来戸 廉

主に、短編、ショート・ショートを書いています。過去作、新作を交えて公開しております。好…

来戸 廉

主に、短編、ショート・ショートを書いています。過去作、新作を交えて公開しております。好きな作家は、星新一、阿刀田高、サキ、池波正太郎、柴田錬三郎、葉室麟 他。

マガジン

  • 短編

    今まで投稿した短編を纏めました。

  • 【連載】ターちゃんとアーちゃんの歳時記

    私の息子、ターちゃん(当時5歳)とアーちゃん(同じく3歳)の一年間を、絵本風に綴ってみました。 睦月《むつき》   (1月)   初詣、お正月 如月《きさらぎ》  (2月)   雪、お遊戯会 弥生《やよい》   (3月)   卒園式 卯月《うづき》   (4月)   入学式 皐月《さつき》   (5月)   目覚まし時計、アーちゃんの変化 水無月《みなづき》 (6月)   潮干狩り、プール 文月《ふみづき》  (7月)   カマキリ、ターちゃん警察 葉月《はづき》   (8月)   セミ取り、お願い 長月《ながつき》  (9月)   自転車、写真 神無月《かんなづき》(10月)  かけっこ、えのぐ 霜月《しもつき》  (11月)  ミカン狩り 七五三 師走《しわす》   (12月)  クリスマス、大掃除

  • ショート・ショート

    今まで投稿したショート・ショートを纏めました。2,000文字以下の短い話ですが、「落ち(下げ)」に拘って書いてます。

  • ショート・ショート ちょびっとブラック編

    今まで投稿したショート・ショートを纏めました。少しブラックめいたもので、2,000文字以下の短い話です。「落ち(下げ)」に拘って書いてます。

  • 短編 ちょびっとブラック編

    少しブラックめいたものを纏めました。

記事一覧

固定された記事

サイトマップを作りました。

 改めまして、来戸 廉と申します。主に、短編、ショート・ショートを書いています。過去作、新作を交えて公開しております。  好きな作家は、星新一、阿刀田高、サキ、…

来戸 廉
3か月前
62

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (9)

9.冷蔵庫 「えっ? 冷蔵庫の話? 何だ、それ?」 「焼き鳥屋さんでジェニーさんに話したんでしょう。私にも教えて。何?」  環に詰め寄られても、健二には記憶がない…

来戸 廉
11時間前
5

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (8)

8.睡余 「おはよう」  目覚ましに起こされて、二日酔いがのそりのそりと居間に入ってきた。案の定、ジャケットもスラックスもしわくちゃだ。 「俺、何時頃に帰ってきた…

来戸 廉
1日前
4

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (7)

7.魔法の薬  ジェニーのピッチが上がって目が据わってきた。水割りは途中からストレートに替わっている。 「私たち、もう親友よね?」 「うん。ジェニーがそう言ってく…

来戸 廉
2日前
5

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (6)

6.女二人  ――先ほどの女の人はきっと来る。  環はそう確信した。だから環は家に帰るのを延期して、健二のアパートで二人を待っていた。  十二時を回った頃、イン…

来戸 廉
3日前
8

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (5)

5.焼け木杭  健二は約束の**ホテル内の喫茶店に約束の時間より五分早めに着いた。だがジェニーは既に待っていた。  健二は直前まで迷っていた。いずれ起業したい気…

来戸 廉
4日前
5

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (4)

4.再会  二年ぶりにジェニーから電話が掛かってきたのは、先月のことだった。  携帯電話に知らない電話番号が表示された。少し逡巡して出ると、「久しぶりね」と柔ら…

来戸 廉
5日前
10

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (3)

3.祭りの後  日曜日の朝。  健二は寝不足を顔に貼り付けて居間でソファーに座っていた。不機嫌な気を全身から発している。  健二は今日は人と会う約束がある。濃いめ…

来戸 廉
6日前
7

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (2)

2.関頭  結婚式当日。  案の定、環は寝坊した。 「何で、起こしてくれなかったのよ」 「六時頃から、何度も起こしてたんだぞ」 「低血圧だから、朝が弱いのよ」 「だ…

来戸 廉
7日前
9

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (1)

1.闖入者  環が突然訪ねてきたのは、金曜日の夜八時頃だった。  健二は帰宅したばかりで、風呂が沸くのを待ちながら、ソファーでくつろいでいるところだった。 「宅…

来戸 廉
8日前
13

「五ノ鹿町観光協会案内係3」で、拙作はショート・ショートと短編を合計して100本となりました。
これまで通り、特に方向を絞ることなく、思いつくままに書いていこうと思います。よろしければフォローして下さい。スキを頂きますと、とても励みになります。

来戸 廉
9日前
5

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係3 (後編)

(5,282文字)  石田と亜希子は、七時に社務所を訪ねた。宮司は改めて禁止事項を告げた。  八時には孝と高蔵を含めた参加者六人全員が集まった。加えて、五人の立会人と…

来戸 廉
9日前
9

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係3 (前編)

(3,792文字) 1.観光地PR活動  朝からどんより曇った空を見上げて、気象庁が梅雨入り宣言するのもそう遠くないと、亜希子は思った。先日来、雨の日と曇りの日が繰…

来戸 廉
10日前
11

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係2 (後編)

(2,502文字) 「今度は、何?」  お手洗いから戻ってきた田所は、何か感じ取ったみたいだ。 「犬を捜してくれって……」 「あなた、今度はちゃんと断ったわよね」 「は…

来戸 廉
11日前
10

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係2 (前編)

(4,001文字) 1.田所さん@ゴシップ好き  月曜日。  朝からどんより曇っている。  田所路子は花粉症を患っている。くしゃみと鼻水が甚だしい。  だが彼女は度々…

来戸 廉
12日前
10

【連載】ターちゃんとアーちゃんの歳時記 番外編

如月 べっぴんさん 「あら、別嬪さんね」  リョウちゃんが、アーちゃんのうちに遊びに行った時のことです。道すがら、アーちゃんと話すのに夢中で、誰かにぶつかりそう…

来戸 廉
13日前
12
固定された記事

サイトマップを作りました。

 改めまして、来戸 廉と申します。主に、短編、ショート・ショートを書いています。過去作、新作を交えて公開しております。  好きな作家は、星新一、阿刀田高、サキ、池波正太郎、柴田錬三郎、葉室麟、他です。  幼少の頃は漫画ばかり読んでいました。小学4年生ぐらいだったと思いますが、夏休みの宿題で読書感想文を書くというのがありました。その時選んだ本が、「813」でした。数字だけの書名に惹かれて手に取りました。ルパン物です。面白かったでのすが、読書感想文を書くにはそぐわない本でした。

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (9)

9.冷蔵庫 「えっ? 冷蔵庫の話? 何だ、それ?」 「焼き鳥屋さんでジェニーさんに話したんでしょう。私にも教えて。何?」  環に詰め寄られても、健二には記憶がない。 「夕べは結構飲んだからな」 「そんなの、関係ないわ。ほら、ちゃんと思い出して」  環は容赦ない。 「冷蔵庫ねえ……。なんでそんなこと言ったのかな。逆に俺が知りたいくらいだよ……」  健二はつぶやく。酩酊した脳が紡ぎ出した虚構か、はたまた妄想か。健二は首を捻る。  ――そう言えば先日帰省した時、実家のが新しくな

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (8)

8.睡余 「おはよう」  目覚ましに起こされて、二日酔いがのそりのそりと居間に入ってきた。案の定、ジャケットもスラックスもしわくちゃだ。 「俺、何時頃に帰ってきた?」  ――私の苦労も知らないで。  環に悪戯心が湧いてきた。声を落とし気味にして、 「十二時過ぎよ。もう大変だったんだから。ニイニは私が寝ていたベッドに潜り込んできたんだから」 「えっ、嘘だろう?」  健二は、驚きと疑いが混ざった目で環の表情を探る。 「本当か?」  環はこくんと頷く。 「俺、その……、お前に

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (7)

7.魔法の薬  ジェニーのピッチが上がって目が据わってきた。水割りは途中からストレートに替わっている。 「私たち、もう親友よね?」 「うん。ジェニーがそう言ってくれると嬉しいわ」 「タマキは、秘密を守れる?」  ジェニーが声を落とした。人懐こいジェニーの顔から笑いが消えた。酔った目でじっと環を見つめたまま、瞬きもしない。環は蒼い瞳に吸い込まれていくような気がした。環は目を閉じて頭を振る。再び目を開けると、射るようなジェニーの目がまだそこにあった。環は思わずたじろぐ。 「ど

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (6)

6.女二人  ――先ほどの女の人はきっと来る。  環はそう確信した。だから環は家に帰るのを延期して、健二のアパートで二人を待っていた。  十二時を回った頃、インターホンが鳴った。 「ケンジを連れて来ました」  ドアを開けると、金髪の女性が立っていた。正体なく酔った健二に肩を貸しながら。 「手伝ってください」  環は、彼女の流暢な日本語に驚いた。  環はもう片方の肩を支え、ちょっと気を抜くとその場に崩れそうになる健二を叱咤しながら、二人で何とかベッドに寝かせた。  ――朝

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (5)

5.焼け木杭  健二は約束の**ホテル内の喫茶店に約束の時間より五分早めに着いた。だがジェニーは既に待っていた。  健二は直前まで迷っていた。いずれ起業したい気持ちはあるが、それに向けて具体的に何か準備をしていたわけではない。彼女が言うように、思い立つなら、身が軽い時の方がいい。それは分かる。それでもこの誘いが千載一遇の好機か、それともかなり分が悪い賭か、健二は判断が付かずにいた。  だがジェニーの顔を見た途端、健二の心は決まった。席に着くなり開口一番、 「折角の誘いだけ

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (4)

4.再会  二年ぶりにジェニーから電話が掛かってきたのは、先月のことだった。  携帯電話に知らない電話番号が表示された。少し逡巡して出ると、「久しぶりね」と柔らかい声が流れてきた。頭は忘れていたが、耳が覚えていた。  短い挨拶の後、 「会って相談したいことがあるの。急だけど今週の土曜日に時間作ってもらえない?」  と切り出されたのだった。  健二は約束の時間より十分早く指定されたホテルに着いた。ロビーに入ると、ジェニーが立ち上がって手を上げた。 「待った?」 「ううん。

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (3)

3.祭りの後  日曜日の朝。  健二は寝不足を顔に貼り付けて居間でソファーに座っていた。不機嫌な気を全身から発している。  健二は今日は人と会う約束がある。濃いめのコーヒーでぼーっとした頭を少しでもましな状態にしたかった。 「ねえ、ニイニ。頭痛薬、ない?」  昼前、死にそうな声を引き摺りながら、環がほとんど這いずるように居間に入って来た。ソファの傍らにへたり込み、ぼさぼさの髪を右手で掻き上げる。  大きめのパジャマの胸元のボタンを閉めていないようで、ずれた襟首から左肩のブ

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (2)

2.関頭  結婚式当日。  案の定、環は寝坊した。 「何で、起こしてくれなかったのよ」 「六時頃から、何度も起こしてたんだぞ」 「低血圧だから、朝が弱いのよ」 「だから早く、寝ろって言っただろう」 「そう言われてもね。乙女は肌の手入れとか、色々と大変なのよ。ニイニ、眠気覚ましに熱めのコーヒー、お願い」  八時過ぎ、慌ただしくアパートを出た。持たされたキャリーバッグがやたらと重い。駅まで徒歩十分弱。やっと駅に着いた時には、健二はくたくたになっていた。 「帰りは絶対タクシーを

【連載】冷蔵庫と魔法の薬 (1)

1.闖入者  環が突然訪ねてきたのは、金曜日の夜八時頃だった。  健二は帰宅したばかりで、風呂が沸くのを待ちながら、ソファーでくつろいでいるところだった。 「宅配便でーす。お届け物でーす」  インターホンから間延びした声が流れた。 「はーい」  ――何か頼んでいたかな。  ハンコを手にいそいそとドアを開けると、そこに環がいた。 「えっ、何で、お前が……?」  目を点にしている健二を後目に、 「駄目だよ、ニイニ。ちゃんと確認してからドア開けないと。私だったから良いようなも

「五ノ鹿町観光協会案内係3」で、拙作はショート・ショートと短編を合計して100本となりました。 これまで通り、特に方向を絞ることなく、思いつくままに書いていこうと思います。よろしければフォローして下さい。スキを頂きますと、とても励みになります。

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係3 (後編)

(5,282文字)  石田と亜希子は、七時に社務所を訪ねた。宮司は改めて禁止事項を告げた。  八時には孝と高蔵を含めた参加者六人全員が集まった。加えて、五人の立会人と三人の給仕人も顔を揃えた。宮司から全員の紹介と神事の注意事項が説明された。  九時、亜希子を除いた全員が社殿拝殿に入っていった。  亜希子は神事が終わるまで、これといってやることがないため、一旦協会に帰ることにした。終わるのは、宮司が言うには、大体二時間後。十一時少し前に戻って来ればいいだろう。  締め切っ

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係3 (前編)

(3,792文字) 1.観光地PR活動  朝からどんより曇った空を見上げて、気象庁が梅雨入り宣言するのもそう遠くないと、亜希子は思った。先日来、雨の日と曇りの日が繰り返している。  月曜日。  石田雄介マネージャーが所員、と言っても田所路子と菅野亜希子の二人だけだが、を集めて朝礼を行った。 「私がここに赴任してきてから、二年と少し経ちました。先月、菅野さんが、我が五ノ鹿町観光協会のホームページを立ち上げてくれました。ですが、まだ五ノ鹿町の紹介と協会のあらましだけしかあり

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係2 (後編)

(2,502文字) 「今度は、何?」  お手洗いから戻ってきた田所は、何か感じ取ったみたいだ。 「犬を捜してくれって……」 「あなた、今度はちゃんと断ったわよね」 「はい。でも先方から一方的に電話切られて……。明日、写真持って、来るそうです。先輩どうしましょう」 「あなたねーっ。どうして、いつもそうなの。私は今年で五年になるけど、そこまで厄介な目に遭ったことは1回もないわよ。まあ確かに月に数件おかしな電話が掛かってくることはあるけど……。あなた、何か憑いているんじゃない?

【短編】五ノ鹿町観光協会案内係2 (前編)

(4,001文字) 1.田所さん@ゴシップ好き  月曜日。  朝からどんより曇っている。  田所路子は花粉症を患っている。くしゃみと鼻水が甚だしい。  だが彼女は度々薬を飲み忘れるし、持ち忘れる。そのせいで、直ぐ隣の席でくしゃみを連発され、頻繁に鼻をかまれると、菅野亜希子はうざったくて仕方ない。だから亜希子は自分には必要ないにも関わらず、この時期は常に机の中に花粉症の薬を入れている。  それはさておき。  五ノ鹿町観光協会の営業時間は、午前九時から十二時まで、一時間

【連載】ターちゃんとアーちゃんの歳時記 番外編

如月 べっぴんさん 「あら、別嬪さんね」  リョウちゃんが、アーちゃんのうちに遊びに行った時のことです。道すがら、アーちゃんと話すのに夢中で、誰かにぶつかりそうになりました。ふっと顔を上げた時に耳に飛び込んできた言葉でした。 「あっ、おばさん。こんちは」 「アーちゃん、元気?」  アーちゃんのおばさんだとわかりましたが、リョウちゃんは恥ずかしくて俯いてしまいました。 「アーちゃんのお友達? 別嬪さんよね」  伯母さんは、もう一度口にしました。べっぴんさんという言葉を