【短編】パンとビール(3/3)
(2,542文字)
【短編】パンとビール(2/3)から続く
ごとっ。私は今だとばかりに机の下部を膝で蹴り上げた。思いの外、大きな音がした。綾子は椅子から飛び上らんばかりに驚いた。
「何に、もう! びっくりするじゃない」
「ごめん、そんなに効くとは思わなかった」
「もう、余計なことしなくていいから、早く続きを聞かせてよ」
「ごめん、ごめん。それでね、男は『イヤ違うんです、財布を出そうとしただけなんです』と懸命に否定したらしいんだ……」
しかし男は包丁を握ったままだった