マガジンのカバー画像

短編

38
今まで投稿した短編を纏めました。
運営しているクリエイター

記事一覧

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係3 (後編)

(5,282文字)  石田と亜希子は、七時に社務所を訪ねた。宮司は改めて禁止事項を告げた。  …

来戸 廉
2週間前
10

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係3 (前編)

(3,792文字) 1.観光地PR活動  朝からどんより曇った空を見上げて、気象庁が梅雨入り…

来戸 廉
2週間前
12

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係2 (後編)

(2,502文字) 「今度は、何?」  お手洗いから戻ってきた田所は、何か感じ取ったみたいだ。…

来戸 廉
2週間前
11

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係2 (前編)

(4,001文字) 1.田所さん@ゴシップ好き  月曜日。  朝からどんより曇っている。  田…

来戸 廉
2週間前
11

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係(後編)

3 リダイアル  リダイアルボタンを押すと携帯電話の番号が表示された。数回の呼び出し音の…

来戸 廉
1か月前
10

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係(前編)

(4,068文字) 1 名無しの権兵衛さん 「はいっ?」  五ノ鹿町観光協会に勤務する菅野亜希子…

来戸 廉
1か月前
11

【短編】白い記憶(2/2)

(3,023文字)  眩しくて目を覚したら、燦々と降り注ぐ陽のもと、バス停のベンチで寝ていた。  あれっ、ここはどこ?  白い壁の家は?  あの女の人は?  きょろきょろと見回す。辺りにはのどかな景色が広がっている。  あれは何だったんだろう。  思い出そうとしても、頭に靄が掛かっている。  夢だったのだろうか。僕は頭を何度も振った。  とにかく叔父の家へ急ごう。  バス停を見ると滝川とあった。時刻表にM駅行きがあるのを確認して、ほっとした。しばらく歩くと坂下のバス停があ

【短編】白い記憶(1/2)

(2,753文字)  妻が庭の芝に散水している。その傍らを三歳になる娘が走り回る。白いワンピ…

来戸 廉
1か月前
5

【短編】なごり雪(2/2)

(3,714文字) 5  金沢街道を歩いて、鶴岡八幡宮に向かう。  明子は岡村の腕を取って歩く…

来戸 廉
1か月前
9

【短編】なごり雪(1/2)

(4,156文字) 1  岡村にとって、この年の忘年会はあまり気乗りがしないものだった。ここ…

来戸 廉
1か月前
11

【短編】その日

(4.698文字)  おーい。お銚子の首を摘まんで掲げたところで、妻と目が合った。まだ寒さが…

来戸 廉
1か月前
7

【短編】他人のそら似

(2,747文字) 「ねぇ、あの萌葱色のスカートの人、誰かに似てない?」  土曜日の午後、妻に…

来戸 廉
1か月前
10

【短編】通りすがり

(3,188文字) 「あのぅ、もし」  昼下がり。通りすがりに声を掛けられた気がした。立ち止ま…

来戸 廉
2か月前
11

【短編】パンとビール(3/3)

(2,542文字) 【短編】パンとビール(2/3)から続く  ごとっ。私は今だとばかりに机の下部を膝で蹴り上げた。思いの外、大きな音がした。綾子は椅子から飛び上らんばかりに驚いた。 「何に、もう! びっくりするじゃない」 「ごめん、そんなに効くとは思わなかった」 「もう、余計なことしなくていいから、早く続きを聞かせてよ」 「ごめん、ごめん。それでね、男は『イヤ違うんです、財布を出そうとしただけなんです』と懸命に否定したらしいんだ……」  しかし男は包丁を握ったままだった