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無痛予定なのに発熱で緊急帝王切開出産した話③

■23時
ようやく医師が戻ってきて内診。
なぜかしかめっ面をしている。

医師
「赤ちゃんが逆旋回してるねぇ。
 このままだと、お産は相当長くなるねぇ・・・」

どうやら、産道に入ろうとしているけれど
体の回転が逆向きで、これだと上手く出てこれないそう。

合わせて私の熱も依然下がらず、
NSTの値も元気がなくなってきている。
ざわつく部屋。

医師
「このままだと危ないのでオペしましょう」


「お願いします!!
 もう無事に産めるならなんでもいいです!」

と言ったつもりだけど、
実際は陣痛MAX &高熱でフラフラの為
「・・・・グッ・・・は・・ヒィ・・・・」
ぐらいしか言葉が発せなかったと思う。

オペをするには夫の承認が要るそうで夫に電話する。
私からの電話は出産報告だと思っていたろうに、
出てみると医者から
「奥さんと赤ちゃんが危ないのでオペしてもいいですか」と
言われた夫は事態を飲み込めずに相当驚いたそう、そりゃそうだ。

その後は流れるように服を脱がされ
ストレッチャーにヒィヒィ言いながら登り、
オペの処置室までドラマさながら運ばれ、
あれよあれよとチューブをつけられ麻酔を打たれる。
もう、大人数の前でスッポンポンなのも気にならない。

この時も、陣痛は2分間隔で壮大なフィナーレを迎えていた。
でも、
「あとちょっとで赤ちゃんに会える」と言う安心感で頑張れた。

麻酔を打たれ数分、
嘘みたいに痛みがなくなり、意識だけがある状態に。
冷たい氷を下腹部に当てられても何も感じない。
意識があってお腹切られるって
もっと怖いかと思っていたけれど、
それまでの格闘から解放された事が幸せで何も怖くない。

そしてオペ開始。
目隠しの布越しで6人くらいが何やら作業をしている。
全く様子が見えないけれど、手袋が赤く染まっているので
あぁ、体切ってるんだなぁ・・・とどこか人ごと。

■深夜0:40
ズルっという感覚と共に、
オペ室が一瞬静かになり、
「おめでとうございます!!」と全員が言ってくれた。
布の向こう側から、お医者さんに持ち上げられた赤ちゃんが見えた。

顔を拭かれ、
背中をポンポンされ、産声を上げていた。
もうそこからは、ずっと涙が止まらなかった。
それは、嬉しい ではなく、安堵。
ここまで無事に来れた、
そして産んであげられた事の安心感と
愛おしさで胸がいっぱいになった。
そして、お産をサポートしてくれたスタッフさんへの感謝でも泣いた。

顔の横に赤ちゃんを連れてきてもらう。
元気に泣いているのを見て、私も泣く。
布の向こうから出てきたあの光景は、
きっと一生忘れない。


産まれたてホヤホヤ

ちなみに、その直後に夫とテレビ電話をしたらしいが一切の記憶がない・・・
あとで助産師さんが「え?話してましたよ、ほら履歴もあるし」と
履歴を見せてくれたけど、覚えてない。通話後、気絶するように寝たらしい。


日々の育児でなかなか出産を振り返ることがないけれど、
書いて改めて、
発熱して無痛が出来ず陣痛に耐えていたあの時の絶望感を思い出した。

陣痛そのものが辛いと言うより、
「ここを乗り切れば陣痛から解放される」と思っていたのに
「謎の熱が下るまで陣痛から解放されない」ということが辛かった。

多分、心のどこかで
「まぁ、私はきっと無痛で産むんだろうな」と考えていたから。

途中で発熱して無痛が出来ないなんて想定は出来なかったけれど、
そうじゃないパターンももう少し色々と考えておけば
気持ちの持ちようが違ったのかもしれない、と今なら思う。
読んでいただいた方の何かに役に立てばと願って。


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