本
口語俳句は、現代語が基本

575の型・季語・各々の切れ字を使うなど、
俳句としての基礎・基本はほぼ同じ

こうした考えにたどり着き、シンプルにそう記すことができるようになるまでに、個人的に約5年の月日がかかりました。


いつも
ご覧いただき
ありがとうございます


*個人的な見解をまとめた記事です

*至らない点、充分に書き尽くせていない部分もあると思いますがご容赦ください

*俳句については個人・団体によって様々な見解があります


◇引用 作品収録句集

正岡子規  句集『寒山落木』
(第三巻、1894年)

高浜虚子  句集『五百句』
(改造社、1937年)

水原秋桜子  句集『霜林』
(目黒書店、1950年)

加藤楸邨  句集『寒林』
(交蘭社、1939年)

金子兜太  句集『百年』
(朔出版、2019年)

金子兜太  句集『旅次抄録』
(構造社、1977年)

池田澄子  句集『空の庭』
(人間の科学社、1988年)

夏井いつき  句集『伊月集 梟』
(朝日出版社、2020年)


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