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誰だ? 氷上で焙煎しようなんて言ったやつは! しかしそれは至福の一杯であった。

通りすがりの達人のおかげでワカサギ氷上穴釣りのコツをつかんだ記者たち。果たしてワカサギちゃんと初対面できるのか!? そして今回のもう一つのお楽しみ、氷上天ぷらと氷上焙煎に挑戦! カラッと揚がったワカサギをつまみながら、至福の一杯を楽しむ。考えるだけで脳内快楽物質がドバドバ出るが、やはりそうは問屋がおろしてくれなくて……。

〈これまでの記事〉



ついにキタ!

通りすがりの達人(湖近くの釣宿のスタッフ)に教わったコツとは、まずは湖底に届く長さに糸を調整し、そこからゆっくり引き上げたり、揺らしたりしてワカサギを誘うこと。そして、微妙なアタリ(魚がエサを突いたり、飲み込んだりする時に竿先に現れる動き)がわかるよう体や椅子などに竿さおを固定しておくこと。アタリが来たらクイッと竿を引き上げて合わせる(魚の口に針を掛ける)こと。この3つだ。

底までつけたらゆっくり上げて、チョイチョイと揺らす

ここまで釣果はゼロ。とにかく1匹でも釣り上げたい記者は、通りすがりの達人に言われたことをバカの一つ覚えで繰り返す。底までエサをつけたらゆっくり上げて、チョイチョイと揺らしてワカサギを誘う──。

何回くらい繰り返しただろう。ようやく竿の穂先がピクッと動いた気がした。アタリかどうか考える間もなく、クイッと手首を上げて合わせにかかる。

かかったのか? 手の感触からは全くわからない。恐る恐る系を手繰り上げると……。
 
いた! キラキラとうろこが輝く小魚、まさにワカサギちゃん!

ついにワカサギをゲット!


えーん、会いたかったよう! 思わず目頭が熱くなった。夢にみたワカサギちゃんとの対面。こんなに感動したのは久しぶりだ。

記念すべき1匹目


この勢いのまま2匹目を狙う。エサを付けかえ、再び穴に入れると、すぐにもう1匹が釣れた。周辺散策からいつの間にか戻ってきた編集長にも初めての釣果が。

こっちも釣れた!

……と思ったのも束の間。

またパッタリとアタリが来なくなった。やっていることは同じなのに、全然釣れない。ワカサギはこの湖の中を回遊しているという。どこか他のところを回っているのか、それとも時間がもう遅いのか。タイムリミットと言われた午前9時をゆうに回っている。何より編集長が飽き始めている!

朝も早かったし寒いし釣れないしで思わずアクビが……


このあたりが潮時だろう。天気予報ではこれから大雪で、首都圏の平地も積もるかもしれないとのこと。昼までには撤収したい

釣果、6匹。そのうち2匹は通りすがりの達人が釣ったものだ。

なんとも美しいその姿!

他のグループの人に聞いたら4人で20匹。こちらは2人で4匹。初めてでそれなら良いほうではないか。うん、そういうことにしておこう。


これ、火ついてんの?

我々には今回、もう一つ大事なミッションがあった。それは、釣ったワカサギをその場で天ぷらにし、かつその場で焙煎したコーヒーとともに味わうこと。そのためにわざわざ天ぷら用鍋や油、小麦粉、ガスコンロ、そして手廻し式焙煎器の「くるくるカンカン」と生豆を東京から運んできたのだ。

まずは焙煎だ。焙煎の仕方についは、過去記事を参照していただきたい。

氷上でコーヒー焙煎はできるのか

問題は凍てつく寒さの中でちゃんと豆に熱が伝わるかだ。以前、冬の公園でやった時は寒風がすさまじく数時間もかかってしまった。その時とは比べ物にならないくらい今回は寒い。果たして上手くいくのだろうか。

くるくるカンカンとワカサギの2ショット!
豆はくるくるカンカンとセットの焙煎缶のもの。
カメルーンレッドマンドリルにした理由は特になし(笑)

最初は写真映えを考え氷の上に直接置いたのだが、信州の冬を甘く見ていた。寒さと風で、火がついているかどうかすら分からないのだ。

釣りつつ、回す
急きょ風防を設置。それでも火の勢いは弱いまま……

釣り用のテントの中で再挑戦。しっかり換気口を確保した上で行ったことは言うまでもない。

すると今度はしっかり火がついているのも分かったし、たちまち焙煎缶が熱くなっていくのも分かった。そしてテントの中はぽっかぽか。ビニールに覆われているだけでこんなにも違うのか。そして暖かいことがこんなにもありがたいことなのか。そんな当たり前のことを、2時間以上氷上で釣りをして初めて気づいたのである。


引き上げる直前でバレ(針から外れ)た! くやしい!


やがて香ばしいコーヒーの香りがテント内に充満してきた。無事、豆がハゼる音も聞こえてきた。ここまで来たらテントを外してもいいだろう。寒いからコクのあるコーヒーが飲みたい。しっかり深煎りにする。煙もちゃんと出ている。

煙が出てきた……


スプーンですくい出してみると、豆が自身の脂でしっとりと黒光りしている。よし、これくらいでいいだろう。

いい焙煎具合!

焙煎した豆をザルにあけ、しばらく冷ます。冷却については何の心配もナシ!


火が通りすぎないよう急いでザルにあける
周りに飛び散らないよう、ビニール袋の中で豆のカスを振り落とす。
自然の中ではゴミを出さないよう気をつけよう!


ワカサギはオリーブオイルで素揚げにする

そしてワカサギの調理である。天ぷらは面倒くさくなったので、オリーブオイルで素揚げにする。
 

ソリは調理台にもなり、とても便利

熱した油に釣ったばかりのワカサギを6匹投入。ジューッと激しく音を立てたかと思ったら、あっという間にこんがりと揚がった。

衣もつけずそのまま油へ
小さいのであっという間に火が通る
カラっと仕上がった!

一方で編集長が焙煎したて、挽きたてのコーヒーを淹れてくれた。うーん、いい香り。

氷の上でやるのがいーんです
空気が澄んでいるせいか、コーヒーの香りがひきたつ

さあ、氷上の宴の準備は整った。
いざ、実食!


美味いにもほどがある!

その味たるや……。

まずワカサギ。フワフワとして、何の臭みもないし、苦味もない。オリーブオイルで揚げて塩を振っただけなのに、いくらでも食べられそうなほど美味い。美味いにもほどがある!
 
実は6匹では絵にならないので、撮影用に冷凍のワカサギも用意していたのだが、味の差は歴然。蕎麦そばじゃないが、ワカサギは釣りたて、揚げたてが一番である。
 
そしてコーヒー。これも煎りたて、挽きたて、淹れたてが最高であることは間違いない。それに加えてこの寒さの中で2時間がんばったという達成感が、より美味しく感じさせる。

このワカサギは撮影用に宿で購入したものです

ああ、この一杯のために、我々はここまでやってきたんだな。降り積もる雪の中でしばし余韻にひたる記者たちであった。

テントの中でまったり……

(おわり)

Supported by くるくるカンカン

クレジット

文・編集:いからしひろき(きいてかく合同会社
撮影:高野宏治
校正:月鈴子
取材協力:釣り宿 佐久屋
制作協力:富士珈機

ライター・いからしひろき https://twitter.com/igamania
新潟県出身。20年以上にわたってフリーライターとして活動。旅、食、人物インタビューを得意とし、『日刊ゲンダイ』『おとなの週末』『サステナブルブランド・ジャパン』などで執筆。2023年6月にライターズオフィス「きいてかく合同会社」を設立。


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